第1回 初診から完治まで診なければ意味がない
[クリニックインタビュー] 2008/12/04[木]
大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。
第1回
烏山肛門大腸泌尿器クリニック 水本医院
水本晋作 院長
初診から完治まで診なければ意味がない
当院は大腸肛門科の私と、泌尿器科医で構成された専門医クリニックなので、それぞれの分野の高度な治療技術と広い知識を常に維持していけるよう心がけています。むしろ、初診から完治までが、当院一箇所で完結しなければ意味がないと思っています。
また、同じ疾患でも、患者さんひとりひとりの体調・体質・状態によって、ベストな治療法・手術の流れは異なります。それぞれの方に適応・不適応がありますから、初診の段階で患者さんに合った治療を見極めて、早期の完治に結びつけるよう心がけています。
初診ではまず、お話を伺ってから触診します。肛門大腸科の疾患であればそのまま専門医の私が担当しますが、何科にかかるべきかわからずご来院された場合でも、泌尿器科の疾病と判断すれば、すぐ泌尿器科の専門医に引き継ぎます。男性の場合は前立腺の腫れの有無で、どちらの科の対象か一目瞭然です。そして、泌尿器科ではエコー、血液検査、前立腺がん検査などを、必要に応じて受けて頂きます。
大腸肛門科では、初診では問診のほかに肛門・胃からの内視鏡による検査などを行い、内視鏡手術や最新機器での治療・手術につなげていきます。大腸肛門科の治療は、外科的な手術が中心だとお考え頂いて構いません。もちろん個人差がありますので、手術のタイミングや方法は、患者さんごとに調整していきます。
当院では一般的な切除法をはじめ、レーザー治療、硬化療法、また比較的新しい手術であるPPH(痔核本体を切除せずに治す方法)なども行っています。
診療のあいまこそ、自分をチャージするチャンス
当院は入院設備があるので3人交代で当直もしますし、不規則な生活になりがちですね。ですので、自分の健康を維持するための工夫などは忙しいので全くなにもしていません(笑)。ただ、睡眠は毎日4~5時間しっかりとっていますよ。
趣味は読書ですが、毎日手術がありますし、なかなかまとまった時間で読書する機会はありません。当院では年間1500~1700本の肛門・胃の内視鏡検査を行っており、その際に患者さんの準備をお待ちするスキマ時間が生じます。本を読むのは、主にそうした時間ですね。好きなテーマは、古代の日本です。この分野は大変面白いです。特に安本美典さんの著書はとても興味深いですね。いまは安本さんの『「倭人語」の解読―卑弥呼が使った言葉を推理する』を読み進めています。

「肛門のプロ」だから持てる知見と自信
仮に肛門から出血があっても、気恥ずかしさなどからかかりつけの内科にかかる方も少なくありません。しかし基本的に内科医は肛門を触診しませんし、患者さんが「痔なんです」と言えば、痔の薬を処方しておしまいで、たとえがんでも気づくのが遅れてしまう、という事態になりかねません。
当院では早期がんも含めて、毎年およそ50件の大腸がんを発見し、治療に繋げていますが、「私、がんかも知れないんです」と受診した方ばかりではありません。
初期診断や治療法を誤れば再発・悪化につながりかねませんし、完治まで遠回りすることになってしまいます。適切な処置によって早期に完治できるよう、自覚症状から安易な自己診断をせず、不快感・痛みなどの不定愁訴があれば、早めに受診していただきたいと思います。
大腸肛門科の疾患に関して言うと、通常、完治したら再発はしません。たとえば一般的な痔の手術にLE(結紮切除法)という方法がありますが、これを受けられますとその後約40年は再発しないことが実証されています。このように、完治後は再発に怯える必要もなく普段の生活に戻っていただけますので、嗜好品の摂取も生活習慣も、再発を恐れて我慢する必要は特にありません。ですから当院で手術を受けて完治された方に対しては、「好きなようにしてください」とお伝えしています。
広告代理店のコピーライターを経て、現在フリーライターとしてロンドン・北京・東京の三都市を基点に活動。被虐待児童におけるトラウマティック・ストレス学、および漢方による精神疾患アプローチに関する研究をライフワークにしている。
烏山肛門大腸泌尿器クリニック 水本医院
医院ホームページ:http://www.koumon-hinyouki.com/

幅広のスロープ・点字ブロック・自動ドア・引き戸など、各所にバリアフリーの工夫が。
肛門大腸科・泌尿器科の各種治療・手術検査を専門に行うクリニックです。
ベッド数は19床、短期入院も可能。包茎治療・ED治療・パイプカットを除くすべての治療が保険対象となります。
診察・検査は土日祝日にも全科で受け付けています。肛門科・大腸科・泌尿器科のどれにかかるべきか判断しかねる場合も、お気軽にお越しください。
診療科目
肛門科・大腸科の対象:痔・胃がん・大腸がん など
泌尿器科の対象:膀胱炎・尿管結石・前立腺の検査・手術・包茎・パイプカット・ED治療(性機能障害・勃起不全)など
水本晋作院長(肛門大腸科)略歴

1992年 所沢肛門病院 入局
1995年 東京・世田谷区に「烏山肛門クリニック」を開業(肛門科・大腸科)
2002年 泌尿器科専門指導医 水本裕之医師を加え、「烏山肛門大腸泌尿器クリニック 水本医院」に院名改称/現在に至る
- この記事を読んだ人は他にこんな記事も読んでいます。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。