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[クリニックインタビュー] 2009/11/13[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第42回
清水内科
清水美津夫理事長

倒れてからの治療でなく、倒れる前になんとかできないものか

simizu_clinic_01.jpg 小学校4年生の時に父親がこの地で開業して以来、地域に密着する形で診療をしていましたので、その姿を見ながら育った自分は、自然と将来は医者になるんだと意識していましたね。大学を卒業してしばらくは、心臓など循環器系を目指して勉強を重ねていたのですが、救命センターなどで勤務していると、患者さんは倒れてから担ぎこまれてくるわけです。ふと「倒れる前に、なんとかできないものだろうか。」と考えて、当時はまだまだ認知が少なかった糖尿病に、関心を持ち始めました。
 契機となったのは、朝日生命糖尿病研究所付属病院での勤務です。ここでは有名な先生もいたし、臨床でも3000人くらい糖尿の患者さんをこなして、血糖値やコレステロールを管理することで、「倒れる前の治療」効果を実感しました。

地域密着で、糖尿病専門の医院として発展してきた

当院オリジナルの食事指導シート。ピンクのおはじきが「きしゃご」当院オリジナルの食事指導シート。
ピンクのおはじきが「きしゃご」

 父の医院を受け継いで理事長に就任してから10年間、お陰様で患者さんの数は右肩上がりで増え続けてきました。糖尿病患者の数でいえば、群馬・栃木・埼玉県下の大学病院と同等以上の水準で、1型糖尿病患者が120人、2型が1850人(2009年4月実績)です。現在、院長と私の他に女医の専門医が常勤で3名体制にて診療にあたっています。また、栄養士も4名体制とこの規模の医院としては破格の充実ぶりなので、栄養指導も予約なしで、診療時間内ならいつでも受けられます。
 19床の入院施設もあるので、糖尿病治療では重要な「血糖値コントロール入院」を数日~2週間程度、実施することも可能です。さらには患者会も歴史があります。『きしゃご会』(※)という名称で現在の会員は約100名。若い世代の患者会も別にあって、一緒にディズニーランドに行ったりしています。先日、30周年記念の会を盛大に催しました。元巨人軍の新浦投手や、全日本エアロビックス選手権優勝の大村さんなど、糖尿病と付き合いながら自分の道を極めている方に来ていただいて講演をしてもらいましたよ。

※「きしゃご」とは、キサゴの貝殻を用いて遊ぶおはじきで、それを清水内科では栄養指導に使っていることから由来。

「数値」を患者さんと一緒に追いかける面白さ

simizu_clinic03.jpg 糖尿病の外来の面白さは、「数値」で治療成果が見えることですね。医師も患者さんも、看護師も、あるいは事務員までもが一緒になって、HbA1c(※)を追いかけるわけです。逆に、糖尿病は自覚症状がないし経過も長いので、患者さんは治療効果を実感しにくく飽きてしまいやすい。だから数値で一喜一憂するのがかえって良いのかもしれません。当然、神経質になり過ぎてはいけませんが。
 当院では、患者さん全員のHbA1cを、年に数回、院内に貼りだしています。「誰がどの数値か」までは公表しませんが、患者さんは「自分と同じ数値が、何人くらいいるのか」「自分は全体のなかでどの位置にいるのか」が、毎月分かります。テストの成績順位が貼り出されるようなもので、やはり刺激になるし、患者さん同士で会話も弾むようです。

※HbA1cまたはHA1c=ヘモグロビンA1c。糖尿病治療における血糖コントロールの指標として用いられる。

休日も基本的には医院に顔を出す、それが1日のはじまり

栄養指導のスペースは広い栄養指導のスペースは広い

 私は日曜日も朝9時には入院患者の顔を見に行きます。365日、働いていますね。趣味も医院との距離を考えゴルフやスキーからは段々縁遠くなってしまいました。宴会や勉強会も、緊急事態があったらすぐ駆けつけられる近場になってしまいます。そんななかでも家族との小旅行は可能です。悲壮なワーカホリックに聞こえるかもしれませんが、自分としてはそれが自然体で、大らかに毎日を過ごしています。幸い、自宅が歩いて1分と家族に接しやすい環境にあることと、糖尿病という領域が自分の性格にもあっているからだと思います。
 医師には体育会系の熱血漢も多いのですが、私はマイペースな積み上げ型。患者さんの生活習慣と付き合いながら、長きにわたって数値をコントロールし続ける糖尿病治療は、私には向いているんだと思います。

患者さんへのメッセージは、「医師に気を遣いすぎないで」

 高崎という土地柄なのか、患者さんには素朴な人が多く、「そんなに医療者に気を遣わないで」と言いたくなる時があります。
 例えば、治療を放棄中断してしまった患者さん。「どうして通院しなくなっちゃったの?」と聞くとけして糖尿病のことを忘れたわけではなく、単に「治療をサボったことで先生に合わせる顔がなく、来づらくなった」「逆にいつも気にかかっていた」、ということがあります。そんなところで医師に気を遣うくらいなら、別の病院に行けば良いんです。放置することが一番いけません。
 また、治療効果が薄れてきた、マンネリ化してきたと感じる患者さん。糖尿病治療は、この10年間で大きく変化しています。食事の補助的に使用する薬、薬とインスリンの併用、運動と同じような効果を示す薬など、薬剤もいろいろ出ています。もしも患者さんが、もっと良いコントロールへの変化を欲するならば「今のままの薬でもう少し」と頑張るより、勇気を持って医師に「違うお薬に変えてもらえませんか?」と聞いてみることをお勧めします。

運動指導の実践面を強化して、次世代に

お寿司詰め合わせと、菓子パン一個、どちらのカロリーが高いでしょうお寿司詰め合わせと、菓子パン一個、
どちらのカロリーが高いでしょう

 当院は栄養指導に強い反面、運動指導はやや弱いと思っています。診療の際に5分程度の指導をすることはありますが、本当は、もっと実践的に行いたいですね。運動指導は点数が取れないために経営的には“患者サービス”になってしまうのですが、糖尿病治療には必要なものです。本格的にやるには、医院のリフォームや設備導入も必要になるので、お金もかかりますが。
 最近は患者さんのタイプも様々ですし、求めるものも違います。小中学生での2型糖尿病患者も増えてきて、従来の糖尿病イメージからは変わってきました。新たな世代の患者さんにも頼りにし続けてもらえるように、私達も自らを積極的に変えていきたいと思っています。
 娘が二人いるのですが、長女が、医学の道を目標に進みはじめました。将来はまだまだわかりませんが、良いところを自然体で受け継いでいってもらえたら嬉しいですね。

取材・文/QLife

医療法人社団 清水内科

医院ホームページ:http://shimizu-naika.or.jp/
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高崎駅からタクシーで7分。北高崎駅から徒歩8分。
道路沿いに、タイル貼りの明るい外観の3階建てが見えてくる。
詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

内科・消化器科・循環器科

清水美津夫(しみず・みつお)理事長略歴
清水美津夫理事長
1985年 帝京大学医学部卒
1985年 群馬大学第2内科入局
1986年 国立高崎病院
11988~1990年 朝日生命糖尿病研究所付属丸の内病院
1994年 県立心臓血管センター
1996年 清水内科 理事長就任

■所属学会ほか
日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会
日本糖尿病学会糖尿病専門医
内科学会認定医



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