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[医療人] 2014/11/14[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第168回
小西統合医療内科
小西康弘院長

文学青年から医師へ

 学生の頃から本が大好きで、当初は文学部に進んで小説家になりたいと思っていました。しかし両親に反対され、進路に行き詰った時期がありました。ちょうどその頃、読んでいた渡辺淳一の『無影燈』に感動し、小説家がダメなら医師になろうと決めました。
 内科に入ると決めたのは、医師の道を選んだ時です。医師を目指し始めた当時から、私はユングやフロイトなど、心理学の本を多く読んでいました。心理学を知れば知るほど、人間のことを「体」からも「心」からもちゃんと知りたいと考えるようになったのです。人間の体全般を診ることができるのは、内科以外にはありません。「医師=内科」という考えしか私の中にはありませんでした。

 医学部を卒業後は関連病院で研修を受け、同じ関連病院や他の民間病院などの内科に勤務しました。そんな中、ある病院で院長と意見が合わず、壁にぶつかったことがありました。それは私にとって「このままでは自分が潰れてしまう」と感じるくらいの、本当に苦しい時期でした。何とかその状況から抜け出そうと、再び手にとったのが心理学の本だったのです。
 心理学にこれまで以上の興味を持った私は、「自分に起こっていることは、すべて自分が作っていること」だと気付きました。自分が苦手だと感じる人や、相性が合わないと感じる人との出会いは、自分の「潜在意識の投影」であるのだと、心理学を通じて知り、とても救われたのです。その時、「病気を治すためには、体だけではなく心も重要だ」という、自分が内科の医師を目指した頃の気持ちを思い出すとともに、その思いを強くさせることができました。「これからは、心と体を一緒に扱える統合医療をしたい」と、決意した瞬間でした。

 その後、「統合医療がやりたいから、開業しよう!」と決めて動き出しましたが、私の決心とは裏腹に、心と体の両方からアプローチする統合医療はなかなか周囲に理解されませんでした。心が折れそうにもなりましたし、開業を諦めようかと思ったこともありました。
 しかし何度諦めようとしても、自分の心の中の固い決意は変わりませんでした。そんな頃でしょうか、「自分の心が変わらないのであれば、もうどうにでもなれ!」という気持ちになりました。そこから様々な出会いや出来事が起こり、急に流れが変わったのです。自分でも驚きましたが、それから約半年くらいで開業に至ることができました。
 「こうしたい。こうしなくちゃ」と強く思っている時ほど物事は動かないものです。「どっちでもいいや。なるようになるさ」と力を抜いて手を放したとたん、夢が叶うことがあります。どこかで聞いたような話ですが、正にそれを現実に体験しました。
 そのような経験もあって、私は普段から、患者さんにも「病気、病気」と抱え込まないようにと伝えています。心の部分もちゃんと大事に扱って、病気を強く握りしめていた手を放せた時に、自己治癒力が上がって治る方向に流れができていくのだと思っているからです。

自己治癒力を上げるための統合医療

 病気は突然になるものではありません。もちろん患者さんにとっては突然降ってわいたことのように思えるかもしれませんが、病気というものは、自分自身の中で起きている1つのプロセスなのです。私はこの病気のプロセスを、川の上流・中流・下流に例えて説明しています。
 まずは、心身のストレスを上流とします。この上流でのストレスが原因で、中流では自己治癒力が低下し、下流で癌や生活習慣病などの症状として表れます。下流の症状に対しては現代医学に基づいた治療を、中流の自己治癒力低下に対しては東洋医学や分子栄養学、機能性医学に基づいた治療を、そして上流の心のストレスに対してはじっくり話を聞いたり専門家によるカウンセリングを進めたり、その人の中で起こっていることすべてに向き合い、治療を行います。どれかひとつだけに偏るのではなく、バランスよく治療することを心がけているのです。
 治すのは患者さん本人なので、その人の自己治癒力を上げることが大切ですが、そのスイッチは、本当に人それぞれです。薬が必要な人もいれば、体のバランスを整えるサプリメントが必要な人もいます。また、じっくり話を聞いてあげるだけで健康になれる人もいるでしょう。患者さんが本当に必要だと思うことは何かを探し、それをその人が受け入れることのできる形で提案することが、私の考える「統合医療」の姿なのです。

「制限を外す」医療

 ストレス社会といわれる現代、慢性的な疲労を抱えている患者さんが増えています。そうした患者さんたちの話を聞いてみると、みんなストレスを抱えています。「食べるために働かなければいけない」、「子どもは学校で勉強するべきだ」などという、枠の中に自分を閉じ込めて生きてしまっている人が多いのではないかと思います。もちろん働かなければ食べていけないし、学校の成績は良い方が嬉しいでしょう。しかし、「ねばならない」、「~するべきだ」という考え方では、ストレスが生じて当たり前です。食べるための仕事ではなく、自分自身の成長のため、成績のためではなく、友達と遊ぶため、というように意識を変えてみることが大切です。そのように少し視点を変えるだけで、苦手なことがずいぶん減るのではないでしょうか。
 それは他の治療にも見られることです。例えば、病気になると食事制限をされる場合が多々あります。もちろん、その指導は間違いではありません。病気によっては、あまり食べない方がいい食品や、塩分や糖分を控えた方がいい場合もあります。しかし、強制されると余計に食べたくなるのが人間というものです。肉を食べてはダメだと言われた人が食べてしまい、罪悪感に苛まれる・・・そんな気持ちになるだけで、ストレスを感じてしまいます。食事制限されているから肉を食べないのではなく、治りたいから控えるという選択が大切なのです。同じ「食べない」でも、意識を変えれば全く違う結果になるのです。
 私は、患者さんが何を望んでいるかということを、初診でじっくり話を聞くことを心がけています。患者さんに「治ったら、何がしたいですか?」と聞くこともあります。患者さんもご家族も、その言葉に目がキラキラ輝き、その後も治療を楽しんでくれるようになります。楽しくなれば、病院通いも、治療も薬もストレスだとは思わないでしょう。ストレスがなければ自己治癒力が回復し、症状の改善にもつながります。だから私は「あれはダメ、これもダメ」ではなく、まずは患者さんが抱えている制限を外すことから始めています。制限を外すことに成功すれば、患者さんが自分で治療法を選択する事ができるようになるのです。食事に関しても、自分が選んで食べなくなれば、自然と自分の体に合った食べ物を選ぶようになるでしょう。人から言われて選ばされるのか、自分で選ぶのか、その違いは大きいと思います。極論かもしれませんが、私は患者さんが自分で選んでやっている治療なら、何をやっても治ると信じています。
 まず私自身が身を持って、自分の意識や心が大事だと知りました。それをもっと患者さんに伝えていきたいです。もっとたくさんの病院でも統合医療が広まっていってほしいし、これからの医療には必要なことだと思います。私が診ることのできる患者さんには限りがありますが、その流れの一端を担えれば嬉しいです。きっといい方向に「なるようになるさ」と思っています。

取材・文/佐藤 裕子(Yuko Sato)
フリーライター。大手企業で、旅行・スクール関連の原稿作成に携わり、その後経験を活かしフリーに。独立後はWEBサイトを中心に、医療、旅行、求人などの取材、執筆を行っているほか、着物着付師、手作りアクセサリーのデザイナーとしても活動する、2児の子を持つママライター。

小西統合医療内科

医院ホームページ:http://www.konishi-clinic.com/index.html

大阪市営地下鉄御堂筋線「中津駅」2番出口を出て、右に歩いてすぐのビルです。
待合室は大きなソファがあり、ベランダには先生の育てた花が飾られ、気分を和ませてくれます。
詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

内科・漢方外来

小西康弘(こにし・やすひろ)院長略歴
京都大学医学部卒業
天理よろづ相談所勤務 
京都大学附属病院消化器内科勤務
済生会泉尾病院消化器内科部長
水無瀬病院内科部長、副院長
光輪会やまとクリニック 院長
2013年 大阪市北区中津に小西統合医療内科開業

■著書
自己治癒力を高める医療: 病気になるプロセスに寄り添う(創元社)


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