出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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リステリア食中毒
りすてりあしょくちゅうどく

  • 内科
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リステリア食中毒とは?

どんな食中毒か

 リステリア・モノサイトゲネスを原因とする食中毒です。リステリアの仲間は、6菌種が知られていますが、食中毒の原因となるのは、リステリア・モノサイトゲネスです。

 この菌は自然界に広く分布しており、生乳、生肉、植物などから普通に分離されます。食品の製造ラインなどに定着することも知られていて、定着してしまうと長期にわたり食品を汚染し続け、食中毒の原因となることがあります。

 この菌による食中毒では、細菌性髄膜炎敗血症などの重篤な全身性の症状や、流産を起こします。細菌性食中毒の典型的な症状である急性の胃腸炎を起こすことはほとんどありません。

症状の現れ方

 健康成人では、1gあたり100個以下の低い菌数の汚染では感染することはありませんが、高い菌数の汚染を受けた食品を食べると、9~48時間で発熱を伴うインフルエンザ様症状がでます。この症状は気づかれないまま過ごしてしまうこともあります。2~6週間の潜伏期間のあと、髄膜炎敗血症などの重篤な全身症状を示します。重篤な症状を発症した場合は20~30%の高い致死率となります。

 高齢者、免疫不全者、妊婦では、低い菌数でも感染することがあり、感染時期が不明であることも多くみられます。妊婦が感染した場合には流産や、胎児への垂直感染、産道感染を引き起こします。

検査と診断

 症状からリステリア症を診断することは難しく、病巣の検体から菌の分離を必要とします。

予防のために

 ナチュラルチーズや調理ずみ食肉加工品などで、集団食中毒が報告されているので、感染しやすい高齢者や妊婦はこのような調理ずみ食品を食べる時には、注意が必要です。菌自体は熱に弱く、通常の加熱処理で死滅するので、食品を加熱してから食べることは効果があります。リステリアは冷蔵庫内でもゆっくりと増殖する低温増殖性があるので、冷蔵庫内で長期にわたって保管していた食品を加熱しないで食べてはいけません。

(執筆者:国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部室長 五十君 靜信)

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