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[医療人] 2017/02/17[金]

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患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医の先生。そんな先生達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

駒木野病院 菊本弘次院長

「良き治療者」として力を発揮したい

 私は青森県の弘前大学医学部を卒業しました。卒業ギリギリまで専門を何科にするか決めかねていました。そんな中、たまたま東京都立松沢病院という精神科の病院で研修医を募集していることを知り、青森を離れるか、留まるか迷った末、自分の力を試したいと思い上京しました。今にして思えば、後付けでいろいろ動機はあったのかもしれませんが、いろいろな偶然が重なって目の前のチャンスに飛び込んだという感じです。以来、つねに「良き治療者でありたい」と患者さんと向き合ってきました。

 2008年から、東京都の福祉保健局で障害者施策推進に関わる仕事もしました。行政というのは今も昔も、とにかく時間がかかることが多いものです。非常に重要な仕事であることは理解していましたが、今、目の前で困っている人に対して何ができるのか、精神科医として25年、培ってきたものが活かせていないのではという思いがありました。そんなときに、縁あって駒木野病院から誘いを受け、2009年からこの病院で働くことになりました。

 駒木野病院は高尾山に近く、四季折々の自然を実感できる場所にある精神科に特化した病院です。一般的な精神科外来や病棟のほか、認知症やアルコール依存症、児童精神科の専門外来と病棟もあり、子どもから高齢者まで幅広い年齢の患者さんに精神科の専門的な医療を提供しています。

地域の精神科医療を長年支えてきた病院


駒木野病院 病院全体(病院提供写真)

 当院の歴史は古く、とくにアルコール依存症の治療については50年前から自助グループを取り入れた治療を続けてきました。1988年にはアルコール専門病棟を設置。現在はアルコール総合医療センターとして、治療だけでなく、アルコールリハビリテーションという、再発予防や社会生活復帰のためのサポートをおこなっています。また、アルコール講習会や家族会など、家族をサポートするためのプログラムも設けています。

 見えないところにまで気を配り、患者さんの病気を見つけ、的確に診断し、できるだけ早く治せるよう治療に取り組むのが私たち医師の仕事です。しかし、患者さんの生活まで考えるときには、医師だけでなく多くのスタッフの視点と支援が必要です。精神科医療においてはとくにチーム医療が重要で、外来や入院による治療やリハビリから退院後の生活支援まで、医師や看護師、ソーシャルワーカーなど多くの専門職が連携しています。また、院内だけでなく、ご家族や地域の方々にもチームに参加していただいています。

 そのために、当院ではサービスステーション駒木野という窓口を設置しており、ソーシャルワーカーなどの専門スタッフが、病院と地域や家族をつなぐ役割を担っています。当院では、昔からソーシャルワーカーがすごく力を発揮してくれており、それが当院の伝統とも言えるほど。地域の方々に「うちの病院ってどういう病院だと思う?」と聞くと、「○○先生がいる病院ですよね」「事務長の○○さんがいますよね」と、医師や職員の名前が実に多く出てくる。私はそれがとても嬉しいのです。それは、それぞれの部門やスタッフが院内だけでなく地域でも力を発揮できている証だと自負しています。

子どもからお年寄りまですべての心の病気を診る


児童外来(病院提供写真)

 もうひとつ当院が注力しているのが、児童精神医療です。2010年に児童精神科外来を開始し、12年に約30床の児童精神科の専門病棟も設立しました。認知症など高齢化に伴う病気も増えていますが、子どもたちを診ることで見えてくる社会の問題、課題も多くあり、社会における児童精神医療のニーズは高いと実感します。しかし、大人とは異なる難しさもあります。例えば入院の判断でも、子どもが自ら希望して受診したり入院したりすることはまずありません。治療も入院も家族の同意に基づくことになりますが、家族の意向通りにいかないこともありますし、治療のために家族と離れることが必要なこともあります。子どもを守ること、そして病気を治すことが最優先と思っています。

 私たち大人にとって1年はあっという間ですが、子どもが1年で成長する過程はとても大きく、その1年をお預かりする責任の重さはとても感じます。時に、家庭や学校の役割の一部を担うことが求められることもあります。もちろん、ご家族の代わりにはなれませんが、児童精神科の専門医と看護師、心理士、作業療法士、精神保健福祉士などがチームを組み、できる限り治療環境を整えられるようサポートしています。

 学校に関しては、ケースワーカーや地域の先生方のご尽力のおかげで、東京都立八王子東特別支援学校が訪問学級として来てくれています。このように、地域の人たちに支えていただいていることも子どもたちにとって大きな意味のあることだと思っています。

患者さんのために「百方美人」でありたい


患者さんの作品(病院提供写真)

 精神科を受診することは、患者さんにとってハードルが高いことだと思います。例えば患者さんが受診したいといっても、家族の反対や、周囲からの偏見がいまだにあるとも聞きます。ですから私は、患者さんに会ったらまず、「よく来てくれましたね。ありがとう」と伝えます。「病院に来るだけでほめてもらえたのは初めてです」と驚かれる人もいますが、目には見えない高いハードルを越えてこの病院にたどり着いた患者さんと、大事に向き合っていきたいと思うのです。

 精神科の病気は治療が難しいものも多く、よくなるためには、継続して治療を受けていただくことが重要です。かといって、受診を強制しても患者さんが嫌だと思えば来てはもらえません。怖いところ、嫌なところには誰も行かないですよね。ですから、「とにかく患者さんに、『来てよかった、また行こう』と思ってもらいたい」、「病院に来ることで、『それまでより症状が軽くなった、生きやすくなった』と実感してもらうためにはどうすればいいか」、「症状はなかなか改善しなくても、病院に来ることで少しでもホッとしてもらうためにはどうすればいいか」、そのことばかり考えています。なかなか治療がうまくいかず、時間がかかることもありますが、それでも粘り強く、誠心誠意治療をしていくことで信頼関係を築いていければ、そして私のそんな気持ちが病院全体に伝わっていけば、きっと患者さんにとっても良い方向に動くと信じています。

 病気になると、「何が悪いのか」「誰が悪いのか」犯人を捜したくなります。でも、犯人を捜しても解決しないこともあります。ですから、犯人=病気と闘うより、うまく付き合っていく方法を一緒に考えていければと思います。どうしても悪者を見つけたいなら、「ヤブ医者のせいだ」と医師のせいにしてもらえばいい。患者さんが自分を責めたり、家族を責めたりして不幸な転帰をとるより、医療に八つ当たりしてもらったほうがずっといい。そのためにも、私は患者さんたちに対して、「八方美人」といわれようと、「百方美人」ぐらいでありたいと思っています。

取材・文/出村真理子(Demura Mariko)
フリーライター。主に医療・健康、妊娠・出産、育児・教育関連の雑誌、書籍、ウェブサイト等において取材、記事作成をおこなっている。ほかに、住宅・リフォーム、ビジネス関連の取材・執筆も。

駒木野病院

医院ホームページ:http://www.komagino.jp/

※中央の写真は病院提供写真

JR中央線・京王線「高尾」駅から徒歩15分。高尾山を間近に望む自然豊かな病院です。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

精神科、神経内科、内科、小児科、リハビリテーション科、歯科

菊本弘次(きくもと・ひろつぐ)院長略歴
1984年 弘前大学医学部卒業
1984年 都立松沢病院
1992年 都立府中病院(現 都立多摩総合医療センター)
1995年 都立多摩総合精神保健福祉センター
2001年 都立松沢病院
2008年 東京都保険福祉局障害者施策推進部
2009年 駒木野病院 院長就任


■所属・資格他
精神保健指定医、公益社団法人 日本精神神経学会 精神科専門医、日本精神神経学会


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