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[クリニックインタビュー] 2017/05/12[金]

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患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医の先生。そんな先生達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

八王子乳腺クリニック 三坂武温院長

研修医として経験を積みながら乳腺科を選択


三坂武温院長(医院提供写真)

 医師を目指したのは、父が産婦人科の開業医だったからだと思います。

 医学部卒業後、まったく知る人のいない大都会の大学病院にあえて身を投じ、外科の研修医としてあちこちの病院を回りました。多くの先輩医師たちにもまれながら目の前の患者さんのために治療をする日々が続きとても大変でしたが、使命感や必要とされている実感がありました。そうした中、当時は外科の一領域でしかなかった「乳腺科」で乳がん患者さんを数多く診る機会がありました。

 まだ「早期発見」や「予防医学」という概念もなかった時代だったため、病状が進行した患者さんが多くいました。進行乳がんは、一生懸命治療をしても治りづらく「どうしてだろう、どうすればいいんだろう」と考えながら日々の診療をこなしているだけでした。そんな時、がんの検診センターの研修で先輩医師に診断技術や早期発見に必要なテクニックなどを教えてもらい、関心を持ちました。それが乳腺科の医師になるきっかけでした。乳がんは早期発見すれば十分に治療が可能な病気であること(予後良好)や治療の面でも診断学の重要性に気付いたことから乳腺科の診断領域を専門的にやっていくことを決意しました。

「分業」を目指して「診断」の専門施設を開く

 外科領域の特徴かもしれませんが「診断から治療まで、自分が患者さんのすべてを診たい」と考える外科医が多いと思います。医師はスーパーマンではないですし、すべてを一人で請け負うことには限界があります。

 私自身が「分業化」が理想と考え、乳腺の病気全般の診断と経過観察を専門におこなう施設として、八王子乳腺クリニックを開設しました。当院は検査と診断をおこない、適切な治療を受けられる関連施設に速やかに振り分け紹介します。また治療後の経過観察(主治医(治療先)指導のもと)もおこなっています。

 主な患者さんは、がんや乳腺全般の病気に関する検査を受けたい人、市のがん検診で再検査が必要といわれ精密検査が必要な人です。また、他施設から紹介された人や自覚症状など心配なことがあるのに検査を受けていない人なども来院されます。

患者さんのその後の人生を左右する診断

 乳腺の検査、しかもがんなど重篤な病気の検査に来られる患者さんは、緊張や不安を抱いています。そのため、開業するときにはできるだけ「病院らしくない」クリニックにしたいとこだわりました。スタッフにも、患者さんがリラックスできるよう、対話や言葉かけなどのコミュニケーションを大切にしてほしいと伝えています。

 診断にあたっては「なぜこういう画像になったのか」を徹底的に考えた上で読み解くことを心がけています。これは、研修時に先輩から教わりました。「ものごとを単純に見ず、つねに疑って見ろ。物を見る時、どこに注目するかで見え方は変わる。なぜそうなったかを考える習慣をつけろ」と言われました。最初はまったく理解できませんでした。多くの患者さんの画像を見続け、診断を重ねるなかで身に付けることができた技術だと思っています。

 診断の結果を患者さんに伝えるときは、遠回しな言い方や私情を交えずにありのままの事実をお伝えします。診断の結果によっては、患者さんのその後の人生に大きく関わるため、安易ななぐさめや気休めの言葉より、まずはきちんと事実をお伝えし、その後の治療などについてのご相談をすることが大切だと考えています。受け止め方は人それぞれですが、最終的に治療を受けるのは患者さん本人です。どんなに良い治療法があっても、患者さん本人に「治したい」という強い意志がないと治療は進みません。患者さんが自分の力で気持ちを立て直し、前向きに治療に取り組めるようサポートができればと考えています。

早期発見は、いつもと違うという自分の体への意識

 乳がんは、早期に発見すれば治療できる病気です。早期発見のためには、がん検診を受けることが大切です。現在は、2年に1回乳がん検診を受けることが望ましいとされています。乳がん検診の結果、「異常なし」と言われたら、「ああ、よかった。これで次の検診まで安心」と思って帰られる方がほとんどです。しかし、検診の結果は、「今日までは異常がなかった」ことを示すだけで、明日以降の予測ではありません。「次の検診までがんにならない」保証はどこにもないのです。残念ながら現在多くの受診者は、後者が多いのが現実です。

 では、次の検診までどうしたらいいのか。それは、乳房のセルフチェックをし、自分の体の変化を意識することです。ただし、世間でよく言われるように、「しこりがないか触って」セルフチェックすることで、「乳がんは自分で発見できる」というのは、実は正しいとは言えません。「がんのしこり」を多くの人は触ったこともないはずです。どんなものかわからないものを探し続けると、「これかな?」「あれかな?」と不安ばかりが大きくなってしまいます。

 そこで、私は受診した患者さん全員に、「1週間に一度、素手で胸を洗いましょう」とお話しします。そして、「いつもと違うな、と感じることがあったら検診を受けてください」とお伝えしています。間違いでもいい、受診すれば専門家がきちんと検査をして、病気か病気ではないかを判断します。

 セルフチェックは、自分でがんを見つけるためのものではなく、「おかしい」と気づき、受診するきっかけにするためのものです。万が一の病気を早く見つけるためにも、自分の体の変化を意識する習慣をつけ、「おかしい」と思ったらがん検診を受けていただきたいと思います。

取材・文/出村真理子(Demura Mariko)
フリーライター。主に医療・健康、妊娠・出産、育児・教育関連の雑誌、書籍、ウェブサイト等において取材、記事作成をおこなっている。ほかに、住宅・リフォーム、ビジネス関連の取材・執筆も。

八王子乳腺クリニック

医院ホームページ:http://breast-cl.jp/index.html

JR中央線「八王子」駅から徒歩5分。ビルの4階でエレベーターを降りてクリニックに入ると、受付でpepperくんがお出迎え。待合室は落ち着いた雰囲気で、検査への緊張感をやわらげてくれます。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

乳腺外科、乳腺内科

三坂武温(みさか・たけはる)院長略歴
1993年 金沢医科大学医学部卒業
1994年 東京医科大学外科第三講座
1995年 牧野記念病院外科
1996年 新座志木中央総合病院外科
1997年 東京医大八王子医療センター消化器外科
1998年 都立大塚病院外科
2000年 東京都がん検診センター乳腺科
2002年 東京都多摩がん検診センター乳腺科
2005年 財団法人労働衛生協会高井戸東検診クリニック乳腺科
2008年 八王子乳腺クリニック開設


■所属・資格他
日本外科学会認定外科専門医、日本乳癌学会認定医、マンモグラフィ読影認定医、特定非営利法人日本乳がん検診精度管理中央機構読影A資格


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