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[クリニックインタビュー] 2013/04/12[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第148回
しみず医院
清水博史院長

産婦人科医の父を見て医療の道へ

 父が産婦人科医だったので、物心ついたころから「将来は産婦人科の医師になる」のが自分にとってはごく自然なことでした。「なりなさい」と強制されたわけではないのですが、そういうものだと思っていたので、ほかの職業は考えたことがありませんでしたね。
 実は学生時代は、外科系が好きでした。ただ、将来産婦人科医になることを考えて、「赤ちゃんを診られない産婦人科医はどうなんだ」と理想的なものの見方をしてしまったのです。とりあえず小児科に行って、勉強して、赤ちゃんも診られる産婦人科医になろうと思って、抜けられなくなってしまいました(笑)。
 小児科で、ひとつ魅力を感じていたのが非常に勝負が早いところ。例えば内科は長いスパンで見て行く科で、何カ月もたって初めて治療の成果があらわれることもある。対して、外科は手術で迅速な判断と手技が求められますし、小児科に至っては、つねに「救急」といえるほどスピード勝負。ということは、一生懸命やればすぐに結果が出るということで、それが自分の性格には合っていたのだと思います。
 研究よりも臨床が好きで、大学で試験管を振っているよりは患者さんを診たいと、あえて忙しい大学の関連病院ばかりに回してもらいました。ほとんど家にも帰らず、たくさんの患者さんと向き合ってきた中で学んだもっとも大きなことは、「子どもをよく観察すれば病態はわかる」ということ。とにかく多くの患者さんを診たこと、そして感染症や喘息、育児相談それぞれの分野の専門の先生より教授を受けたことが、今の毎日の診療に役立っています。

子どもの顔を見れば重症度がわかる

 うちは「小児科・内科」と内科も標榜していますが、患者さんはほとんどがお子さんで、90%小児科です。季節によってやや変動はありますが、だいたい平均して1日150人ぐらいの患者さんが来院し、多くは3歳前の乳幼児。そういったこともあり、当院では「自分の子ならこうする」を基本方針に、患者さんであるお子さんやそのご家族が、受診後ホッと安心して帰宅できる医院を目指しています。
 診察では、まず子どもの顔を見て、状態をよく観察します。子どもは自分の状態を説明することはできませんが、これまでの経験と勉強から、顔を見れば重症かそうでないかはわかります。医師、特に小児科医にとっては、この「どれだけ多くの患者さんを見たか」という経験がすごく大事だと思います。もちろん、疑問を持つことはありますし、そういう場合は必要に応じてすぐに血液検査もします。重症度はどうか、細菌性の病気かどうかをすぐに判定して「これはウイルス性の風邪だから対症療法でいいよ」とか、「熱はあるけど機嫌もいいし、ミルクの飲みもいいから大丈夫だよ」などと説明します。親御さんはとにかく心配で来ているので、そう話せば納得するし、安心してもらえる。それが医師の役割だと思うのです。
 医師というのは、難しい言葉を羅列して病気の説明をするのではなく、「こういうことでこういう状態になっているのだから、こうすれば大丈夫だよ」と言って安心させるのが仕事。もちろん、逆もありますよ。その場合は状態を説明して、すぐに大きな病院を受診してもらいます。いずれにせよ、私たちの仕事はプライマリーケアなので、早く診断することが何より重要。ダラダラ時間をかけていたら、雪だるま式にどんどん病気が悪くなってしまいますから。迅速で正確な判断が求められるのが小児医療と考えています。

ひとりひとりに合う「オーダーメイド医療」を

 開業してもうすぐ20年。今では、昔患者さんだった子がお父さん、お母さんになって、子どもたちを連れて受診してくれることもあります。親子二代に渡って診ることができるのも、小児科の醍醐味のひとつ。私は記憶力はいいほうなので、昔診た子は覚えていますし、患者さんの家族構成などもよく覚えています。それが、「今日来たあの子は、先週お兄ちゃんが同じ症状で来たな」など、素早い診断につながることも。
 小児科の診断や治療には、やはり「病気」だけでなく「人」を見ることが大事で、患者さんの家族構成とか、お父さんやお母さんの性格、仕事など生活環境も含めて知ることが大切だと思っています。ですから、ふだんは患者さんと同じ目線になって話をしますし、友達のような存在でいい。でも、診断するときだけは医師になります。そうしないと納得や安心はしてもらえませんから。
 私が医師になったころと今では、子どもの病気も小児医療も大きく変わっています。抗生物質や環境が整備されたおかげで細菌性の病気は減り、ウイルス性の感染症が主体になっています。予防接種も質がよくなり、定期接種化されるものも増えましたので、今後は小児医療も、重症化を防ぐことを主体とした予防医学に移行していくのだろうと感じます。治療もガイドライン化されていますからね。
 昔は、そんなものはなかったので、わからない中、経験と工夫を重ねながら治療をしていたものです。ガイドライン化によって診断や治療が迅速になるのは良いことですが、「それさえしておけばいい」という安易さにつながるのではという懸念もあります。子それぞれに個性があるように、病気もひとりひとり違います。その子をちゃんとみて、ひとりひとりに合ったオーダーメイド治療をしていきたい。そして、迅速に診断しながらも、「何か見逃していることはないか」と常に考えて診療にあたるようにしています。

患者さんの笑顔と将来の夢が元気の秘訣

 今はとにかく仕事で忙しく、自分のための時間はほとんど取れません。そんな中で、健康のためにしていることと言えば、1週間毎日同じペースで生活することぐらいでしょうか。毎朝4時半過ぎには起きて、5時ごろから行動し、夜は早寝する。お酒も飲みますし、いろいろ好きなようにしていますが、それだけは心がけ、仕事がない休日も同じように生活します。変えてしまうと翌日かえってつらいので、毎日同じペースで生活することが私には合っているのだと思います。
 好きなのは、車の運転。なぜかといえば、車の中はまったくの個室で、誰にも干渉されずに一人きりで過ごせるから。自宅が世田谷で、医院のある足立区までは30kmほど。毎日車で通勤しているのですが、朝は約30分、夜は1時間弱の車で過ごす時間が自分にとってリラックスできる時間になっています。これからやることを整理したり、失敗を反省したり、疲れた時は何も考えなかったり、時には歌を歌ったり。すごく大事な時間ですね。時間ができればドライブ旅行に出かけたいと思っています。
 信州で生まれ育ったのでスキーが得意で、学生時代には軟式テニスもしていたのですが、最近は運動もほとんどしていません。今58歳なので、そろそろ健康のことも考えないとマズイと思い、またテニスを始めようかな、とも考えています。
 我が家は幸いなことに、長女が私と同じ小児科医で、次女は臨床心理士をしているので、将来的には一緒に仕事ができたらいいな、というのが今の夢です。病気を見る一般的な診療と、予防接種や健康診断など健康な子を対象とした診療は、本来は分けてできるのが理想。今は私一人なので全て自分でやっていますが、娘たちの力を借りて、いずれは分化させたい。そして、今、非常に増えている心の病を持っている子たちにも来てもらえるようにしたいですね。
 人間、夢がないと向上心も持てないし、体も心もしぼんでしまうと思うのです。常に、今、目の前にいる患者さんに全力投球していきたいと思っていますが、将来の目標があれば、より頑張ろうという気になりますし、モチベーションアップにもつながる。地域の子どもたちや親御さんに今後さらに貢献していくためにも、夢を実現できるよう進んでいきたいと思っています。

取材・文/出村真理子(Demura Mariko)
フリーライター。主に医療・健康、妊娠・出産、育児・教育関連の雑誌、書籍、ウェブサイト等において取材、記事作成をおこなっている。ほかに、住宅・リフォーム、ビジネス関連の取材・執筆も。

しみず医院

医院ホームページ:http://www.shimizuiin.or.jp/pc/index.html

東武スカイツリーライン竹ノ塚駅より徒歩5分。待合室はソフトな畳敷きで赤ちゃんや小さいお子さん連れが過ごしやすい作りに。
大きな水槽が子どもたちの興味を惹く、安心できる雰囲気のクリニックです。詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

小児科、内科

清水博史(しみず・ひろふみ)院長略歴
1980年 東京慈恵会医科大学卒業 同大学小児科研修医
1982年 研修修了、同大学小児科入局
1983年 社会保険清水桜ケ丘病院
1984年 神奈川県衛生看護専門学校附属病院
1986年 東京慈恵会医科大学附属病院、同大学附属青砥病院
1987年 神奈川県立厚木病院(現・厚木市立病院)
1992年 東京慈恵会医科大学附属青砥病院
1993年 しみず医院開設


■所属・資格他
医学博士、日本小児科学会認定小児科専門医、日本小児科学会代議員、日本小児科学会東京地方会幹事、日本小児科学会、日本外来小児科学会、日本小児保健学会


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