出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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慢性腎盂腎炎
まんせいじんうじんえん

慢性腎盂腎炎とは?

どんな病気か

 腎盂や腎臓そのもの(腎実質)に感染を起こす腎盂腎炎を繰り返すと、慢性腎盂腎炎になります。慢性腎盂腎炎では腎機能障害が徐々に進行し、腎不全に陥ることがあります。

原因は何か

 尿路に感染を起こしている細菌が何らかの原因で繰り返し腎盂に達するもので、尿流障害が背景にあります。つまり、腎盂・尿管の形態異常、尿路結石、腎盂・尿管の悪性腫瘍、膀胱尿管逆流現象神経因性膀胱前立腺肥大症などが原因として考えられます。

 急性腎盂腎炎で感染する細菌は大腸菌が多いのですが、慢性腎盂腎炎ではその他の細菌の場合も少なくありません。また、1種類の細菌だけではなく2種類以上の細菌に同時に感染している混合感染のこともあります。必ずしも細菌が証明できない場合もあります。

症状の現れ方

 通常ははっきりとした症状はありませんが、急性増悪を起こすと寒気や震えを伴った高熱や、腰や背中の痛み、尿のにごりや頻尿などの症状が認められます。慢性期には、微熱、全身倦怠感、食欲不振、腰痛、体重減少などの症状は軽微であることが多く、病気が進行すると高血圧になったり、腎不全に陥ったりします。片側性のものでは、病気が進行しないと症状としてはとらえられないことも多くあります。

検査と診断

 尿検査で白血球や細菌が認められ、また過去に膀胱炎急性腎盂腎炎などの尿路感染症の既往があれば慢性腎盂腎炎が疑われます。

 尿路の異常や尿通過障害を調べるため、超音波、静脈性腎盂造影、膀胱造影、CTなどの検査を行います。また、血液検査では腎機能障害の程度を確認します。

 区別すべき疾患としては、急性腎盂腎炎、慢性尿細管間質性腎炎、腎結核などがあげられます。

治療の方法

 できるだけ水分を多くとるようにします。薬は抗生剤を投与しますが、再発・再燃を繰り返す場合には、細菌尿が陰性化し、尿所見や臨床症状が改善したあとも、1カ月以上の継続投与が必要です。慢性化の誘因となっている尿通過障害があれば、尿の通りをよくする手術を検討します。

 尿路の基礎疾患が除去できなければ、急性増悪を繰り返し、腎障害が進行します。腎不全が進行した場合は、透析療法が必要になります。

病気に気づいたらどうする

 前述の症状がある時は、ただちに子どもは小児科、大人は泌尿器科か内科を受診します。

(執筆者:順天堂大学医学部腎臓内科学助教 井尾 浩章)

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腎盂腎炎に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、腎盂腎炎に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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コラム痛風腎

順天堂大学医学部腎臓内科学助教 谷本光生

 痛風腎とは、高尿酸血症が長期間続き、尿酸の結晶(尿酸塩)が腎臓の尿細管や間質に析出・沈着することで起こる腎臓病です。

 尿細管が障害され、尿が濃縮できないため、初期には多尿や夜間尿がみられます。尿検査では、血尿や蛋白尿などは認められないことが多く、あっても軽度です。血液検査でも、初期には異常はみられませんが、進行すると腎機能の低下が認められるようになります。

 治療では、食事療法や薬物療法によって、血液中の尿酸値をコントロール(正常化)することが大切です。食事療法では、高エネルギーや高蛋白の食事に偏らないように気をつけて、尿酸の元となるプリン体を多く含む食品(レバー、もつ煮込み、肉汁や干物など)はひかえるようにします。過剰なアルコール摂取は高エネルギーとなり、プリン体も多く含むので(とくにビール)、これらもひかえるようにします。

 また、尿酸の排泄を促すために、なるべく多くの水分をとるようにします。しかし、高度な腎機能低下がみられる場合には、水分を制限することがあるので、1日の水分摂取量を決めるには、主治医の判断が必要です。

 薬物療法では、尿中に尿酸を排泄する作用のある薬(尿酸排泄促進薬)と、尿酸が作られることを抑える薬(尿酸生成阻害薬)が用いられます。痛風腎では、主に尿酸生成阻害薬を投与します。

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