[医療人] 2012/12/14[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第144回
北島クリニック
北島潤一郎先生

社会人になってから医師を目指して方向転換

 私が医師になろうと思った時期はかなり遅く、大学を卒業し、一度企業に就職してからのことでした。薬学部を出て製薬会社で研究員として働き始めた2年目ぐらいから、漠然と「何かが違う」と感じるようになり、いつしか方向転換したいと考えるようになりました。そんな時、父ががんを患っていることがわかり、それが医師を目指すきっかけとなりました。
 父の病気を知り、「人生は短い。いつか転身しようと思っても、そのいつかが来る前に寿命が終わってしまうこともあるかもしれない」と感じたのです。決断するなら早いうちがいいと思い、退職して医学部を受験しました。
 私の中では、「医師になりたい」というより「精神科医になりたい」という思いがありました。実は、人間の生きづらさというか、生きていくことの困難さみたいなものを自分自身ずっと感じており、患者さんを治したいとか、画期的な治療法を見つけたいというよりも、もっと根源的な、「この生きづらさを減らすにはどうしたらいいんだろう」というのが始まりだったと思います。
 また、そのころ、朝日新聞の連載コラムで、映画監督の伊丹十三さんがフロイトの著作をとり上げていたのを興味深く読んだりしていました。精神分析という手法が人間の生きづらさの解決策になるのかもしれない、精神科医になって精神医学を学んだら、自分が抱えている困難の解決策が見つかって、同じような状況にある人の役に立てるんじゃないかと、そういう思いが医師としての出発点でした。

医療的な技術で患者さんの苦痛を軽くする

 クリニックを開業して8年目を迎えましたが、今は1日にだいたい60~70人ぐらいの患者さんを診ています。心がけていることはシンプルですが、「正しく診断し、治す」ということ。当院にいらっしゃる患者さんは社会生活上の問題を抱えていて、その解決策を求めて来院されます。ですから最初に、患者さんはどんな問題を抱えていて、何を求めているのかをきちんとうかがい、患者さんが医学的にみて現在どういった状態にあるのかを正しく診断することが重要だと考えています。
 その上で、こちらの医療技術をもってどう応えていくか、患者さんの望む方向にどう近づけていくかをお互いに確認します。このように、ご家族や友人では解決できなかった問題を、精神医学の専門家として打開していくことが私の役割だと考えています。
 この仕事をしていて難しいと感じるのは、診断はつくものの、治療法が確立していない病気や、治療法はあるけれど簡単には治療が進まない病気と出会ったとき。「あなたの抱えている困難にはこういう名前がついています、こういう特徴があります、ほかにも同じような問題で悩んでいる人がいます」とまでは説明できても、「どのぐらいで治ります、このような治療法があります」「この薬を使えばこの程度の期間で治ります」とはなかなか言えないことがあるのです。
 また、発達障害など、先天的に人とうまく関わることができない病気などは、その方が生まれつき抱えている問題ですので、言ってみれば「うんと背が低くて困っている」というのと同じことになります。この場合は、医学的に「治す」のではなく、病気とどうつきあっていくか、社会とどう折り合いをつけていくか、という関わり方になるので、難しさを感じながら試行錯誤を繰り返すこともあります。
 いずれのケースも、将来的には画期的な治療法が見つかる可能性はあります。ただ、今はひとりひとりの患者さんに向きあい、取り組めることに取り組んで、治せるものは治す。治しきれないものはその人の苦痛や社会的不都合をどう軽減するかについて、ヒントを提供しながら診療しています。

リフレッシュは天体写真を撮りに行くこと

 患者さんには、健康のために運動しましょうと勧めているのですが、自分自身は時間がなくて、なかなかできていません。「せめてもの」という感じですが、なるべく歩くように心がけています。
また、自分が心身ともに健康でいるためには、焦らない、怒らない、イライラしない、つまり医学的に言うと「交感神経が高ぶらないように」気をつけています。感情的になることが増えると、1日が終わった時にヘトヘトになってしまうので、なるべく平常心を保ち、リラックスすることが大事だと思います。


先生の趣味の自作図かん

 趣味としては写真、とくに天体写真を撮るのがいちばんの楽しみです。年に1回か2回、ゴールンデンウイークや9月のシルバーウイークなど長い休みが取れたときに、星空の撮影旅行へ出かけます。天体写真を撮るには、夜、なるべく人工の光がなく暗くなることが条件なので、世界中でも撮影スポットが限られています。これまで、オーストラリアやアメリカ・アリゾナ州のセドナに行ってきました。
 星空を撮るときは、望遠レンズと特別な道具を使うのですが、どの機材で、どういうテクニックを用いて、いかにきれいな写真を撮るかということに集中します。仕事とはまったく違う頭を使うので、そういう時間がリフレッシュになっていますね。
 写真を撮り貯めるうちに、人に見てもらいたいという欲求が芽生えてきて、1年がかりで写真に解説をつけてオリジナルの図鑑を作りました。クリニックの待合室に置いてあるのですが、患者さんにもご好評いただいているんですよ。
 病気が治り、最後の診察ときには私自身が撮影したオーロラの写真を「卒業記念」として患者さんにプレゼントしたりもしています。

患者さんと1対1の関係を大切に

 今後の夢としては、プライベートではニュージーランドの南島にあるテカポという町に撮影旅行に行ってみたいです。小さい町なのですが、なんと「星空」を世界遺産に登録しようという運動している町なのだとか。いつか、「世界一の星空」を撮れたら嬉しいですね。
 クリニックとしては、復職サポートのシステム確立について検討しています。一般的に、精神科領域の復職サポートは週5日、1日5~6時間ぐらいで、精神保健福祉士や心理専門職、看護職などのチーム体制でおこなわれるというのが主流になりつつあるのですが、うちのクリニックは小規模なので、私と患者さん、1対1でおこなっています。
 私は大きな組織を運営するのは性に合わないようなので、今のクリニックでのマンツーマンの関係のなかで、どこまで復職サポートをシステム化していけるかを考えています。フットワーク軽く、自分の目の届く範囲、自分の頭におさめられる範囲で良いシステムを組み立て、患者さんの復職をサポートしていきたいというのがクリニックの今後の課題ですね。

取材・文/出村真理子(Demura Mariko)
フリーライター。主に医療・健康、妊娠・出産、育児・教育関連の雑誌、書籍、ウェブサイト等において取材、記事作成をおこなっている。ほかに、住宅・リフォーム、ビジネス関連の取材・執筆も。

北島クリニック

医院ホームページ:http://www.kitajima-cl.com/

東京メトロ銀座線「上野広小路」駅、千代田線「湯島」駅、都営地下鉄大江戸線「上野御徒町」駅より徒歩1分。JR「御徒町」駅より徒歩3分。東京メトロ日比谷線「仲御徒町」駅より徒歩5分。どこの駅からも近い好立地な上、院内は静かでリラックスできるクリニックです。
詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

心療内科、精神科

北島潤一郎(きたじま・じゅんいちろう)院長略歴
1981年 東京大学薬学部卒業 協和発酵工業株式会社東京研究所勤務
1990年 東京医科歯科大学医学部卒業 同大学付属病院精神科
1991年 日本医科大学救命救急センター
1992年 都立広尾病院精神科
1994年 東京足立病院
1997年 同病院医局長
2004年 同病院医療統括部長
2005年 北島クリニック開設


■所属・資格他
精神科専門医、精神保健指定医、日本医師会認定産業医


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