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[クリニックインタビュー] 2009/04/17[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第16回
東陽町東口クリニック

「人」に喜んでもらいたい

 私は子供の頃から人に喜んでもらえる仕事をしたいなあと思っていて、学校の先生や作家、お笑いスター(笑)などになることを考えていました。自分は“勉強ができる子供”だとは全く思っていなかったのですが、驚いたことに、中学校初めてのテストで一番だったので、次第に「自分が一番役に立てるのは医者になることかな」と思うようになりました。
 私の父親は子どもの頃大変貧しくて、本を買うお金が無く、こっそり人の本を読んでいたので、本を読むのは誰よりも速い……なんていう話を聞いて育ちました。私の育った環境もそんなに裕福ではなかったので、私は二宮金次郎に思いを馳せて勉強していました。まねをして歩きながら本を読んだりしていたので、人にぶつかってたいそう怒られたりしましたけどね(笑)。
 それにしても二宮金次郎の像って、どうして少なくなってしまったのでしょうね。残念です。貧しい子供でも、優秀であれば才能と可能性を買って援助する大人が昔はいましたよね。今の社会は思いやりというものが、どうも無くなってしまっているような気がします。大学まで出してくれた親には大変感謝しています。

病気だけでなく「人」を診る

 大学に入学して、柔道部に入ったんですが、日々の練習はとてもハードなものでした。“精神的にも肉体的にもきつい経験”を通して、「体の病気だけでなく、「人」を診れる医者になりたい」と考えるようになりました。周りからは「君は体育会系なんだから、どう考えても外科系でしょ?」とよく言われていたんですけどね(笑)。
 大学の病院実習では、患者さんとうまくコミュニケーションをとれていない先生が多く、問題があるなあと感じていました。 そのため私は患者さんとよくコミュニケーションを取って、患者さんと一緒に笑ったり悩んだりしながら、治療していく医者になりたいと思ったんです。
 ですから、精神科を学ぶ必要があると思っていました。進路で迷っていたところ、ある方から「≪心療内科≫という心も体も診る科があるよ」と言われました。
当時、≪心療内科≫というのは日本にできたばかりの科目で、私のいた群馬大学からは、まだ心療内科医になった先輩はひとりもいませんでした。うちの大学病院には心療内科がなかったため、東京の大学病院に行くことにしました。私は母校最初の心療内科医ということになりますが、まだまだインターネットもない時代でしたし、知り合いのいないフィールドへ行くのはギャンブルに近く、とても不安でした。色々とつらい経験もしました。でも、この頃のつらかった経験が患者さんを診療するうえでとても役立っていると感じます。患者さんのつらい状況はよく理解できるので、「患者さんの目線」で診療しようと心がけています。

心療内科ってなに?

 “心も体も診る心療内科”。私たち心療内科医は、≪心身症≫と言われる心因性の身体疾患を主に診ています。頭痛や気管支喘息、胃潰瘍、アトピー性皮膚炎など、ストレスでひどくなる体の病気が心療内科の対象ですね。糖尿病や高血圧などもストレスからくることがあり、治療を行っています。本来はうつ病や神経症は精神科で診る疾患ですが、体の症状が出ることも多く、鑑別も難しいため、できる範囲で精神疾患の治療も行っています。
 心療内科ではその人の特性や生活習慣、体質などをみながら、体に作用する薬、脳に作用する薬などを使用していくのですが、私は漢方薬もよく使います。
 なぜ漢方薬が心身症に効くのかというと、漢方薬には「心」にも「体」にも作用する生薬が入っているからです。心療内科は、人間の心と体をトータルに診ていく科目です。西洋薬ももちろんよく効くのですが、心療内科の疾患は漢方が有効なことが多いですね。
 体の不調で、検査をたくさん受けても原因が分からず、周りからは「具合が悪いのは気のせい」と言われ続けてきた患者さんが、心療内科にいらっしゃるとピタリと良くなってしまうことが数多くあります。そんな時患者さんは「心療内科に来てよかった」と大変喜んで下さいます。この瞬間こそが私の一番の喜びです。
 心療内科がどんなものなのか、まだまだよく認識されておらず、多くの心身症の患者さんが見過ごされています。できるだけ多くの方に知っていただこうとブログをつけています。ブログをご覧になって遠方からいらっしゃる患者さんも多く、これからもブログなどで情報発信を行っていきたいと思います。執筆活動などにつなげていきたいですね。文章を書くのは昔から得意で、中学生の時、学校の先生が「誰に書いてもらったの?」とたまげたほどです(笑)。
 今後取り組んでいきたいことはたくさんあります。当院は開院してからまだ3年ですが、心と体の両方の面で患者さんの助けになれる、そんなクリニックとして定着していければと思っています。

“好きなこと”を見つけよう

 心療内科の治療は、やはり「人」というのがキーワードだと思うんです。
 好きなことが全然無かったり、「仕事だけが生き甲斐」だけでは、「人」としてのバランスに問題が生じ、心身症になってしまうことが多いんです。
 私自身はいろいろなことに興味がわいて、本屋さんなんかで新しい発見をするとワクワクしてしまいます。しかし、20代の患者さんを中心に、「趣味も生き甲斐も楽しいことも何も無い」という方が多く、最近特に増えてきているように感じます。
 そんな人が増えてしまった背景はいろいろ考えられます。ネガティブな情報ばかりにさらされるあまり、将来に期待を持てなくなってしまった若者達。彼らに対して私ができることは何なのか、今模索しているところです。

偉人とリラックマに学ぶこと

 こんなふうに考えるベースには、私の尊敬する人物が関連しているのかも知れません。いずれも近代の人物ですが、たとえば蘭法医術を学び、最後まで命がけで国を憂いていた高野長英。それから、世界で初めて麻酔手術を成功した華岡青洲、そしてその基礎を築いた杉田玄白などを尊敬しています。明治の志士として日本を変えた、後藤新平にもあこがれます。彼は最期の言葉がすごいですね。「金を残して死ぬ者は下だ。仕事を残して死ぬ者は中だ。人を残して死ぬ者は上だ」。
 もう少し時代が下ったところでは、開業医から政治家に転身し、マレーシアのトップを勤めたマハティール前首相。日本の経済成長をモデルに、「日本から学べ!」と説いてマレーシアの国力を飛躍的に上げた功績で知られる人物です。彼のことも尊敬しています。
 あと、私は野球が大好きなんですが、最近、桑田選手の講演を聴く機会があり、とても感激しました。桑田選手も尊敬する人物のひとりです。
 そして野球といえば、今年のWBCメンバーもすばらしかったですし。院内にはWBC勝利を記念して、ちょっと似た雰囲気のユニフォームを飾っているんですよ(笑)。患者さんがこれを見て、病気の治療のヒントを感じとってもらえたらと思っています。


[左:受付には憧れる桑田選手のサイン色紙][右:WBCのユニフォームに似ている51番は院長自身が使っていたもの]

 人間にとって本当に大切なのは、楽しみをもっていきること。心身ともに健全であるために、それは軽視してはいけないところです。同時にがんばりすぎないことも大事ですね。がんばり過ぎで発症する心身症も多いんです。
私は人気キャラクターの『リラックマ』を患者さんにイチオシしています。院内にも絵本やぬいぐるみを飾っていますが、いつもリラックスしてだらだらして、深く考えないという『リラックマ』こそ、現代人にもっとも必要なメッセージを伝えてくれているのかも知れません。


[左:おすすめというリラックマが院内には沢山][右:心を落ち着かせてくれる何点もの西洋名画]

東陽町東口クリニック

医院ホームページ:http://toyo-e.jp/

写真左:明るいクリニックを心がけ、置く情報にも気を配る
写真右:花が絶えることのない院内
東西線「東陽町駅」4番出口から徒歩1分。

診療科目

心療内科 アレルギー科 漢方内科
*対象:心身症(頭痛、肩こり、めまい、咳、喘息、動悸、腹痛、下痢、過敏性腸症候群,機能性胃腸障害など)/神経症(パニック、社会不安、強迫性障害など)/うつ病、不眠症、適応障害、自律神経失調症など/女性特有の症状(冷え症、PMS、更年期障害など)
※自殺企図・自傷行為・極度のイライラなどは心療内科の対象と外れますので、受診前にご確認ください。

略歴
群馬大学医学部卒業
東邦大学・日本医科大学(医局長)・一般病院で心療内科医、精神科医、内科医としての勤務を経て、現在「東陽町東口クリニック」院長



■所属
国際心身医学会(ICPM)、アメリカ精神医学会(APA)、日本精神神経学会、日本内科学会、日本東洋医学会、日本プライマリケア学会、世界家庭医機構(WONCA)、ヨーロッパ家庭医学研究会(EGPRN)

■取り組みほか
日本心身医学会シンポジウム(パネリスト)、日本音楽療法学会、日本癌治療学会より感謝状、国外での学会参加・医学交流活動


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