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[クリニックインタビュー] 2011/03/18[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第107回
杉浦内科クリニック
杉浦芳樹院長

数値が語りかけてくれる内科医を選んだ

 高校時代の僕は、「どの方向に進みたい」という強い進路の希望がなかったんです。理科系科目が得意だったことから、高校の担任の先生にすすめられて工学部に入学。その中で興味のあった応用物理学を学んでいました。
 ところが「将来どうなりたい」「何がしたい」という強い思いがなくて悩んでいました。人生の答えを模索しながら、いろんな書物に接するうちに、精神科医に憧れるようになったんです。それで工学部を卒業してから、改めて医学部に入学しました。
 医学部には浪人生も多いですし、僕のように別の学部を卒業してから入学した人もいました。年齢層は幅広い方でしたが、それでも年上の方なので「さん」付けされながら、年下の同級生たちと楽しくやっていました。スポーツが好きな普通の学生でしたよ。
 精神科に興味を持って医学部に入りましたが、実際の精神科医療に接してみると、昔、本で見た世界とは少し違った印象でした。精神医学に対して抱いていたイメージは、その道をいけば他人の深層心理を見ることができて、世の中の色んなことが理解できるかもしれない、と思っていました。しかし、現実は人の心理、精神はかなり複雑で、理解するということには大きな時間がかかります。
 いろんな分野の医療を学ぶうちに、興味を持ったのが内科でした。内科は数値でわかることが多いので、工学部で学んだ経験のある僕にとっては、ひかれる分野だったんです。

睡眠時無呼吸症候群との出会い

 医学部では呼吸器疾患を中心に、膠原病やリウマチも研究していましたね。卒業後は名古屋市立大学病院第2内科に入局。呼吸器科を専門にしながら、複数の病院に勤務しました。最後に名古屋市立東市民病院に赴任して、「睡眠時無呼吸症候群」という病気があることを知ったんです。
 この疾患は数値でわかることが非常に多く、僕が内科に興味を持つきっかけに通じる部分があったんですよ。治療の成果も大きく、数値を見ながら最適な治療をすると、すごく良くなる率が高いんです。
 内科には長く闘う疾患、症状を抑えて上手につき合っていく疾患が多いから、見違えるように良くなる病気は少ないですよね。完全に治るというと誤解されてしまうけれど、「睡眠時無呼吸」は治療がよく効くので、きれいに症状を取ることが可能なんです。
 この「睡眠時無呼吸」は、自覚症状があまりなく、あるとすれば「眠くなりやすい」「疲れやすい」くらいです。自分ではわからないけれど「いびきが大きい」「呼吸が止まっているよ」と、家族や親しい方に指摘されて気づくこともあるようです。

専門クリニックとしての船出

 「いびき」や「睡眠時無呼吸」は、年代で悩みが若干異なります。若い方……特に女性だったりすると「恥ずかしい」という悩みがあるでしょう。友達と旅行にも行きづらかったりします。「結婚したらパートナーに迷惑かけるんじゃないか」と悩んでいる方もいました。もう少し上の年代になると「会議中に寝てしまう」など、仕事への影響を深刻に悩むケースも増えていきます。
 大学病院では一般診療で忙しくなってしまうので、なかなか「睡眠時無呼吸」の検査を専門的にじっくりとできる環境ではなかったんですね。悩んでいらっしゃる方も少なくないのに、治療に取り組む余裕がない。
 クリニックを開業することで、自分の理想とする専門治療ができる今のシステムを整えられました。二階部分は全面「睡眠時無呼吸」のための施設になっていて、4床の入院設備を整えています。
 呼吸器科の中でも「いびき」「睡眠時無呼吸」を専門にするクリニックは全国でも少なく、名古屋市内には4カ所です。うちが開業した時は、他にわずか1カ所だけでした。内科クリニックでは珍しく、市外からの患者さんも多い方ですね。

患者さんの言葉に感激


飾られている絵画は、患者さんからの贈り物

 うちは今、開業4年目。ようやく地域の方々に親しんでいただけるようになりました。50歳を過ぎてからの開業だったので、年齢的には遅い方だったと思います。
 開業に踏み切ったきっかけは、いろいろありますが、名古屋市では院長以外の医師の定年が60歳だというのも大きな理由でしたね。もっと長く医師を続けたい。まだまだ医師として、いろんなことに挑戦していきたい。そういう気持ちが強かったんです。クリニックの院長に、定年はありませんから……。
 街のクリニックと大学病院との違いは、患者さんの身体の全身を診ることです。僕の専門は内科や呼吸器科ですが、患者さんは「眼が痛い」「膝が痛い」といった身体全体の悩みや不調、新たな病気を相談してくれます。かかりつけ医として信頼されているということなので、本当に嬉しいですよ。専門外のこともできる範囲で「少し様子を見ようか」「それは眼科に行った方がいいよ」と応えています。
 患者さんから「私の身体はすべて先生にお任せしている。死亡診断書も先生に書いてもらうと決めているよ」という言葉をいただきました。もう感激して「じーん」と来てしまいましたね。
 患者さんと「ご近所づきあい」の感覚で、世間話ができるのも楽しいです。地域のイベントの話や、商店街の組合にも入っているので会合の話で盛り上がることもあります。親しみを持ってもらいながら、アットホームな医療ができるのを実感しています。

仕事も趣味も充実したい

 今は忙しくて時間が取れないのですが、もともとスポーツが大好きでした。大学時代はウインドサーフィンで、全日本レースの予選まで通ったこともありました。国家試験に専念するために、本選に行かなかったのですが、他の大学と合同の合宿もして、かなりウインドサーフィンに打ち込みました。
 数年前にはフットサルチームを作りました。医師、研修医、医薬会社の人などに声をかけてメンバーを募ったら「やろうやろう」と集まりました。私は皆より年齢が上だったのでキーパーでした。勤務医は転勤も多いので、メンバーがバラバラになってできなくなったのが残念です。
 今年はできなかったんですが、年に一回リレーマラソンにも出ていました。医師ばかりの10人のチームで頑張りました。今は時々ゴルフをするくらいですが、スポーツは好きなので落ち着いたらまたやりたいです。
 今は休みが日曜だけなので、子供と話をしたり、犬の散歩をしたり。家族とゆったり過ごすことがほとんどです。絵を見るのも好きで、休みの朝の楽しみはNHKの「日曜美術館」を見ることです。近くの美術館に行くこともあります。引退したら、自分でも何かクリエイティブなこともしてみたいですね。

取材・文/今井美香
情報出版社に勤務後、広告・編集プロダクションにて、コピーライター職を経験。2006年フリーランスとして独立。取材経験はビジネスマンを中心に500人以上。 2009年「ショートストーリーなごや」佳作受賞。

杉浦内科クリニック

医院ホームページ:http://www.sugiura-sleep.com/

名古屋市地下鉄鶴舞線「いりなか」駅下車すぐ。詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

内科・呼吸器科・睡眠時無呼吸症候群

杉浦芳樹(すぎうら・よしき)院長略歴
1985年 名古屋市立大学病院第2内科臨床研修医 
1987年 大同病院呼吸器内科勤務
1993年 静岡厚生連遠州総合病院 内科(呼吸器内科)勤務
1996年 名古屋市立大学病院 第2内科助手
2003年 名古屋市立東市民病院 第4内科部長
2006年 杉浦内科クリニック開院


■資格
日本内科学会 認定医、日本呼吸器学会 専門医、日本リウマチ学会 専門医

■所属学会
日本内科学会、日本呼吸器学会、日本リウマチ学会等


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