後編:先生から、動脈硬化を予防するためのアドバイス
[医師が語る動脈硬化] 2011/10/28[金]
コレステロール管理の指標、LH比とは?
動脈硬化を予防するために、まずはLDLコレステロールの値をガイドラインで定められている値以下にすることが必要です。ここで、HDLコレステロール値が低すぎるのも問題です。理想は、LDLコレステロール値を下げたうえでHDLコレステロール値を上げることです。なかなか同時にこれを実現するのが難しいといわれてきましたが、近年スタチンと呼ばれる薬剤の一部がこの効力を発揮することが分かっています。
ただし、薬さえ飲めば生活習慣はどうでもいいというのは大間違い。基本は、食べ過ぎない、運動をして汗をかくこと。そのうえで、きちんと受診して薬剤を処方してもらい、LDLコレステロール値やLHバランス(LH比)を意識しながらコレステロール値を管理していくことです。
このLH比の概念は、動脈硬化の指標として注目されています。LH比が1.5を上回ると血管の壁にコレステロールがつき始め、2.0以上になると血管全体に動脈硬化が進行し、2.5以上はプラークが存在するくらいの状態だといわれています。
健康診断の血液検査でコレステロール値に要注意判定が出たら、まず受診すること。軽く考えて放置していてはいけません。
動脈硬化の進行度・危険度を知る方法
痛みもなく時間もかからない、比較的簡単な検査で動脈硬化の進行度を知る方法があります。それは、「頸動脈エコー(超音波)検査(IMT計測)」という検査です。
頸動脈(けいどうみゃく)といわれる首の血管は、外から簡便に動脈硬化を判定しやすい血管の一つで、この頸動脈の状態を知ることで、全身の血管のおおよその状態が分かるといわれています。血管の硬さや厚みを0.1mm単位で測定し、詰まり具合や動脈硬化の程度を詳しく調べる検査です。正常値は1.0mm以下。1.0mmを超えると脳血管障害と虚血性心疾患の発症率が高くなるといわれています。IMT値は、頸動脈自体が詰まっていないか、あるいはプラークの有無を見ると同時に、全身の動脈硬化の有無を予知する大事な指標です。
画像:頸動脈エコー写真
また、上腕動脈と足首の血圧の比率を計算(足首収縮期血圧÷上腕収縮期血圧)することで、下肢血管の動脈硬化の進行程度や血管の狭窄、閉塞などの状態を推定する検査もあり、ABI検査といわれています。横になった状態で両腕と両足の血圧を測ると、ふつうは足首のほうがやや高い値になりますが、動脈に狭窄や閉塞があると足首の血圧は低下します。正常ABIは1.0以上で、0.9以下は閉塞性動脈硬化症の疑いが…、ABIは、全身の動脈硬化を推定する有効な指標です。
動脈硬化が気になる方・患者さんへのアドバイス
動脈硬化は目に見えないし、自覚症状がありません。知らないうちに進行していて、気付いた時には大変なことになってしまう、厄介で恐ろしい状態なのです。危険を簡便に知る方法が健康診断での血液検査で知るコレステロールの値といえます。特にLDLコレステロールの値、LDLコレステロール/HDLコレステロールのバランスに注目する必要があります。
動脈硬化を予防する方法は簡単です。LDLコレステロールをため過ぎないで、余分なコレステロールを減らしてくれるHDLコレステロールを増やせばいいのです。そのためにはまず食べ過ぎないこと。食べ過ぎるとコレステロール値は上がります。それに血管に悪い影響を与える喫煙もだめ。肥満や運動不足も、脂質を悪化させます。このようにコレステロールをためない生活習慣に改善していくことが重要です。
最も大事なのは自己判断をしないこと。かかりつけ医のアドバイスに従って、動脈硬化の危険因子を一つひとつ消していきましょう。
野原隆司(のはら・りゅうじ)先生
(財)田附興風会医学研究所北野病院 副院長、心臓センター長
1977年京都大学医学部卒業後、同大学研修医員を経て1986年Washington Univ., Cardiovasc Div (Dr. Burton E Sobel)留学、2001年 (財)田附興風会医学研究所北野病院 循環器科部長、内科統括部長・リハビリ部長・心療内科部長兼任を歴任し、現在に至る。また、京都大学医学部 臨床教授、京都大学医学部保健学科 非常勤講師を兼任。
【資格等】 循環器内科認定医、内科認定医、高血圧指導医
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