出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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多発性骨髄腫
たはつせいこつずいしゅ

多発性骨髄腫とは?

どんな病気か

 単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)をつくる形質細胞が腫瘍性に増え、これに伴い貧血や感染症、腎障害、骨病変などが引き起こされる病気です。この腫瘍細胞は免疫グロブリン(IgG、IgA、IgD、IgE)、またはベンス・ジョーンズ蛋白(κまたはλ)のうち、通常1種類の蛋白を異常につくり出してきます。

原因は何か

 原因はまだ不明で、悪性リンパ腫と同様に高齢者、とくに70歳以上に好発します。年間発症数は人口10万人あたり約2人で、全造血器腫瘍の約10%を占めます。全死亡原因に占める割合は年々増加し、2001年には人口10万人あたり2・7人です。

症状の現れ方

 発病は、多くの症例ではいつから始まったかはっきりせず、ゆっくりと進行します。何の症状もなく、定期健診を受けたところ血液および尿の蛋白の異常(M蛋白)を指摘され、これがきっかけでこの病気が見つかることもあります。

 自覚症状としては胸や背中、腰などの痛み、体重減少などがあります。骨折して受診し、この病気が発見されることもあります。骨はほとんど全身の骨が侵されますが、脊椎、肋骨、胸骨などから現れる場合が多いようです。腎臓が侵されることも多く、むくみや全身倦怠感といった慢性腎不全の症状で発症することがあります。

検査と診断

 血液中の蛋白の数値が高く、分析すると免疫グロブリンといわれる蛋白の一種が異常に高い数値を示すことから診断されます。骨髄検査を行うと、この異常蛋白を分泌する形質細胞が多数認められます。骨のX線検査では、打ち抜き像といわれる輪郭の明確な所見があり、骨が薄くもろくなっています。これが前述したような骨折の原因にもなります。

 病期分類を表16表16 多発性骨髄腫の病期分類(Durie and Salmon)に示します。

表16 多発性骨髄腫の病期分類(Durie and Salmon)

治療の方法

 多発性骨髄腫の診断確定後、治療が必要な症例かどうかを検討します。無症状の症例(病期Iの大部分)では、治療を行わずに厳重な経過観察だけを行います。

 病期IIまたはIII、明らかな骨病変の存在、M蛋白血症に関連した臓器障害、検査値異常を有する場合、またM蛋白が進行性に増加する場合が治療の対象となります。

●65歳以下の治療対象となる患者さん

 入院のうえ、造血幹細胞移植を前提とした治療を行います(高度の腎機能障害、心アミロイドーシス合併例は、適応を慎重に決定する)。通常、初回治療としてVAD療法(オンコビン、アドリアシン、デカドロン)を行います。

●66歳以上の患者さん

 原則としてMP療法(アルケランおよびプレドニン)を行いますが、一般状態が良好である場合、造血幹細胞移植を前提とした治療を検討することもあります。

 移植以外の治療法を選択した場合、プラトーフェイズ(M蛋白値などが安定して増加してこない状態)への到達が、治療の第一目標となります。

●自家造血幹細胞移植

 現在、多発性骨髄腫(とくに65歳以下)の標準的治療法と位置づけられ、生存期間の延長が証明されています。自家造血幹細胞移植には骨髄移植(BMT)と末梢血幹細胞移植(PBSCT)の2つの方法がありますが、PBSCTのほうが感染症や出血などの合併症が少なく、早期に退院が可能であることから一般的になっています。

●サリドマイド

 サリドマイドが自家造血幹細胞移植後の再発時に有効であることが知られていますが、日本でも2009年から保険適応となりました。

●ボルテゾミブ

 難治性や再発骨髄腫に対しては、プロテアゾーム阻害薬のボルテゾミブが有効と考えられています。なお日本人に投与した場合、重篤な肺障害の報告があるため、初回投与は入院が必要です。その他、末梢神経障害や帯状疱疹の合併に注意が必要です。

病気に気づいたらどうする

 多発性骨髄腫は一般に経過が長い病気ですが、骨痛や貧血などで日常生活に支障を来したり、感染症にかかりやすくなったり、時には腎機能が悪くなって透析を行わざるを得なくなるなど、さまざまな合併症を来します。これに対し、患者さん自身が担当医と相談のうえ、病気の状態を十分理解し、病気とつきあっていくことが重要です。

 腎障害の進展を予防するため、十分な水分摂取を心がけることも重要ですし、白血球減少がない時期においても感染症にかかりやすいので、うがいの励行がすすめられます。

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(執筆者:栃木県立がんセンター臨床試験管理部副部長 和泉 透)

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