[クリニックインタビュー] 2015/01/09[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第173回
三才堂 内山医院
内山晴旦院長

父親の死をきっかけに脳神経外科の道へ

 親が医師でした。ただ当初は医学に興味がなくて、数学の先生になりたかったんです。ところが高校生の時、父が脳卒中で倒れて亡くなってしまって。それもあって脳神経外科医になりました。学部を出た後、大学院へ進学し生化学を勉強しました。アセチルコリンという物質に対応する、特定の受容体の作用についての基礎的な研究です。脳の神経に働くことにつながるので興味があったのですね。
 このまま研究者になりたいという気持ちはありましたけど、でもやっぱり臨床というか、患者さんと向き合いたいなと。父が脳卒中で亡くなったという、最初の動機がありましたから。

多様な患者を受け入れる地域のかかりつけ医として

 病院にはトータルで15年くらい勤めました。脳外科だと手術がつきものですが、いつまでも手術をずっとやっていくのかな、それはどうだろう、と漠然と考えていました。開業医はどちらかというと、患者さんの全体を見ながらいろいろな面を診ていくわけで、そこに魅力を感じていたのです。
 開業した頃には同じ市内に脳外科の医師がおらず、隣の市まで行かないといけなかったようです。都会だと外科でも細かく分かれていますけど、地方なのでそうもいかないですよね。だから幅広く受け入れます。
 当院にはいろんな患者さんが来院します。例えばお腹が痛いと来院した方でも、CTを撮って子宮に問題があるのが分かれば、産婦人科の領域だということでそちらへ紹介できます。患者さん自身は産婦人科を受けようと思ってこなくても、正しいところにつなげられる。

 お子さんが怪我をして縫わなければいけないとなった時に、内科の先生だと縫えませんが、うちでは出来ます。まあ、なんでも屋ですね(笑)。患者さんにとってはまず診てもらおうというところなんですね。それが本来のかかりつけ医だと思います。とりあえず来てもらって、そこで医師が判断をして、細かいところに割り振っていきます。
 患者さんが自分で判断して病院へ行くと、たらい回しになってしまったり、自分でもあっちへ行ったりこっちへ行ったりするうちに、何を聞かれているのか分からなくなって、ジプシー患者になってしまう場合があります。そうならないためにも、プライマリケアとして間口の広い受け付け先が必要、と考えています。うちではCTが撮れますので、患者さんの状態をある程度断定してから他の病院に送ることが出来ます。こういう疑いがあるとか、データを持たせて送ることも出来る。ただ、あまりもたもたしてもいられない場合もあって、例えば脳梗塞だとTPAといって血栓を溶かす薬を早い段階で投与しなければいけないので、それはCTを撮っていたら間に合いません。その辺りの頃合いが難しいですね。

新しい理論が広がっていく漢方の面白さ

 一緒に医院で働いている妻が薬剤師で、薬学部で漢方薬の生薬を勉強していたんです。妻が出席していた勉強会に誘われて自分も参加するようになり、漢方に興味を持ち始めました。
 患者さんの症状に対して、西洋薬を使うのか、漢方薬を使うのかは患者さんの選択によります。薬ばかりじゃなくて、生活の仕方もありますしね。冷えとか食べ物とか、そういう所からも考えていきます。当院には管理栄養士がいて、栄養指導もしています。
 自分を実験台にして漢方薬を試したりもします。最近だと喉が痛い時に銀堯散という漢方薬を飲んでみました。漢方でも色々な流派があって、中国だと中医学といいますけど、中医学の中に温病という考え方があるんですね。日本の漢方薬としては入っていないけれど、薬は売っているんです。それがどんな風に効くかなと。残念ながら、まだそんなに飲んだ回数が多くないから、どういう人にどういうふうに効くかというところまでは、しっかり分かっていませんが。病院で出している漢方薬は、今までの研究成果で効果が確かめられているものです。そうでなければ処方せんも出せませんしね。
 西洋医学一辺倒だと、それこそ分解して分解して、二元論です。漢方には流れがあります。普通によくある葛根湯というのは、傷寒論という論文があって、その流派です。それがずっと来て、新しいので温病学派というのがある。いろんな考え方があるんです。
 物理学の体系もそうですね、ニュートンがいて、アインシュタインが出てきて、量子力学が出てきて。量子力学だと光を波と見るか粒子と見るか、それから観察者の立場とかね。漢方ってそんな感じなんですよ、どんどんいろんな理論が出てくる。それが面白いです。

東洋と西洋の利点を生かしたトータルな医療を

 これからは包括支援といって、リハビリも病院で長い時間を費やすのではなく、在宅の介護の中で行なったりする流れが加速します。デイサービスだと民間でもできますけど、デイケアは医師がいないといけないので、その中に役割を見つけていけたらいいなと思っています。
 リハビリにも鍼灸のツボだとか、東洋医学を取り入れたいですね。薬だけではなくて、鍼と両方を使うのが本来ですから、習いたいと思っています。突き詰めれば、本場の中国で勉強してみたい気持ちはあります。
 西洋医学と東洋医学は対立するものではないですから、両方を上手く使って、いつか東洋医学的な漢方薬や針灸の知識を活かせるようなリハビリ施設を作りたいですね。

取材・文/服田恵美子(Hatta Emiko)
ライター・翻訳・脚本制作・構成作家。ジャンルを問わず紙媒体からWebまで、文字のあるところなら何処へでも、呼ばれて出向いて活動中。兼業ライター時代に培ったリサーチ力とフットワークの軽さを活かして、取材と執筆を行う。

三才堂 内山医院

医院ホームページ:http://www.uchiyamaiin.com/

豊鉄バス「上平井」より徒歩1分、またはJR飯田線「東新町駅」より徒歩5分。
採光のいい大きな窓がある待合室はリラックスできます。50台駐車できるパーキングを完備。
詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

内科、外科、脳神経外科、リハビリテーション科

内山晴旦(うちやま・はるあき)院長略歴
昭和56年 浜松医科大学卒業 医師免許取得
昭和62年 日本脳神経外科学会専門医取得
平成元年浜松医大付属病院脳神経外科、浜松赤十字病院脳神経外科、新城市民病院脳神経外科の勤務を経て、内山医院を開業


■所属・資格他
医学博士、日本脳神経外科学会会員、日本東洋医学会会員


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