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[クリニックインタビュー] 2014/09/12[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第166回
平田ペインクリニック
平田道彦 院長

9代続く医師の家系に生まれて

 私の家は9代続く医師の家系で、父もおよそ50年開業していました。ですから、医師の息子たちはみんなそう思っていると思いますが、ごく自然に、特にそれをやめる理由もないという感じで医師の道に入りました。書道家になりたいと思ったこともありましたが、いざとなるとやっぱり医師だという感じでしたね。生きた人間に興味がありましたから、明らかに自分は医師になるのが合っているとも思いました。
 開業の際は、別の所でもだいぶ誘われました。ですから、どこで開業してもよかったのですが、この辺りには、父が診ていた患者さん達がいらっしゃいます。それで、私の代で「別の所で開業します」とはちょっと言いづらかったんです。今も1割くらいの患者さんは、その人達の関係者です。父が診ていた方がもうおじいちゃんになっておられるので、私はその人達のお孫さんを診ているという感じです。開業医としては、やっぱり親近感のある患者さんを何とかしてあげたいというのもありますから、結果としてこの場所で開業して良かったと思います。
 開業のきっかけは、漢方医学の面白さがわかって、自分なりの診療がしたいと思ったことです。私の専門はペインクリニックですが、この分野で開業している医師は多くありません。漢方を使っているとなるとさらに少ないかもしれません。麻酔科は患者さんの全身を診る科です。漢方も全身を診ますから非常に近いものがあるのです。そういう意味でも、自分なりの診療ができる開業医が、私には向いていると思います。

病気の診断より、患者を楽にすることが優先

 医療人としてのポリシーは、「人が相手だ」ということを念頭に置くことです。病気ではなく、病気になっている人が「問題」だということ。だから、こう言うと語弊があるかもしれませんが、私はあんまり病気そのものには興味がない。もちろん診断はしますけど、診断自体に価値があるのではなくて、患者さんを楽にすることに価値があるので。患者さんの全体を「問題」だと思っています。
 例えば、膀胱炎の患者さんが来たら膀胱炎の治療をしなければいけませんが、膀胱炎のなり方もそれぞれまったく違う。インフルエンザにしても、ものすごく働いていてインフルエンザになった人と、体力がなくなっていて外にも出ない、運動もしなくて日にも当たらない人のインフルエンザとではまったく違うので、違いに合わせて治療していきます。診断が同じだから、同じ方法で治療することはしません。
 皆さん、一人一人違いますよね。だから、一人一人違うように接しなければなりません。そのためには、こちらも素養を深くしないといけない。私は雑学が好きです。興味がないものはないんじゃないかって思います。それが臨床家には良かったのでしょう。
 他にも、患者さんと同じ目線で話すということに努めています。診察室にある私が座っている椅子は、患者さんが座る椅子とあまり変わりません。大きくてひじ掛けがあるような椅子には座りません。もちろん専門的な説明などはしますが、患者さんの言うことは、同じ目線で何でも聞く、それを実践しています。
 また、患者さんが治る条件の1つとして、睡眠も大切ですが、穏やかな気持ちでいられることも大切だと思います。そのために、待合室にも工夫を凝らしました。いかにも待合室風にはせず、居心地がいいスペースにしています。やはり多少待っていただくこともあるので、その時にイライラしなくていいようにものすごく考えたんです。費用もかけているんですよ。水があったり木があったり、自然のものがあるのが大事だと思うんです。ご家族で来られたりもしますから、なるべく広くしました。

いいとこ取りでさらなるブラッシュアップを

 今後は、診療技術や治療技術をもっとブラッシュアップしていきたいと思います。鍼灸の鍼なども応用して、診療の幅を広げたいとも思っています。やはり漢方医学だけを使うのでは、追いつかないところもあるんですよ。いろんなものをいいとこ取りで取り入れて患者さんに応用していきたいです。
 また、身体のメンテナンス方法が悪い人たちのために、食生活や運動の方法全般を指導できるような環境が作れたらいいなと思っています。運動療法の先生を入れたりなどですね。痩せるようにと言ってもなかなかできない患者さんも多いので、もっと具体的に教えることができるようにできないかと、かねがね思っていましたから。それに間違った情報も氾濫していますので、正しい情報も発信できたらと思います。
 私の専門の疼痛治療に関してですが、他にも同じ専門の先生方がいらっしゃいますし、それぞれ得意な分野があります。でも、今はお互いの情報が共有できてなくてバラバラなまま治療している。患者さんから見ると、行った先の先生が、悩んでいる症状の治療が得意だったらいいけれど、そうでない時にどうするの?ということになります。ですから、先生方がお互いに自由に、しかも全体で患者さんを診られるネットワークを作れたらいいなと思っています。
 最近の休日は、患者さんにプロのゴルファーがいて、その方に教えてもらってゴルフに精進しています。書道もしていますが、やっぱりいい先生に出会ったのがきっかけです。長期の休みがなかなか取れないので行けませんが、旅行も好きですね。

取材・文/後藤 玲(Rei Goto)
医療系を中心にWEB、紙媒体で執筆。健康、料理、お菓子作りなど生活全般における執筆も得意とする。病院取材の他、一般企業への取材活動も行っている。

平田ペインクリニック

医院ホームページ:http://www.e-tao-hirata.net/

広い待合室には、水槽や植物が置かれ、ゆったりとした空間がある。建築雑誌にも紹介されたという建物には、院長の「入ってきた瞬間から診療」との思いがうかがえる。詳しくは、医院ホームページから。
(写真左:平田ペインクリニック提供)

診療科目

麻酔科、漢方内科

平田道彦(ひらた・みちひこ)院長略歴
1958年 福岡県生まれ
1985年 佐賀医科大学医学部附属病院 麻酔科助手
1991年 唐津赤十字病院 麻酔科医師
1993年 唐津赤十字病院 麻酔科部長
1998年 佐賀医科大学医学部附属病院  麻酔科蘇生科助手としてペインクリニックを研修
2000年 大分県済生会日田病院 麻酔科医長、手術部長
2003年 大分県済生会日田病院 麻酔科部長、救急部長
2004年 大分県済生会日田病院 医療技術部長
2004年 大分県済生会日田病院院長補佐
2006年 平田医院 副院長
2007年 同 院長
2009年 8月17日 平田ペインクリニック院長

■漢方歴
2000年~織部和宏先生(大分市、織部内科クリニック)に師事。
2004年~山田光胤先生に師事。山友会門下生となる。
2008年 東洋医学会福岡県部会 副会長
2009年 東洋医学専門医取得
2009年~2013年4月 東洋医学会福岡県部会 会長
テーマは疼痛性疾患と漢方治療

■所属・資格他
麻酔標榜医、日本ペインクリニック学会認定 ペインクリニック専門医、日本東洋医学会認定 漢方専門医、日本疼痛漢方研究会評議員、漢方浪漫倶楽部 キャプテン

■著書
今日から実践「痛みの漢方治療」(医歯薬出版/共著)、西洋医学的難治症例に対する漢方治療の試み(たにぐち書店/共著)、運動器のペインマネジメント (整形外科臨床パサージュ)(中山書店/分担執筆)、「冷え」と漢方治療 織部和宏編(たにぐち書店/分担執筆)、痛みのScience & Practice 2 “痛みの薬物治療” 漢方薬 選択の参考所見(文光堂)


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