ひざの痛みに対する再生治療の適応には、変形性膝関節症、靭帯損傷、腱炎などがありますが、各医療機関が厚生労働省に申請している適応疾患によって再生医療が受けられる疾患が異なります。また、適応の疾患であっても、再生医療による治療が適切かどうかは検査などを行ったうえで判断します。まずは再生医療を行っている医療機関にお尋ねください。
閉じるわが国では2014年(平成26年)に「再生医療等安全性確保法※1」という法律が施行され、特定再生医療認定委員会が行う、安全性や治療目的が妥当かどうかといった厳しい審査を通過して初めて、再生医療を提供することができます。さらに許可が下りた後も、1年毎に症例数や重篤な副作用の有無などを報告する義務が課せられています。このように、再生医療には一定の品質と安全性を保つための取り決めがあります。
- ※1 臨床研究あるいは自由診療として安全な再生医療を行うために、再生医療を実施する医療機関などに対する基準を定めた法律
高齢の方でも治療は可能です。現在、ひざの治療に多く用いられているPRP(多血小板血漿)療法や培養幹細胞療法は比較的体への負担は少ない治療法ですが、年齢的に体力に不安を感じている方は医師に相談してください。
閉じる持病があっても受けることは可能ですが、感染症やがんの既往のある場合、一部治療を受けられないことがあります。持病をお持ちの方は、必ず医師にご相談ください。
閉じる現在、変形性膝関節症に提供されている主な再生医療としては、血液を原料としたPRP療法やAPS(自己タンパク質溶液)※2療法、PRP-FD(フリーズドライ化PRP)※3療法と、皮下脂肪から作製する培養幹細胞療法があります。いずれの治療法も入院の必要はなく、歩いて帰宅することが可能です。
- ※2採取した血液から炎症を抑えるタンパク質と、軟骨の良好な状態を維持する成長因子を高濃度に抽出したもの
- ※3 PRPを凍結乾燥することで血小板の成長因子を効率よく抽出でき、長期保存が可能なため注射日を自由に選択できる利点がある
血液や皮下脂肪の採取に必要な時間は10分程度です。薬液の作製には、PRP-FD療法は3週間、培養幹細胞療法は6週間かかります。注射自体は10秒ほどで終わります。ただし施設によって異なりますので、詳しくは医療機関にお尋ねください。
閉じる血液の採取はPRP療法の場合は約30mL、APS療法の場合は約55mL、PRP-FD療法の場合は約50mLとなります。脂肪組織の採取は培養する場合は約20mL、培養しない場合では約350mLです(医療機関によって採取量は異なります)。痩せている方やご高齢の方でも採取することが可能です。
閉じる患者ご自身の血液成分や組織から抽出した細胞を少量注入するだけなので、これまで重い副作用は報告されていません。痛み、赤み、腫れ、灼熱感、皮下出血、アレルギー様症状などが発生する場合がありますが、多くは一時的です。症状が強い場合は医師にご相談ください。
閉じる治療当日の激しい運動や飲酒、マッサージなど治療部位へ刺激が加わるようなことはお控えください。また、赤みや腫れを早く改善するためには、患部を冷やすとよいでしょう。
閉じるPRP療法では治療後3週間、培養幹細胞療法では治療後1か月で効果が示されたという報告があります1, 2)。また、PRP療法はヒアルロン酸注射よりも長期間にわたって効果が持続したという報告もあります3)。ただし、効果の出現時期や持続期間は個人差があります。
- 1)Sucuoğlu H et al. Agri. 2019; 31(2): 63-69
- 2)Yokota N et al. Regen Ther. 2017; 6: 108–112
- 3)Dai WL et al. Arthroscopy. 2017; 33(3): 659-670.e1.
再生医療は現在では保険適応外であり、自由診療となります。したがって負担額は10割となります。詳しくは医療機関にお尋ねください。
閉じる健康保険の適用は、その治療審査に長い時間がかかるため未だ実現していません。そのような状況で、再生医療の実用化を促進する枠組みとして2014年(平成26年)に再生医療等安全性確保法が施行されました。本法律の下に再生医療を行う許可を得て、自由診療で治療を行っているのが現状です。
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