[クリニックインタビュー] 2014/10/03[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第167回
うえひらウィメンズクリニック
上平謙二院長

大好きな生物学から医学の道へ


写真提供:うえひらウィメンズクリニック

 基本的に小さい頃から動物、植物、昆虫といったいろいろな生物に興味がありました。愛読書は、図鑑や百科事典で、家にあった百科事典の「生物の世界」の巻だけがボロボロになるくらいでした。また、当時「野生の王国」というテレビ番組があって、毎週釘付けになって見ていました。とりわけ、その番組の中で真っ青なカリブ海を走るカリプソ号という海洋調査船の活躍が大好きで、将来はその船のクルーになって海洋生物の調査を仕事にできたらなんて幸せだろうと憧れたりしていました。ただ、そんな思いを現実のものにしようと思っても、今のネット時代のように手軽に情報が手に入るわけでもなく、気がつくと次第に医学の道というか、「人体生物学」を選んだような気がします。当時好きだった手塚治虫氏の『ブラックジャック』や、渡辺淳一氏さんの小説の影響もあったかもしれません。
 また、ちょうど高校時代に母親が2度目の癌と闘病することがありました。家族として現実逃避したいくらいの不安を抱いていた自分と、自分たちの前で母と一緒に病気と戦ってくれる医師のコントラストのようなものが、強く心に残ったのも覚えています。それで、自分もそういう立場に立てたらという思いもあったと思います。

総合的な診療に魅力を感じて

 私はもともと女性生殖器腫瘍学が専攻でしたので、順当なら今でも大学病院や大きな基幹病院で、癌の手術をする日々だったのではないかと思います。でも、いろんな複合的な状況もあり、医師15年目ごろに郊外の中規模な民間の総合病院に招かれました。そこでは、当然、産科診療や癌の治療以外にも、更年期外来、漢方外来、それまであまり経験がなかった不妊症治療まで、幅広い診療が求められました。スタッフの状況によっては、内科や外科や時には整形外科、自宅介護の患者さんの訪問診療と、いろんな役割をこなしていく必要に迫られる職場でした。当然、患者さんは病院側の都合など関係なく、いろんなご相談をされるわけで、普段していなかったような勉強にも迫られます。こちらが十分に対応できないことは宿題とさせてもらって、あらん限りの自分のコネを頼りに教えてもらったり、最も適切な専門医を紹介してもらったりしましたね。
 今思えば、それが開業する下地になったのではと思います。ある時、新規のクリニックモールのリクルーターが来まして、ちょうど時期的にマッチしたというのが開業に至った理由でしょうか。

良心に従った診療と女性のトータルケアが目標

  産婦人科を選んだきっかけだったかもしれませんが、「産婦人科は、人間が生まれてから死ぬまで全部診られてバラエティーに富んで面白いぞ。外科も内科も小児科もすべてやれるのは産婦人科だ」と勧誘された思い出があります。でも24時間の救急対応を求められるのが、産科です。当直回数も多いし、ひとたびお産が入れば、原則、私的な予定はキャンセルになります。今の時代の若者には敬遠されて、産婦人科医は絶滅危惧種などといわれるほどです。僕が入局したころは、「ゆとり」よりも「24時間戦えますか」が世間の風潮でしたので、仕事漬けの日々にも特に疑問も持たず、今となっては沢山の楽しい思い出になっています。
 この病院のコンセプトは、メディカルコンシェルジェ。水先案内人です。自分の専門外などの相談でも一緒に考え、その場で十分な説明ができないなら、ちょっと時間をいただいて勉強したり、友人や先輩に教えを請うたりして、患者さんがある程度納得できる説明までたどり着けるようにします。また、この先、どこのどの医師に相談すれば最も効率的なのか提案したり、ごまかさずに分かるものと分からないものをきちんと伝えることなどを心がけています。自分の親族に対するときと同じように、医療人としての良心に従って、単純に右から左にさばかない、そういう町医者でありたいと思っています。

「いつまでも求められる病院」でありたい

 休日も、普段できない書類を書いたり整理したり、レセプト準備でカルテを見たりと、仕事場にいることが多いですね。趣味は、釣りやパソコンをいじることなど、あるにはあるのですがそれほど深堀できてないです。現在高校生の息子の受験が一段落したら、人生の楽しみを深めていこうと思います。ゴルフは産科や終末期治療などをやっていると、まともにラウンドできないことも多く、遠のいたままです。あとは家族サービスですね。犬の散歩に付き合う飼い主かのように、ブラブラとショッピングモールに付き合ったりしています。
 今後はありきたりですけれど、「いつまでも求められる病院」でありたいと思っています。また、もっともっと診療の幅も深みも広げていきたいと思います。女性の美容面をも含む全身的なトータルケアとして、アンチエイジングや、予防医学、漢方にももっと力を入れていきたいと思います。

取材・文/後藤 玲(Rei Goto)
医療系を中心にWEB、紙媒体で執筆。健康、料理、お菓子作りなど生活全般における執筆も得意とする。病院取材の他、一般企業への取材活動も行っている。

うえひらウィメンズクリニック

医院ホームページ:http://www.uwc.jp/goaisatu.html

箱崎駅より徒歩1分。駐車場もあり。車いすにも対応できる設備を備え、コーヒー、水の無料サーバーもある。クレジットカード決済も可能。詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

婦人科、産科、内科(漢方)

上平謙二(うえひら・けんじ)院長略歴
1985年 九州大学医学部卒業、同大学婦人科学産科学教室入局、松山赤十字病院、九州大学病院で研修
1987年 九州大学大学院医学研究科(第二病理学教室)進学
1991年 九州がんセンター婦人科勤務
1993年 国立別府病院 産婦人科に転任
1995年 九州大学病院 産婦人科助手
1996年 北九州市立戸畑病院 産婦人科部長
1998年 医療法人愛和会古賀中央病院 婦人科医長
2006年5月 福岡市東区箱崎にうえひらウィメンズクリニック開業

■所属・資格他
日本産婦人科学会認定 産婦人科専門医、母体保護法指定医、日本東洋医学会会員


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