専門医より推薦を受けた診療科目・診療領域

久留米大学病院は、複数の有名専門医(※)の間で「自分や家族がかかりたい」と推薦されています。
このページでは、専門医より推薦を受けた分野(科目、領域)の特色や症例数、所属している医師について取材・調査回答書より記載しています。 ※推薦、選定して頂いた有名専門医の一覧表

消化器外科グループ

分野

消化器・一般外科

特色

消化器外科グループは食道、胃、肝胆膵、大腸肛門、病態生理の専門班に分かれ、臨床と研究のバランスをとっている。また、チーム医療の充実を目指し、消化器センターで内科、外科、放射線科が共同で外来診察、検査や合同カンファレンスを実施している。1991年より内視鏡下手術を導入し、また消化管機能温存手術や集学的な癌免疫治療も行っている。2001年から画像動画回線を用いた遠隔医療にも取り組んでいる。

症例数

消化管の年間手術症例数は約800例

食道=食道癌切除60例(内視鏡的粘膜切除20例)、で進行癌にも内視鏡下手術を取り入れている。食道癌治癒切除例の5年生存率はstage0 95%、I75%、II55%、III 40%、IV 20%

=胃癌切除170例。5年生存率はstageI 95%、II70%、III40%、IV 15%

肝胆膵=肝臓癌98例で小さな肝癌に対してマイクロ波凝固壊死法を行い、治癒切除の5年生存率は60%。乳頭部癌5例、膵癌14例、胆管癌9例、胆嚢癌9例で、5年生存率は乳頭部癌57.9%、膵頭部癌20.3%、胆管癌18.7%。胆膵良性疾患には内視鏡下手術を適用

大腸肛門=大腸癌切除120例、10年生存率はstage0 99%、I95%、II85%、III 70%。潰瘍性大腸炎、クローン病のみならず大腸癌に対しても内視鏡下手術を取り入れ、直腸肛門癌に対して人工肛門を回避した究極の肛門温存術を行っている

ストーマ外来=専門看護師と協力して人工肛門に対するストーマケアを行っている。

医療設備

各種電子内視鏡、超音波内視鏡、超音波カラードプラ装置、レーザー内視鏡、消化管機能検査、括約筋筋電図、血管造影(DSA)、放射線治療装置、温熱治療装置など、大学病院としての設備は整っている。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

呼吸器・神経・膠原病内科部門・呼吸器グループ

分野

呼吸器内科

特色

大学病院として、診療、教育、研究を3本柱に呼吸器専門医の育成を行っている。呼吸生理学、アレルギー・免疫学、病理学および医学統計学などの基礎医学を取り入れて、エビンデスレベルの高い診療を目指している。また、胸部外科や胸部放射線科のみならず、他の専門科との連携を深め、患者に対して常に最先端医療を提供できるように心がけている。そのために、積極的に新薬および新規医療機器開発を目的とした治験事業にも参加している。

症例数

外来は、呼吸器内科、胸部外科(常勤医3名)および胸部放射線科(常勤医2名)との共同診療システムとして呼吸器病センター制度をとっている。現在、平均月あたりの延べ患者数は1,500名で、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、間質性肺炎、呼吸器感染症や肺癌患者を中心に診療を行っている。喘息やCOPD患者教育に加え禁煙指導外来を設置している。慢性呼吸不全患者には、在宅酸素療法や在宅人工呼吸器管理を行い、専属理学療法士および看護師とともに包括的呼吸器リハビリテーションにも取り組んでいる。化学療法を必要としている肺癌患者に対して、週2回の外来化学療法外来を設けて、患者の生活の質を保ちつつ外来-入院の連携を密に取り、入院在院日数の短縮と目指している。入院は、急性期病棟が60床(結核病棟なし)で、年間平均600名の入院患者の診療を行っている。入院患者の約60%は肺癌を含む胸部悪性腫瘍で、常に積極的な化学療法、放射線療法や分子標的治療を施行している。その他に、急性呼吸不全管理や呼吸器感染症治療および慢性呼吸器疾患や慢性呼吸不全患者の教育入院も手がけている

★切除不能肺癌の内科における成績はIII期およびIV期の5年生存率は、それぞれ30および20%で、他の肺癌専門施設と比較して遜色ない成績を収めている。また、睡眠時無呼吸のCPAP治療導入目的入院は、年間70例で、CPAP療法の1年以上の長期定着率は約70%の成績を得ている。また、精神神経科、口腔外科、耳鼻咽喉科および専門技師とともに睡眠時無呼吸外来を行い、持続陽圧換気(CPAP)療法を含めた呼吸管理入院も行っている。検査では、気管支内視鏡検査が年間150例で、胸部外科および胸部放射線科とともに気管支肺胞洗浄、経気管支肺生検、気道被覆液採取、経気管支超音波検査、経皮または経気管支CTガイド下肺生検、ステント挿入およびレーザー治療を可能としている。肺癌診断における気管支内視鏡検査の診断率は約70%で、気管支内視鏡検査診断不能例に対するCTガイド下肺生検の診断率は約95%である。

医療設備

スパイロメトリー、ガス拡散能および気道抵抗測定器、インパルス・オッシオメトリー装置、呼気陰圧肺機能(NEP)測定器、呼吸筋力測定器、アストグラフ測定器、気管支内視鏡、経気管支超音波装置、気道被覆液採取用マイクロサンプリング装置、呼気ガス測定器、呼気凝縮液採取器、ポリソムノグラフィ、超音波断層器、128列MD-CT、MRI、PET(陽電子放射線断層撮影器)、シンチグラム。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

呼吸器病センター・外科

分野

呼吸器外科

特色

原発性肺癌、転移性肺癌、縦隔腫瘍、気胸などの呼吸器領域疾患の手術を中心とした診療を行っている。外来診療は呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科のそれぞれの専門医の合同で組織された呼吸器病センターで行われ、初診の患者さんであっても、必要な検査が行えるようなシステムをとっている。診断・治療方針は、毎週、本センターの3科(呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科)合同のカンファレンスで、決定し、より良い集学的診療が行われるよう努めている。

症例数

08年の年間手術件数は約191例で、内訳は、原発性肺癌89例、転移性肺腫瘍25例、気胸など良性肺疾患42例、縦隔疾患13例、気道内ステント留置術13例、胸部外傷などの救急手術9例などである。08年の手術症例のうち在院死亡例は1例のみであった

★原発性肺癌(非小細胞癌)症例の病期別治療成績(過去15年の切除例)はIA 79%、IB 61%、IIA 63%、IIB 50%、IIIA 22%、IIIB 30%、IV 26%である

★肺癌症例の基本的術式は、皮膚切開は傷が小さく目立たない、約15cmの腋窩アプローチによる肺葉切除およびリンパ節郭清術であるが、症例に応じて、さらに手術侵襲が小さい、胸腔鏡を用いた根治的肺葉切除も実施している

★前述の呼吸器センターカンファレンスで、臨床病期がIIIA、B期肺癌と診断された症例では、まず内科へ入院し、術前導入化学・放射線治療を行った後に外科へ転科して根治切除を行っている

★肺切除術予定で入院される患者さんには、クリニカルパスによる入院から手術、術後処置、退院までの経過の予定を入院前に説明し、十分な理解を得られるよう努力をしている。他の疾患の治療予定がない通常入院の場合、術前2日前入院・手術・術後10日入院、計12日の入院加療を基本としている

★切除不能肺癌例・病期IIIA、B症例や術後再発例に対しては内科(臨床腫瘍医)・放射線科とともに化学療法・放射線治療を行っている

★肺癌や縦隔腫瘍症例で、上大静脈や大動脈などの大血管への浸潤が疑われる高度局所進行腫瘍であっても、根治切除が可能と考えられる場合は、心臓・血管外科医との協力のもと、合併切除・再建を行い、可及的な癌の完全切除を目指している

★転移性肺腫瘍切除症例は大腸(結腸・直腸)癌からの転移が最多で、単発転移の切除成績は5年生存率が46%。その他の転移性肺腫瘍切除例としては、骨・軟部腫瘍、頭頸部腫瘍からの転移症例が多い

★その他特筆すべき治療としては、院内の癌集学治療センターと協力し、本学免疫学教室で独自に開発した肺癌ワクチン療法や自己活性化リンパ球(CTL)導入療法などの特殊免疫治療の試験的治療も行っている

★中枢型早期肺癌に対しては、内視鏡的光線力学的治療(PDT:腫瘍親和性光感受性物質を静脈内投与し、その薬剤が癌病巣にのみ残存する48~72時間後に気管支ファイバースコープを通して低出力色素レーザーを癌病巣に照射する)も実施している

★内視鏡的補助治療として、高度進行肺癌や食道癌症例で、中枢気道の狭窄による呼吸困難を訴える症例では、救命的あるいはQOLの改善を目的とし、金属性メッシュ型ステントや硬性気管支鏡下のシリコンステント(デュモン・ステント)の気道内留置術を積極的に行っている

★自然気胸症例に対しては、初発・再発にかかわらず、胸部CTで明らかな責任病巣と思われる気腫性肺嚢胞(ブラ)が存在する場合(特に若年者)は、患者さんに気胸の発症機序や、手術とその他の治療法の治療成績(再発率)の比較を説明した上で、受診当日の緊急手術(胸腔鏡下手術)を積極的にすすめ、可能な限り入院期間の短縮を図っている。

医療設備

CT、ヘリカルCT、MRI、DSA、換気血流シンチ、SPECT、PET/CT、気管支ファイバースコープ、硬性気管支鏡、縦隔鏡、各種レーザー、PDTなど。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

心臓・血管内科(循環器病センター)

分野

循環器科

特色

心臓・血管内科は高度救命救急センター(CCU)を含め、約100床の病床を有し、大学病院の循環器内科としては国内有数である。虚血性心疾患に対するPCI(経皮的冠動脈形成術)、ステント、ロータブレーター、不整脈に対するカテーテル・アブレーションや植え込み型除細動器、心筋症および心不全に対する両室ペーシング、弁膜症に対するPTMC(経皮的僧帽弁切開術)などすべての循環器疾患に対する先進的治療を行っている。虚血性心疾患の中でも、緊急バイパス術を要する例や解離性大動脈瘤などで緊急手術を要する場合は、心臓血管外科と連携して迅速に対応し、24時間体制で術後管理を行っている。また、人間ドック部門も当科が担当しており、循環器疾患の予防から急性期、慢性期の治療および術後リハビリテーションまで幅広く、周辺地域の医療ニーズに応えている。特に、術後のリハビリテーションは古くから確立したプロトコールに基づいた方法に則っており、一般病棟とは別に術後リハビリテーション専門の病棟を有している。当科は日本内科学会および日本循環器学会の指定研修施設である。

症例数

外来部門=循環器病センターでは、今泉教授以下、准教授、講師、有給助手総勢20人が月~金曜日まで毎日外来を担当している。08年の外来患者数は延べ35,000人で、ここ数年は増加の一途を辿っている。当センターでは虚血性心疾患、不整脈、心筋症、スポーツ医学などの専門外来の他、最近のトピックスである血管新生外来や生活習慣病外来も開設している。血管新生外来では、全国から患者が集まっており、閉塞性動脈硬化症(ASO)、バージャー病に対する自家骨髄単核球細胞移植の適応を血管外科ととも検討している。生活習慣病外来では、高血圧、高脂血症、糖尿病などの専門家を配し、内科的治療ととも栄養指導、運動指導などコメディカル・スタッフの協力を得て包括的に治療・管理を行っている。また、心臓血管外科、小児循環器科外来も同センターで診療を行っており、緊密に連携を保ちながら日々診療にあたっている

病棟部門=08年の入院患者数は940人である。その内訳は、虚血性心疾患56%、不整脈14%、弁膜症9%、心膜心筋疾患5%、その他16%であった。CCUには急性心筋梗塞100人を含む重症心臓・大血管疾患218人を収容した

★急性心筋梗塞に対しては緊急冠動脈造影(CAG)を施行し、発症後24時間以内であれば、ほぼ全例にカテーテル・インターベンション(PCI)を行っており、その救命率は95%を超えている。一般病棟入院患者に対しても1,000例以上の心臓カテーテル検査、PCIは354例(このうち、ステント植え込みは311例)を施行している。また、ロータブレーター、アテレクトミーの施行症例も増えている

★不整脈に対しては、ホルター心電図、加算平均心電図に加え、電気生理学的検査を施行している。徐脈性不整脈には各種の恒久的ペースメーカー植え込み術を毎年約100例施行し、WPW症候群や発作性上室性頻拍症などの頻脈性不整脈には、高周波カテーテル・アブレーションを年間26例行った。成功率は房室結節回帰性頻拍と発作性心房粗動に関しては100%である。また、植え込み型除細動器の手術は、年々増加している

★心不全治療としては、近年注目されている重症慢性心不全例に対する両室ペーシング治療も開始され、良好な成績が得られている。

医療設備

心臓カテーテル装置、電気生理学検査用装置、心臓超音波エコー、核医学、DSA、CT、MDCT、MRI、トレッドミル、ホルター心電図、ABI測定機器、IABP(大動脈内バルーンパンピング装置)、PCPS(経皮的人工心肺補助装置)など。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

外科(心臓血管外科)

分野

心臓血管外科

特色

55年(昭和30年)の開設以来、心臓血管手術を手掛けている。これまでの心臓・胸部大血管手術症例数は既に10,000例を超えており、全国でも有数の手術症例数を有している。循環器内科、新生児科・小児科および当院の高度救命救急センターと密接な連携をもち、新生児・小児から大人まで、そして急性心筋梗塞や大動脈瘤破裂、急性解離性大動脈瘤などの救急疾患まで、あらゆる心臓・血管疾患に対して24時間体制で診療を行っている。診療に際しては、①術前の自己血貯血による無輸血手術、②人工心肺を使用しない拍動下冠動脈バイパス手術、胸部の小切開による開心術、胸部・腹部大動脈瘤に対する大腿動脈からのカテーテルを用いたステント内挿術などの低侵襲(患者さんに優しい)手術、③心臓血管外科専用の集中治療室で集中治療の専門医をチーフとした専属の医師と看護師による24時間体制での手術後の集中管理、④外科治療が不能な末梢動脈閉塞症に対する自己骨髄細胞を用いた血管新生療法など、患者さん一人ひとりに最適な、そして優しい治療を念頭に、手術成績の向上を目指して診療を行っている。

症例数

年間の手術症例数は、心臓・大血管手術はおよそ350例で、腸骨動脈以下の末梢血管手術はおよそ200例である。心臓・大血管手術における手術死亡率は約2%である。手術症例の内訳は、心臓・大血管手術では心臓弁膜症および狭心症や心筋梗塞に対する冠動脈バイパス手術がそれぞれ100例、急性解離性大動脈瘤などの胸部および腹部大動脈瘤が100例で、残りの50例が先天性心臓病や心臓腫瘍、心臓ペースメーカー移植術などである。末梢血管手術では、動脈閉塞に対するバイパス手術や動脈瘤手術が120例、静脈瘤が50例およびシャント作成術やその他の手術が20例で、外科治療が不能な末梢動脈閉塞症に対して、血管新生療法をおよそ10例に行っている

★心臓弁膜症手術では、僧帽弁に対しては術後の高いQOL(Quality of Life:生活の質)が得られるように自己弁を温存した弁形成術を施行し、大動脈弁では機械弁や生体弁を用いた弁置換術や自己肺動脈弁を用いたロス手術も行っている。また、心房細動に対するメイズ(MAZE)手術も行っており、約80%に洞調律の回復を収めている

★冠動脈バイパス手術では、バイパスの開存性が高い動脈グラフト(内胸動脈や胃とう骨動脈)を多用しており、およそ50%の症例に人工心肺を使用しない拍動下冠動脈バイパス手術を行っている

★胸部大動脈瘤手術、特に弓部大動脈瘤手術では、通常の人工血管を用いた置換手術の他に、ステントを動脈瘤内に挿入するステント内挿術を多数行っており、手術時間の短縮や出血量の軽減を図って手術の低侵襲化を行っている。腹部大動脈瘤に対しては、通常の人工血管置換術の他に大腿動脈からカテーテルを用いて人工血管を動脈瘤内へ挿入するステント内挿術や、腹部小切開による動脈瘤手術を行って患者さんに優しい治療を心掛けている

★末梢血管手術では、バイパス手術やカテーテルによる内膜摘除術さらには血管新生療法と各種の治療法を併用して、常に疼痛からの解放や最終的な四肢切断の回避を目標に治療を行っている。

医療設備

CT(ヘリカルCTを含む)、MRI、食道エコーを含む心臓エコー装置、心臓カテーテル検査装置、DSA(血管造影装置)、補助循環装置(IABP:大動脈内バルーンパンピング装置、PCPS:経皮的人工心肺補助装置、LVAS)、核医学検査、輸血部、CCUおよび高度救命救急センターなど。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

腎臓内科

分野

腎臓内科

特色

腎糸球体疾患の診断と治療、輸液管理および腎不全に対する透析療法を含む腎疾患全般の総合専門医療を行っている。腎疾患の専門医のみならず、一般内科医育成を目的とした医学教育機関として地域医療に貢献している。福岡県南部(筑後地方)に限らず佐賀県東部・大分県西部に及ぶ広域をカバーしている。関連病院(下関市立中央病院、公立八女総合病院、大牟田市立総合病院、大分済生会日田病院、聖マリア病院、古賀病院)と協力連携している。また、内分泌代謝内科や膠原病内科とも協力し、糖尿病性腎症を含む二次性糸球体疾患も網羅する腎疾患の総合診療を行っている。慢性腎炎や糖尿病性腎症の慢性腎不全への発展阻止あるいは慢性腎不全の進行阻止を診療目標としている。腎不全の進行を阻止できず透析を必要とする場合には、安全な透析導入と安定した維持透析管理を目指している。http://www.jin-jin.jp

症例数

★血尿・蛋白尿の初診患者には、尿沈査所見や随時尿による蛋白尿定量(尿蛋白/尿クレアチニン比)に従って、腎生検の適応を決定している。年間約100例を超える腎生検は、すべて超音波ガイド下に安全に施行している。週1回の定期的腎生検の他、緊急時には随時対応している。全症例において光学顕微鏡、蛍光抗体法、電子顕微鏡によって診断を確定している

★腎炎・ネフローゼ症候群に対するステロイド治療は厳密なプロトコールに基づき、インフォームド・コンセントを得て実施している。特にIgA腎症は組織所見をスコア化して重症度を決定し、これに応じたステロイド、免疫抑制剤治療を行い、好成績をあげている。腎炎・糖尿病性腎症の高血圧合併症例には、アンジオテンシン変換酵素阻害剤やアンジオテンシン受容体拮抗剤を早期より積極的に用い、蛋白尿の減少効果を得ている。難治性ネフローゼに対しLDL吸着法を含む最新の医療を行っている

★慢性腎不全保存期患者には、24時間蓄尿検査によるモニター下に低蛋白・高カロリー・塩分制限の食事療法を行っている。近年増加している糖尿病性腎症の腎不全には、心血管系合併症に留意し、血糖・血圧管理に加え、食事療法(低蛋白食)・塩分管理による浮腫対策・腎性貧血治療を実践している

★透析療法は、腎臓センター(血液透析ベッド38床)で施行している。年間透析導入数は約60人。血液透析約110人・CAPD約26人の外来維持透析を行っている。インフォームド・コンセントに基づく透析導入はシャント造設を含め、できる限り待機的に行い、安全な導入と、これによる導入時の入院期間の短縮を目指している。もちろん急性腎不全例を含む緊急透析導入にも対応している。眼科などの局部手術や、胸腹部などの大手術を含めて、透析患者の種々の手術例は年間100例を超える(シャント手術は除く)。長期透析合併症であるアミロイドーシスや二次性副甲状腺機能亢進症に対する内科的・外科的療法を行っている。透析患者の大小血管合併症には当院循環器病センターと協力して治療している。シャントトラブル症例に対するPTAを年間約100例施行しており、急性完全閉塞にも迅速に対応している

★近隣の医療機関からの腎疾患に関するセカンド・オピニオンには迅速かつ支持的に協力している。

医療設備

超音波診断装置(血流ドプラを含む)、超音波ガイド下腎生検、CT、MRI、血管造影検査、各種シンチグラフィ、血液透析装置、HDFや血漿交換装置を含む各種アフェレーシス機器、骨塩定量装置、24時間血圧測定。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

泌尿器科

分野

泌尿器科

特色

泌尿器科疾患について全般的な診療を行っている。特に、尿路性器癌(腎細胞癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍など)には、手術を中心とした集学的治療を行っている。尿路結石症に対しては、体外衝撃波結石破砕術、前立腺肥大症に対してはレーザー治療を中心に多数の症例の治療を行っている。また、近年進歩のめざましい腹腔鏡手術も副腎、腎疾患を中心に積極的に施行している。新しい手技を積極的に取り入れつつも、細心の注意を払いながら幅広い診療を心掛けている。クリニカルパス(入院時の診療予定表)も積極的に取り入れ、医療の標準化にも取り組んでいる。基本的には、患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)を重視し、十分なインフォームド・コンセント(説明と同意)に基づいた医療を心掛けている。

症例数

08年の年間外来患者数約1,860人。入院患者数約700人。年間手術数は約700例(体外衝撃波結石破砕術を含む)である

★膀胱癌については、年間150例を治療しているが、130例に経尿道的電気切除を施行している。残りの20例は高度浸潤癌であり、膀胱全摘術を15例に施行し、5例に抗癌剤の動脈内注入により保存的に治療している。尿路変更は、回腸導管または腸管利用代用膀胱を十分に説明した上で患者さんに選択してもらうようにしている

★腎癌については、根治的腎摘除術の手術療法を第一選択としている。08年の症例では、40例のうち9例に開腹手術で腎摘除術を施行し、25例に腹腔鏡による腎摘除術を施行した。残り6例の小さな腎癌に対しては腎部分切除術を施行し、腎機能を温存している。また、進行癌に対しても血管外科と共同で積極的に手術をしており、手術後に免疫療法を追加したり分子標的治療薬を使用することにより治療成績の向上を目指している

前立腺癌は、年間100例の受診があるが、早期癌78例の内57例に根治的前立腺全摘術を、21例に密封小線源療法、残りの浸潤癌や手術を望まない患者さんにはホルモン療法を施行している。根治的前立腺全摘術は、早期の退院を目指して術式の改良を進め術後1週間で退院を可能にし、術後の最大の合併症である尿失禁に対しても早期に消失するようになった。また、ホルモン療法に効果を認めなくなった再燃癌に対しては、免疫療法を取り入れている。前立腺癌の確定診断の検査である前立腺生検に対しては、2泊3日のクリニカルパスで施行している。これにより近年増加傾向であるPSA(前立腺特異抗原=腫瘍マーカー)異常値症例に対して積極的に確定診断をし、早期発見に努めている

★前立腺肥大症には、従来、経尿道的前立腺切除術が行われてきた。これに対して当院では、ホルミウムヤグレーザーを用いたHoLEPをいち早く導入し、出血量を減らし、高齢者や合併症のある患者さんにも安全に手術が行われるようになった。術式を改良させることにより効果の面でも従来の方法と匹敵するものが得られるようになり、低侵襲でなおかつ治療成績は、従来の方法を上回るという最高の手術が行えるようになった

★尿路結石に対しては、体外衝撃波結石破砕術を08年で約200例に施行した。尿管結石に関しては無麻酔外来治療を原則として施行している。腎結石に関しても、短期入院での治療が可能である。特徴としては、全例超音波ガイド下に施行することにより、弱いエネルギーで高い効果を得ることができる。これにより90%の結石は、体外衝撃波のみの治療で治癒する。体外衝撃波結石破砕術に抵抗性の結石に対しては、細径の尿管鏡とレーザーを用いて内視鏡で安全に治療している。当院には、安全で良好な治療成績を支える技術と器械が揃っており、患者さんはその幅広い選択肢の中から自分に合った最適な治療方法を選ぶことができる

★精索静脈瘤、水腎症、副腎腫瘍に対しては、積極的に腹腔鏡手術を施行し、入院期間は短縮され治療成績も良好である

★腎不全に関しては、急性・慢性腎不全の患者に対して、血液透析、CAPD(持続携帯式腹膜透析)の導入、腎移植を行っている。また、維持透析患者のシャント再建術や二次性副甲状腺機能亢進症に対する手術など、合併症に対する治療も行っている。

医療設備

体外衝撃波結石破砕装置(ESWL)、硬性軟性腎盂鏡、硬性軟性経尿道的腎盂尿管鏡、ホルミウムヤグレーザー、ネオディウムヤグレーザー、PET、MRI、CT、カラードプラ超音波診断装置、前立腺レーザー治療装置一式、血液透析器などを完備している。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

整形外科

分野

整形外科

特色

久留米大学整形外科学教室は、02年に開講70周年を迎えた全国で11番目の伝統ある教室である。久留米大学病院整形外科では、運動器疾患に対して質の高い治療や予防法が提供でき、基礎研究も指導できる優秀なスタッフを揃えている。基礎的研究では、遺伝子治療、再生医療、プロテオーム研究などにも取り組んでいる。専門分野別に外来診療・手術を行っており、より高度な医療が提供できる体制を整えている。研修医は、専門分野ごとにローテーションし、早期に知識を獲得することができる。

症例数

脊椎外科=永田教授の専門分野であり、脊椎疾患の患者数は多く、入院予約は100人を超えている。変性疾患を中心に、頸椎では頸髄症に対する後方からの脊柱管拡大術は600例を超え、安全でかつ安定した成績を収めている。腰部脊柱管狭窄症の治療は除圧術を中心に、麻酔が可能であれば80歳以上の方でも手術を行っており、また必要に応じインスツルメンテーション(金属による固定)を用い、強固な固定と安定した成績を得ている。研究においては“遺伝子の機能解析をめざす”ポストゲノムの時代へ移行しており、我々はプロテオーム解析を中心に最先端の研究を行っている。年間手術数は約210例

股関節外科=股関節外科は久留米市国分町の久留米大学医療センター内に関節外科センターが立ち上げられ、そこに統合されている

腫瘍外科=小児から成人における骨と筋肉、神経などを含めた軟部組織から発生した腫瘍の治療を行っている。小児発生の悪性腫瘍では小児科と連携し、化学療法と手術治療を効率よく施行し、治療成績の改善へつなげている。特に骨肉腫をはじめ四肢に発生する悪性骨腫瘍では患肢温存術を基本とし、そのために人工関節、脚延長術、血管付き自家骨移植などを再建方法として選択している。また中学生以下の学童期の患者さんが長期入院となる時には病院学級を利用してもらい、学業の遅延問題にも少しでも対応できる体制で治療にあたっている。軟部腫瘍に対しては骨腫瘍と同様に、悪性であれば広範切除を施行後、血管付き自家組織移植にてより良い術後の患肢機能の獲得を目指している。年間手術数約100例

一般外傷・骨盤外科=救命センターに搬入される重症多発外傷骨折例に対し、積極的に早期に観血的治療を行っている。特に骨盤骨折については、日本でも有数の手術症例数と豊富な経験があり、良好な治療成績を得ている。また、難治性の骨髄炎や偽関節例に対しても、最新の機材と技術で治癒される実績を持っている。年間手術例は約120例

手の外科=肩関節以下の上肢機能再建を重点に診療を行っている。具体的には絞扼性神経障害、上肢の骨折・靱帯損傷、腱断裂、上肢の先天性奇形等対象疾患は多岐にわたっている。年間手術数は約50例

軟骨損傷再建・スポーツ外傷=膝関節を中心に診療を行っている。靭帯損傷や半月板損傷が多く、スポーツ障害予防やメディカルサポートも行っている。その他、変形性膝関節症や骨壊死に対しては人工膝関節置換術、脛骨高位骨切り術も行っている。

医療設備

MRI、ヘリカルCT、骨塩定量測定装置(DEXA)、シンチグラム、サーモグラフィー、クリーンルーム、リハビリテーション施設などを完備している。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

形成外科・顎顔面外科

分野

形成外科

特色

形成外科領域全般を対象とするが、特に他科(耳鼻咽喉科、脳神経外科、一般外科など)とのチーム医療によって患者さんに最善の医療を提供する点に特色がある。中でも悪性腫瘍切除後の組織欠損を機能的整容的に再建し、病気が治った後の患者さんの生活の質の向上を目指す。このことは、先天奇形や外傷(顔面骨骨折、熱傷など)の患者さんに対しても同様のコンセプトで臨んでいる。9カ所の関連病院にも常勤スタッフ11人(うち専門医8人)を派遣し診療ネットワークを作成、広く地域医療を行っている。

症例数

年間入院患者数約400人、新患総数1,000人、入院手術550人(全麻400人、局麻150人)、外来手術約200人。手術内容は、新鮮熱傷30、顔面外傷・骨折50、唇裂口蓋裂60、手足の先天異常と外傷20、その他の先天異常80、母斑・血管腫・良性腫瘍170、悪性腫瘍に関する再建160、瘢痕・ケロイド90、褥瘡・難治性潰瘍30、美容外科20、その他40

頭頸部頭蓋底再建=チーム医療によって癌の治癒率と機能回復の両面で良い成績をあげている。舌や咽頭癌切除後の再建では、皮弁・筋皮弁や腸管などの移植によって嚥下や構音などの重要な機能の回復に良好な結果を得ており、その業績は全国的に知られている。中でも頭蓋底の分野では日本のパイオニア的存在であり、腸管移植による食道再建の症例数と術後成績は全国でもトップレベルである。また、下顎骨再建の分野では再建医学的手技を用いた新しい方法を開発し注目されている

乳房の再建=外科とのチーム医療によって乳癌切除後の乳房欠損の再建を行う。特に組織拡張器(ティッシュエキスパンダー)と生食バッグを用いた患者さんの負担の少ない方法を中心に行っている。また、乳輪乳頭の作成法にいつも乳頭の高さを保つ方法を工夫し、整容的に満足のいく結果が得られている

唇裂口蓋裂の治療=口唇裂の手術で最も重要なのは左右の対称性であり、局所皮弁を中心とした組織移植の技術を駆使することによって白唇と赤唇を含めた精度の高い左右対称性を可能としている。口蓋裂に対しては、言語聴覚士の協力のもと、1歳2カ月~3カ月で手術を行う

小耳症の治療=耳介形成に用いる肋軟骨の量が十分となる9歳~10歳頃に行う。その約6カ月後に耳介を立てる手術を行う。以前は軟骨の固定にワイヤーを用いていたが、10年以上の長期経過例でワイヤーの露出がみられ、現在吸収糸を用いた新しい固定法を工夫し成功を収めている

頭蓋顎顔面外科=先天性、腫瘍もしくは外傷によって生じた頭蓋顎顔面領域の変形や骨欠損の修復を行う。近年ハイドロキシアパタイトを原料とした拒絶反応の少ない人工骨(患者さんに合わせたオーダーメイドの固形人工骨、形が自由に調節できるペースト状人工骨)を用いた低侵襲で整容効果の高い方法を行い、良好な結果を得ている。また、顎の骨切りによる顔貌や咬み合わせの修正も行っている

漏斗胸の治療=胸部外科、小児外科とのチーム医療および組織の血流を温存した術式の工夫によって、安全性が極めて高く整容的にも満足する結果が得られる治療を行っている。最近では手術侵襲の少ないNuss法を導入、また、心臓手術との同時手術においても全国に先駆けて成功を収めた

新鮮熱傷の治療=広範囲の熱傷については、高度救命救急センターとのチーム医療を行う。救命救急の専門医が全身管理にあたり、手術を共同で行うことによって、救命率の向上と早期治療の両面で効果をあげている

瘢痕の治療=外傷や熱傷後に生じた瘢痕によるひきつれや醜形の修正を行う。顔面では局所皮弁やWおよびZ形成術、体幹・四肢では皮弁移植や組織拡張器などの形成外科的手術手技を駆使し、機能だけでなく整容的にも良好な結果が得られる方法を行う

レーザー治療=毎週木曜日にレーザーの専門外来を開設し、アザ、シミ、母斑、血管腫等の治療を皮膚科と共同で行っている。

医療設備

MRI、CT(3D)、DSA、各種レーザーなど、先進医療に必要な最新鋭機器を完備。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

産婦人科

分野

産婦人科

特色

産婦人科領域を婦人科疾患、周産期関連疾患、不妊内分泌疾患に分け、全域をカバーする診療を行っている。外来部門は産婦人科外来に婦人科部門と産科部門の別々の診療区域を設け、それぞれに専門医が診察にあたっている。病棟部門も婦人科病棟(病床数57)と産科病棟である総合周産期母子医療センター(病床数22)がそれぞれ独立していて、それぞれの専属スタッフが診療にあたり、必要に応じ連携して診療にあたっている。特に総合周産期母子医療センターでは、母体・胎児集中管理治療室9床、新生児部門の新生児集中管理室9床と併せてハイリスクな周産期関連疾患の診療を行っている。外来については、午前中は一般外来、産科外来、不妊内分泌外来、午後は子宮腫瘍外来、卵巣腫瘍外来、周産期超音波外来、中高年外来、コルポスコピー外来を設置し、専門医による診療を行っている。

症例数

産婦人科外来延べ患者数は月間平均約2,500人であり、年間入院延べ患者数は産科約9,600人、婦人科約20,000人である。年間分娩総数約450件、年間婦人科手術総数は約420件である

周産期=年間における総分娩数は423例で、福岡県内特に筑豊、筑後地区を中心に紹介をいただいている。緊急搬送には当院専用の救急車(ドクターズカー)、ヘリコプター(ドクターズヘリ)を有し、必要に応じ搬送を行っている。またいったん紹介された患者でも、前医での管理が可能となれば前医への紹介も積極的に行っている。一般病棟以外に母体・胎児集中管理治療室を9床有し、特に総合病院による他科との連携により、他の疾患との合併妊娠(85例)の管理を行い、また切迫早産(103例)、妊娠中毒症(28例)、多胎妊娠(36例)、低置・前置胎盤管理(24例)、胎児形態異常の管理(12例)などの集中管理を行っている。帝王切開術は年間165例であり、特に緊急を要する手術に対応できるよう病棟内の分娩室で手術できる機能を有している。未熟児(2,500g以下:147例、1,000g以下:48例)や早産児(37週未満:291例、30週未満:29例)、また他の胎児形態異常児に対しても、病棟に直通の新生児集中治療室で迅速な管理、治療を行う。外来は月曜から金曜日までで、妊婦のみならず、胎児も含めた総合的な妊娠管理を目指している。妊婦健診では、通常の健診項目以外に毎回の超音波検査や、必要に応じて助産師や栄養士からの助言や指導も取り入れている。また月、水、金の午後は特殊外来としてハイリスク症例に対して超音波外来を行い、胎児発育、形態異常、胎盤・臍帯・羊水などの胎児付属物の評価を行っており、羊水検査などの出生前診断も積極的に行っている。特に水曜日は胎児心臓の超音波外来を別に設け、児の精査、管理を行っている。木曜日の午後は多胎妊娠を対象とした超音波外来を行っている

婦人科=婦人科診療は、婦人科悪性腫瘍を主体として的確な病理組織診断と超音波、MRI、CTなどによる画像診断、腫瘍マーカーを中心とした血清学的診断により、精度の高い治療前診断と最新の個別化された治療を行う事を原則としており、これらの診断・治療には、婦人科腫瘍に精通した専門医が担当している。また、症例によっては妊娠できる能力を残すことができるように、できる限りの努力をしている。この他にも、子宮筋腫、卵巣腫瘍などの良性疾患の治療には、内視鏡(腹腔鏡、子宮鏡)手術を主体とした患者さんの負担の少ない最新の治療法を行っている。子宮外妊娠についても、未破裂症例については積極的に腹腔鏡下での手術を行っている

★子宮筋腫は、産婦人科腫瘍の中で最もポピュラーな疾患であるが、当院では腫瘍の大きさだけではなく疾患による症状および所見等を総合的に検討し、できる限り手術の適応を厳格にするよう努めている。筋腫は閉経後には小さくなることから、ホルモン剤による閉経への逃げ込み療法や、巨大な子宮筋腫や中等度以上の貧血を伴っている症例では、必要に応じてホルモン剤による治療を先行してからの手術療法も行っている。また妊孕性の温存を希望する症例で子宮内からの筋腫切除が可能な症例には、開腹することなく経腟的に子宮鏡下での筋腫切除術も行っている。開腹による筋腫切除術で子宮の切開創が卵管に近い症例に対しては、術後の卵管の癒着を防止する目的で術後1週間目に腹腔鏡による卵管の通過性の確認と癒着剥離術の併用も検討している

★子宮内膜症も月経痛を主体とする良性のよく見られる疾患であるが、症状およびその経過、診察所見や超音波検査、MRIなどの画像検査所見等から診断を行い、可能な症例に対しては治療も兼ねて腹腔鏡からの正確な診断を行うよう努めている。治療としては難治性のものに対しては、腹腔鏡による骨盤内の癒着剥離および病変部の焼灼を行うが、子宮筋腫同様、閉経後に改善することから術後には一時的に閉経状態を作り出すホルモン剤による治療も併用している。また症状に応じて漢方療法や低容量のピルの服用などの併用も検討している

★子宮頸部癌は、癌検診の普及により0期およびI期の早期症例が増加しているが、過去の治療成績から現在0期癌に対しては、高周波メスを用いた子宮頸部の円錐切除術か、条件を満たした症例には1日入院が可能な炭酸ガスレーザーによる治療を行っており、子宮温存が可能で、短期間の入院で済むことから喜ばれている。Ia1期の早期頸癌には原則として単純子宮全摘術を行っているが、強く妊娠希望がある症例には条件を満たした場合には円錐切除術により、子宮温存を行っている。Ib期IIb期の頸癌は広汎子宮全摘術を行っており、若年者には積極的に卵巣を温存している。III期、IV期の頸癌に対しては、放射線科と共同で個々の症例に応じた放射線療法を行っており、症例によっては化学放射線治療も取り入れている

★子宮体部癌は生活の欧米化に伴ってか、最近増加傾向を示しており、治療は手術治療が中心でありI期の症例には子宮全摘術、両側卵巣摘除術、リンパ節郭清術を行っている。術後は病理学的な検査結果に基づいて、慎重に適応を判断し必要な症例には抗癌剤治療を追加している。また抗癌剤治療の施行が難しい症例には放射線療法も行っている

★卵巣腫瘍は当科の主要研究テーマでもあり、最新の診断ならびに治療が行われている。卵巣癌の手術ではできる限り広範な手術を行い、少しでも腫瘍体積の減量に努めている。手術後は抗癌剤療法を行うが、当科では抗癌剤開発の時点から臨床研究に携わる機会が多く、最新の抗癌剤を積極的に取り入れ、治療効果の向上を図っている。正確に診断された初期の卵巣癌で妊娠を希望する症例には、片側卵巣と子宮を温存し、良好な予後と術後の妊娠成立との両立に努めている。また、患者さんの 負担の軽減とQOLの向上を考えて外来での抗癌剤治療も積極的に行っている

中高年外来=長寿社会となり、生命・生活の質が問われるようになった現在、更年期以降は女性の最も充実した時期の一つだととらえられるようになっている。このようなことから当科では先駆的に専門外来を設け、単に更年期障害だけでなく骨粗鬆症、尿失禁、不眠症や抑うつ気分等の改善にも取り組んでいる。治療内容としては、ホルモン補充療法だけでなく漢方療法や必要に応じて泌尿器科や内科、精神神経科などとも連携して、QOLを向上させるため幅広い治療を心掛けている

不妊症・思春期外来=毎日午前中に一般不妊外来・思春期外来を行っている。原発性無月経は、染色体検査も行い、異常の場合は小児科遺伝相談外来と密に連絡を取り対応している。原発性・続発性不妊には、一般不妊検査を行い、長期不妊症や原因不明の不妊症および多嚢胞性卵巣症候群で薬物療法で排卵を認めない場合は腹腔鏡検査を行い、卵巣多孔術や癒着剥離・卵管開口術を積極的に行っている。また高度生殖補助医療に関しては、体外受精は3日目移植から胚盤胞移植まで幅広く行い、余剰受精卵は凍結保存を行っている。現在までの体外受精の成績は30%である。現在、多胎妊娠の発生率は5%であるが、妊娠継続は総合周産期母子医療センターで行っている。反復・習慣流産においては、スクリーニングの結果、抗リン脂質症候群や自己免疫疾患によるものには漢方療法を行い、80%と良好な成績を収めている。

医療設備

MRI、CT、カラードプラ、高周波メス、炭酸ガスレーザー、腹腔鏡システム、リニアックなど。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

小児科

分野

小児医療

特色

病院全体のベッド数は1,180床で小児科は感染症病棟を含めて48床,、新生児30床。08年の小児科外来総数は約25,000人、新患総数は約2,000人、入院総数は総合周産母子センターを含めて約15,000人で、九州全域から患者さんが来院され地域住民を含む子ども達、親の厚い信頼を得ている。診療には14の専門分野があり、医療は温かく社会的貢献をモットーに、多様化する疾患体系に対応できるシステム、サービスを備えている。Rett症候群、自閉症、注意欠陥多動性障害は九州全域から患者さんが来院している。ミトコンドリア病は九州全域・西日本からも多くの患者紹介があり、セカンドオピニオン外来としても機能している。また、ミトコンドリア病に対する世界初の治療薬開発を医師主導治験として主導している。成長ホルモン治療実績数は九州一である。川崎病の治療、コイル、ステントや特殊デバイスを使用したカテーテル・インターベンションなど世界的に高い評価を受けているだけでなく、小児科単独で分子遺伝研究設備を完備し、先天代謝異常症をはじめ多岐にわたる疾病の原因、病態の解明に役立っている。国の援助でオープンリサーチセンターの大型予算を獲得し、高次脳疾患研究所の遺伝子治療、再生医療の分野に高橋知之准教授を迎え、最新の治療・研究を開始した。小児神経、小児循環器、代謝をはじめ成人に至っても成育医療を行い、多くのキャリーオーバー(アダルトペディアトリックス)の患者さんをフォローアップしている。(小児科ホームページ http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/ped/)

症例数

神経・精神=神経・精神外来の年間患者数は約7,100人(うち新患450人)、以下に述べる全領域の小児神経疾患の診療・サービスを行っている。小児のけいれん性疾患(てんかん、複雑型熱性けいれん)、発達障害(注意欠陥多動性障害、自閉症、学習障害、トウレット障害、精神遅滞、脳性麻痺、Rett症候群など)の診療・研究、頭痛、神経皮膚症候群、ミオパチーやニューロパチー、急性散在性脳脊髄炎などの脱髄性疾患、脳炎・脳症、脳腫瘍、小児内科疾患の神経合併症など、広い範囲の臨床に長年取り組んできた。また地域の療育機関や国内外のサポートグループとの連携を密に取り、最近では教育との連携を深めている。北米以外で初めての注意欠陥多動性障害児のサマープログラムを2005年から始めて全国的にも注目を浴びている。一人の診察時間をできるだけ取り、ご家族の悩みに対応できるように完全予約制とし、心理士と共に診療している。Rett症候群は九州全域から約40家系をフォローアップし、日本で最初に結成された親の会(さくらんぼ会)定例会を20年以上サポートしている。不登校、摂食障害、虐待など子どもの心の問題に対しては、小児科、精神科、カウンセリングセンターでチームを結成し、互いの病棟を共有するなどして診療を行っている。Rett症候群や注意欠陥多動性障害の病態究明、治療では国内外トップレベルである。また、近赤外線トポグラフィー等の非侵襲的脳機能画像を用いたテレビゲームなどの小児に及ぼす影響や、コンピュータを用いた脳認知機能検査や眼球探索運動に関する発達障害の研究、小児の高次脳機能の評価、研究も行っている。難治性てんかんには、脳神経外科、精神科と学内チームを組み、外科的治療も行っている

内分泌=低身長、甲状腺機能低下症、小児糖尿病、先天性副腎過形成をはじめとし、小児内分泌疾患の全般に渡る診断・治療で、九州一多い症例実績があり、長年の経験を生かした専門外来を設けている

代謝・遺伝部門=先天代謝異常症の診療ではオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、フェニルケトン尿症などをはじめとして、多くの先天代謝異常症の診療を行っており、この領域におけるセンター的施設の一つである。特にアミノ酸代謝異常症、メチルマロン酸血症、有機酸血症、高アンモニア血症の経験が深い。本学にはガスクロマト-質量分析医学応用研究施設があり、尿中有機酸分析、タンデムマスによるアシルカルニチン分析が日常診療に直結している全国でも数少ない小児科である。染色体異常を初めとする先天異常、奇形症候群の診断およびトータルケアも行っている。またその他の遺伝疾患は内科総合で遺伝外来を開設し、遺伝カウンセリング(予約制:0942-31-7565)のほか、成人の遺伝性疾患患者の診療を行っている

ミトコンドリア・筋=分子遺伝学的手法を中心に、患者の病態の原因遺伝子の究明、治療への応用を目指している。臨床的には、発育不良、精神運動発達遅滞、低身長、吐きやすい子供、糖尿病その他の内分泌疾患、代謝疾患、神経・筋疾患などを主徴とする患者さんの診断、治療を行っている。特に、ミトコンドリア病の診断・治療法開発研究では、厚生労働科学研究班を組織し、日本のMELASおよびLeigh脳症の診断基準を策定した実績がある。また、当小児科で開発したミトコンドリア病(MELAS)のL-アルギニン治療は、国内・国際特許を取得し、現在は医師主導治験として治験研究を実施している。またミトコンドリア病疑いの遺伝子診断サービスでは、現在までの登録患者数は400人以上に上る。ミトコンドリア脳筋症の診断・治療、およびセカンドオピニオン外来として、九州・四国、本州からも多くの患者さんが紹介来院される

循環器=関連施設である聖マリア病院と共同で行っているカテーテル検査は年間約250例で、このうちカテーテル治療は約35%。先天性心疾患に対するカテーテル治療の九州でのセンター的施設である。1994年に開始して以来、動脈管開存症のカテーテル治療は延べ280例(うち成人26例)で完全閉鎖率99%、死亡率0%。2009年からは動脈管開存用の特殊デバイスの使用認可を得て既に6例を治療し、今後は成人を含めほぼ全ての動脈管をカテーテルで治療できる見込み。また2006年には心房中隔欠損症に対するカテーテル治療も開始し、現在までに130例あまりを治療し、デバイス留置率94%、完全閉鎖率99%。これら以外にも大動脈や肺動脈など狭窄した血管に対するバルーン拡大術やステント留置術、冠動脈瘻のコイル塞栓術なども積極的に行っている。詳細はインターネット上で公開しており、インターネットからの相談にも応じている。川崎病は現在まで約2,500例以上を治療し、臨床経験や治療水準は世界トップレベルである。海外からの問い合わせや受診も多い。川崎病による心臓後遺症の発生率は3%。成人期に達した先天性心臓病の患者さんに対する国内初の「成人先天性心臓病専門外来」や、胎児の心臓病に対する診断治療に関する「胎児心臓病外来」も開設している

感染症=小児科独自の臨床細菌研究室をもつ全国でも数少ない施設であり、臨床検体からの細菌およびクラミジアの分離培養、薬剤感受性試験などを行っている。また予防接種外来では、年間延べ約1,000人の基礎疾患を有する小児を中心に予防接種を行っている

腎臓=年間外来総数約4,000人。外来では、学校検尿異常者の指導や管理、腎炎、高血圧、夜尿・頻尿はもちろん、神経因性膀胱の導尿管理や末期慢性腎不全の腹膜透析管理(8人)、腎移植後管理(3人)、緊急血液透析も行っている。慢性腎炎の最終評価方法である腎生検の入院は、年間約30人。小児末期腎不全患者さんには社会的、心理的フォローを含めトータルケアを目指している。腎移植や手術の必要な水腎症・膀胱尿管逆流症は、全国の小児泌尿器科・移植外科医と連携をとり外科治療していきたいと思っている

呼吸器・アレルギー=外来症例数は年間約3,000例で、呼吸器・アレルギー疾患全般にくまなく対応しているが、特にアレルギー疾患の中でも正確な診断と指導が最も難しいと言われている食物アレルギーの研究に力を入れている。厚生労働省のアレルギー性疾患の発症・進展・重症化の予防に関する研究のうち、当グループは食物負荷試験ネットワーク研究に関する全国主要施設のひとつとして、2001年度より参加して実績をあげている。呼吸器疾患に関しては、全国的には希少価値のある小児科専門医による気管支内視鏡検査による診断・治療に力をいれており、これまで300症例以上の豊富な経験をもつ。さらに、重症呼吸不全(ARDS/ALI)の低酸素血症に対する人工呼吸器治療戦略に主眼をおいた研究や、小児睡眠時無呼吸症候群に対する正確な診断と治療の研究もすすめている

小児消化器・肝臓病=消化器の専門グループを有する小児科は全国的に数が少ない。消化管部門では、小児の上部下部消化管内視鏡検査を年間約40例施行しており、慢性の消化器症状を有する児に積極的に行っている。最近では小児の難治性胃・十二指腸潰瘍例でヘリコバクター・ピロリ除菌療法を実施している他、下部消化管では潰瘍性大腸炎、クローン病を中心に最新治療を取り入れている。肝臓部門では、B型肝炎母子間ブロックや慢性B型・C型肝炎、胆汁うっ滞症、代謝性肝疾患などの診断と治療を中心に診療しており、小児肝生検も行っている。さらに乳児・新生児の胆汁酸代謝異常症のスクリーニングや治療相談なども行っている

血液、腫瘍=小児がん、小児血液疾患(貧血、血小板減少症、血友病など)の治療、長期フォローアップ外来で、患児およびその家族の心理的サポートを含めたトータルケアを行っている。ターミナルケアに関してもご家族の希望にそったケアに努めたいと考えている。小児がんの治療は、その多くが全国規模の臨床研究に参加しており、かつ小児外科医、脳外科医、整形外科医、耳鼻科医、放射線科医などと話し合いながら、それぞれに適切な治療を行っている。単に病気を治すことだけでなく、仲間と一緒に成長発達し、小児がんであったことがマイナスにならないように応援していくことも私達の役目であり、小児がん経験者の会(SmileDays)や親の会(木曜会)との連携で、細やかなケアが可能となっている

膠原病、リウマチ=リウマチ類縁疾患を中心に診断・治療の方針決めを各市中病院と連携して行っている。また難治性若年性特発性関節炎に対する治験も含めた生物学的製剤の定期投与も行っている

総合周産期母子医療センター新生児部門=新生児集中管理室(NICU)12床、回復期治療室(GCU)18床。2008年の年間入院数269例(超低出生体重児17例、極低出生体重児12例)。特色としては、未熟児の他に、特に各専門が揃った小児科スタッフのバックアップにより心疾患、代謝疾患などの重症の基礎疾患を持つ新生児の治療を行っている点である。さらに胎児水腫・心疾患・外科疾患などの出生前診断から引き続く周産期管理に特に力を入れている。新生児脳低温治療も行っている。

医療設備

PET、SPECT、MRI、ヘリカルCT、DSA、光トポグラフィー、腎透析、血漿交換、腹膜透析、リニアック、コバルト治療、高圧酸素療法、インターベンション(PDA)、気管支内視鏡検査、NO吸入療法、ハイリスク新生児のケア全般、有機酸分析、タンデムマスによるアシルカルニチン分析。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

小児外科

分野

小児外科

特色

当科の歴史は古く1963年(昭和38年)外科の小児外科グループでの診療開始に始まり、常に日本の小児外科医療を支えてきた施設である。小児外科的疾患一般を扱い、鼠径ヘルニア、陰嚢水腫や包茎をはじめ、肺嚢胞性疾患、食道閉鎖症、胆道閉鎖症、胆道拡張症、消化管閉鎖症、小児悪性腫瘍など多岐にわたる。また、専門分野は術前術後の消化管運動機能評価、外科代謝栄養管理(手術前後の全身管理はもとより、手術後の成長発育に対する栄養管理)、小児外科漢方治療(手術後の消化管機能や全身状態の改善を目的)である。

症例数

入院ベッド数は12床、手術日は火、水、木、金曜日で年間手術症例約250例、うち新生児症例約15例である。新生児症例は周産期母子センターと連携し、胎児期から診断と手術管理が行われ、未熟児や極小未熟児は手術後には周産期母子センターのNICUに収容され、小児内科と共同で術後管理を行っている。胆道閉鎖症の術後黄疸軽減率は80%以上であり、ほぼ満足する結果といえる。神経芽腫、ウイルムス腫瘍、肝芽腫等の小児悪性腫瘍は小児内科腫瘍グループと連携を密にし、集学的治療(手術、化学療法、骨髄移植、放射線治療等)を行い、良好な成績を収めている。ヒルシュスプルング病や直腸肛門奇形のほか、便秘などの排便異常に対しては直腸肛門内圧検査、筋電図検査、直腸粘膜生検、フェコフローメトリーなどにより的確な診断と治療を行っている。上腹部愁訴を有する患児に対して胃電図をはじめとする非侵襲的消化管運動機能検査を施行評価し、治療を行っている。虫垂炎などの小児急性腹症や外傷なども随時受け入れ手術が行われる。肝外傷や腎外傷をはじめとする重度救急外傷性疾患は併設の高度救命救急センターにドクターヘリで搬入され、診断、初期治療がされた後に小児外科病棟に収容される。代謝栄養管理に関し周術期はもちろんのこと、在宅での静脈経腸栄養管理も積極的に行っている。小児外科術後愁訴(手術で形態的に完全に治っても機能的に愁訴が残ることがある)に対して、従来の西洋医学的な内科治療だけでは十分な愁訴のコントロールが容易でない場合も少なからず存在する。このような際には昨今、EBMをもって治療の選択肢に入り、個々の患児に即したテーラーメイド医療のひとつである漢方治療が有効な場合が多数存在する。当科ではこの漢方治療も合わせ行っている。

医療設備

消化管運動機能測定室(消化管内圧検査、食道pHモニター、食道インピーダンス検査、胃電図、フェコフローメトリー、など)、超音波検査室、内視鏡、、CT、MRI、RI、血管造影、HFO。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

眼科

分野

眼科

特色

福岡県筑後地区だけでなく大分県・熊本県の一部を含む診療圏を中心に、地域医療に貢献し、難症例を扱う最終病院として機能しているだけでなく、最先端の医療を提供している。

症例数

2008年の1年間の初診患者数2,553人、再診患者延べ数30,115人、総手術件数は1,215件である。大学病院ではあるが、入院手術だけでなく、日帰り手術など、患者の希望に柔軟に対応している。入院手術もクリニカルパスによる在院日数の短縮や、患者サービスに努めている。屈折矯正手術(近視矯正手術)は九州・沖縄・中国地区の大学の中で、唯一行われている施設である。久留米大学は大学院も医学研究科博士課程個別最適医療系とし、個別最適医療を医療の中心にすえており、眼科においても先進医療でもって、個別最適医療をめざしている

網膜硝子体=教授があらゆる手術に精通しているが、もともと網膜硝子体を専門としているために、診療圏内のすべての患者が来院する。裂孔原性網膜剥離、糖尿病網膜症、黄斑円孔、黄斑上膜などの手術加療を要する疾患だけでなく、黄斑変性、遺伝性疾患などの診断・治療にも対応している。年間手術件数は硝子体手術372件、網膜復位術(バックリング法)25件で、網膜剥離は主に硝子体手術で対応し復位率は95%以上、また加齢黄斑変性に対しては、診断にはハイデルベルグ蛍光眼底造影・光干渉断層計などの最先端の診断機器を使用し、治療には光線力学的療法やMacugen、Lucentisの眼内注入など常に最先端の療法も施行している

緑内障=緑内障は薬物療法が主体の疾患である。薬物療法が限界となり手術療法が必要な診療圏内患者にはすべて対応しているが、また福岡市や大分県などの遠方からの患者も多い。手術手技は多彩で、マイトマイシンC併用線維柱帯切除術は最終手段と考え、線維柱帯切開術、ビスコカナロストミー、改良非穿孔性トラベクレクトミー、隅角癒着解離術などを駆使し、良好な手術成績をあげている。年間手術件数は138例で、白内障との同時手術も積極的に行っている。また眼圧の日内変動検査も積極的に行い、個々の患者に最適な薬物療法も行っている。そのため日内変動の成績、手術成績などを学会や論文で報告している

前眼部・角膜・屈折矯正=角膜移植(2008年度の角膜移植件数は12件)だけでなく、羊膜を利用した眼表面の再建術などにも積極的に取り組んでいる。また、新たな手術療法である内皮移植術DSAEK(Descemet’s stripping endothelial keratoplasty)もはじめている。エキシマレーザーを用いた屈折矯正手術も、波面収差の測定法を用いた最先端のwave-front-guided LASIKにも取り組んでおり、またエキシマレーザーは角膜混濁の切除などの治療にも活用している。また屈折矯正のひとつとして多焦点眼内レンズによる白内障手術を導入している

ぶどう膜炎=診療圏内のすべてのぶどう膜炎患者に対応しているが、前房水、硝子体液を用いた免疫学的検査やPCR法を用いた分子生物学的検査などを行い、診断の向上に努めている。またぶどう膜炎における硝子体の役割に注目し、硝子体手術を用いた治療を積極的に行っている。薬物療法においては、ベーチェット病に対するレミケード治療もいち早く導入している

外眼部・眼形成=眼瞼の形成だけでなく、涙道疾患は内視鏡やレーザーを用いた涙嚢鼻腔吻合術なども積極的に行っている

ロービジョン=ロービジョン外来を立ち上げ、低視力患者のための補助具の選定や指導を行っている

斜視・弱視・小児疾患=附属の久留米大学医療センター眼科を子供中心のクリニックに改組し、斜視・弱視を中心に診療を行っている。先天白内障については、眼内レンズを用いて良好の視機能を得ている。先天緑内障については、線維柱帯切開術を中心に手術療法を行い、良好な成績を得ている

★専門外来(緑内障、網膜硝子体、ぶどう膜炎、ロービジョン、屈折矯正、糖尿病網膜症、神経眼科、前眼部、外眼部、黄斑)は原則として予約制。

医療設備

ハイデルベルグ蛍光眼底造影・光干渉断層計や多極所網膜電位図検査(Veris)などの最先端の診断装置や最新鋭の手術装置を備え外来、病棟、手術室とハード面を充実させている。病棟は2009年3月に新病棟完成に伴い移転した。13階の眺望のよい快適な4人部屋が原則であるが、個室も多くある。屈折矯正手術(近視矯正手術)で使用しているエキシマレーザーは優秀な追尾装置を備えたもので、日本で導入された第一号機である。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

分野

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

特色

西日本屈指の伝統ある私立大学医学部附属病院として、長年耳鼻咽喉科領域全般の疾患の診療を行ってきた。特に喉頭癌や下咽頭癌をはじめとする頭頸部悪性腫瘍、甲状腺腫瘍などの頸部腫瘍の機能外科は、本邦を代表するスタッフが専門的診療を行っている。近年では音声障害や嚥下障害などの新しい治療法にも取り組んでいる。

症例数

年間初診患者数は約4,600人で、紹介患者受診率は日本でもトップクラスである。同時期の入院患者数は808人で、総手術件数は約750件であった(ただし、外来や病棟での小手術は含まない)。代表的な疾患の手術の内訳は下記のとおりであった。耳手術(鼓室形成、内リンパ嚢開放他)103件、鼻・副鼻腔手術(鼻内視鏡、レーザー手術他)127件、口腔・咽頭疾患(扁桃摘出、いびき改善手術他)66件、喉頭疾患(声帯ポリープ、音声外科手術他)54件、気管食道疾患(異物摘出他)29件、頭頸部腫瘍(頸部郭清、甲状腺腫瘍、喉頭癌、中・下咽頭癌他)316件

★頭頸部腫瘍は喉頭癌、上・中・下咽頭癌、鼻・副鼻腔腫瘍(例:上顎癌)、口腔癌(例:舌癌)、甲状腺腫瘍など。早期癌には放射線科との連携による機能温存治療を、一方、進行癌では再建外科手術を積極的に取り入れている。従来は根治治療が不可能であった悪性腫瘍の治療も可能となり、いずれの疾患も国内外をリードする治療成績を誇っている。喉頭癌の初期癌では5年生存率95%、進行癌でも80%以上。舌癌や中咽頭癌でも70%以上。最も治療成績が不良とされる下咽頭癌での死因特異的5年生存率も60%に達する。むしろ、喉頭癌では根治性だけでなく、治療後の音声機能が如何に保持されるかという音声機能重視の治療を重視している

★甲状腺腫瘍の手術には、術後の音声機能を損なわない繊細な外科治療が必須であり、仮に声帯麻痺を伴う重症例に対しては後述の音声改善治療を追加することができるのが、他医療機関にはない先進的治療である。また、上顎癌や咽頭癌では選択的動注化学療法と放射線治療を取り入れた低侵襲治療が可能になり、特に根治手術が不可能であった高齢者の頭頸部癌治療に対する集学的治療法として評価されている

★耳科手術では、中耳真珠腫や慢性中耳炎を中心に鼓室形成術、聴力改善手術を行っている。また、メニエール病に対する保存的治療での制御困難例には内リンパ嚢開放術も行うことも可能である

音声外科および嚥下外来=声帯ポリープや声帯結節などの顕微鏡下喉頭微細手術だけでなく、術前後の音声言語療法が専門的に行われる。また、嗄声の原因としての声帯麻痺に対して、声帯内脂肪注入や喉頭機能外科手術が可能である。最近では、嚥下障害患者の治療として嚥下改善指導や改善手術も行われ、先端的医療として注目されている

★慢性副鼻腔炎、鼻閉に対する治療は、内視鏡下鼻内手術を積極的に取り入れている。薬剤による保存的治療が困難な鼻アレルギーやいびき症の原因としての鼻閉の改善手術も、内視鏡下に鼻粘膜レーザー手術を組み合わせて、患者にとって苦痛の少ない方法をとっている。近年注目される睡眠時無呼吸症候群などに対しては、睡眠障害に対する専門外来を設置し、病院をあげて取り組んでいる

★いびき外来はその一環であり、精神神経科などとの協力体制でいびき症の患者の鼻閉改善手術や扁桃摘出、軟口蓋形成術などの適応を決めている

★CTや超音波検査は、外来で即日に実施する体制も整え、診断の効率化が図られている。当院における特徴は耳鼻咽喉科・形成外科・消化器外科・放射線科などによるチーム医療体制が確立していることで、進行癌に対しても根治手術に続く再建外科治療が非常に高い精度でなされることである。術後の病理診断体制も確立され、外科的治療後に放射線・化学療法の必要性を的確に判断している

★特殊外来は小児難聴外来、喉頭外来、腫瘍外来、めまい外来、アレルギー外来、鼻副鼻腔外来などがある。

医療設備

MRI、CT、KTP-YAGレーザー、炭酸ガスレーザー、超音波検査装置、内視鏡、電子内視鏡、ABRを始めとする聴覚検査装置、種々の音声言語検査装置。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

歯科口腔医療センター

分野

歯科口腔外科

特色

福岡県南部をはじめ、佐賀県東部、熊本県北部、大分県西部における歯科・口腔外科疾患に対する基幹病院としての役割を果たす。一般歯科疾患のみならず、様々な顎口腔疾患による咬合や咀嚼機能の障害に対して、補綴・咬合外来、顎関節症外来、顎口腔腫瘍外来、インプラントなどの専門外来を設けて、先進的・包括的治療を行っている。

症例数

年間新患総数は4,500人で、その内訳は、歯・歯周疾患(1,400人)をはじめ、顎関節症(500人)、抜歯依頼(450人)、炎症(450人)、口腔腫瘍・嚢胞(260人)、粘膜疾患(250人)、外傷(180人)、顎変形症(50人)、インプラント(30人)など多岐に及ぶ。年間入院手術例は320例で顎嚢胞、顎骨骨折、口腔腫瘍、炎症、顎変形症などを行っている

★インプラントでは、う蝕や歯周病による歯牙喪失例だけでなく、高度骨吸収例、顎裂部、外傷や腫瘍切除による重度の骨欠損を伴う難症例に対しても3D-CTを使用したコンピューター分析、実体モデルの作製を取り入れ、組織延長術、骨移植・骨誘導再生を併用して行っている。また、インプラントに加え歯胚や智歯などを用いた歯牙移植も行っている

★顎変形症では、歯科矯正専門医とともに診断・検査を行い、外科的矯正手術を行う場合では、術前に自己血貯血を行い同種血輸血は行わず、術前のコンピューターシミュレーションによる検討を行い手術に応用している。咬合や形態の改善を図るだけでなく、顎関節の状態、術前後での気道変化に応じて下顎枝垂直矢状骨切り術、オトガイ形成術、組織延長術などの術式を選択し、術後の顎位の安定(後戻り防止)機能的改善を図り、良好な成績を得ている。また、矯正用インプラントを用いた治療も開始している

★顎骨骨折では、顔面の手術痕を避けるために口腔内からの手術を可及的、積極的に行っており、チタン製ミニプレート、吸収性ミニプレートを取り入れ、強固な骨片固定を行っている。さらに、超音波治療装置を併用して骨折部の治癒促進、固定期間の短縮を図っている

★顎関節症では、薬物療法、スプリント療法、理学療法に加え、徒手による関節円板整復や顎関節腔内洗浄による保存的治療を積極的に進め治療効果をあげている

★口腔腫瘍では、マイクロプローブによる口腔内エコーを駆使した非侵襲的検査をはじめ、白板症などの浅在性病変に対するアルゴンプラズマレーザーを用いた凝固や、腫瘍への直接侵襲を抑えた早期癌の切除生検など、治療侵襲の少ない治療を選択し行っている。最近5年間の口腔癌の治療成績は、1期96%、2期90%、3期80%、4期68%である。腫瘍切除後の欠損や機能障害に対しては、顎顔面補綴、インプラントの応用を行っている

★非定型顔面痛や舌痛症、口腔心身症など、ストレスや心因的影響が考えられる場合には、精神神経科の専門医を外来へ招いて、診断と治療を行うことによってリエゾン効果をあげている

★睡眠時無呼吸症候群やいびき症では、当院睡眠外来と連携しながら、頭部X線規格写真による顎形態分析に加え、マウスピースを使った治療を行い、70%以上で高い治療効果を認めている。また、スポーツにおけるマウスピース作製では外傷予防の目的に加え、機能向上を図る試みを行っている

★その他に、全身麻酔による智歯の一括抜歯や障害者の歯科治療、日帰り全身麻酔手術なども行っている。また、他科疾患における化学療法や手術での感染予防、生活習慣病治療の一環として歯周病の包括的治療、口腔衛生指導、口腔ケア、咀嚼指導などを試みている

★専門外来:顎口腔腫瘍外来、インプラント外来、顎変形症・矯正外来、顎関節症外来、スポーツ歯科外来、口腔心身症外来、睡眠マウスピース外来、補綴・咬合専門外来がある。

医療設備

MRI、ヘリカルCT、超音波エコー、ファイバースコピー、レーザーメス、レーザー照射器、咬合診断装置、マイオモニター、ブローネマルクインプラントシステム、顎関節内視鏡など。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

皮膚科

分野

皮膚科

特色

診療については全人的な見地から患者の診療にあたっており、患者の不安をおこさないような丁寧な扱いを心掛けている。当科では、特に皮膚外科手術が多く、多くの良性、悪性皮膚腫瘍の切除手術、リンパ腺切除術、その他の手技で手術を行っている。当科の特徴として、多くの天疱瘡をはじめとする自己免疫性水疱症の患者の受診が多い。また、角化症をはじめとする各種の遺伝性皮膚疾患が多いのも特徴である。その他、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎や薬疹などの皮膚アレルギー疾患、皮膚真菌症、毛髪疾患、皮膚感染症、皮膚リンパ腫なども、それぞれのsubspecialityをもつ専門医が担当している。

症例数

年間の外来初診患者数は約3,500人で、延べ外来患者数は約30,000人である。外来初診患者数が比較的少ないのは、当院が特定機能病院として非常によく機能しており、紹介率が80%に達しているためである。病棟ベッド数は20床で、常に満床以上である。入院患者数は延べ約300人。手術件数は延べ約300人で、そのうち全身麻酔手術は約80人である

自己免疫性水疱症=橋本教授が中心となって、各種天疱瘡、水疱性類天疱瘡の他、まれな自己免疫性水疱症の治療に当たっている。多くが厚労省の特定疾患になっており、長期にわたって慎重な治療を必要とする。また、難治な患者の紹介も多い。特に、生命に関わるような重症な症例も多く、多くは入院の上、大量免疫グロブリン静注療法(IVIG)、血漿交換療法、インターフェロンガンマ療法や各種免疫抑制剤などの治療を要している

遺伝性皮膚疾患=橋本教授、濱田講師が中心となって診療している。特に遺伝性角化症の患者が多く、各種の魚鱗癬、掌蹠角化症などの患者が定期的に訪れ、治療と指導を受けている。また、先天性表皮水疱症の患者も多く、その遺伝子検索も含め、高度の治療を行っている

アトピー性皮膚炎=安元准教授、名嘉真講師が中心となって診療にあたっている

重症脱毛症=辛島講師が中心になって治療に当たっている。SADBEの外用を用いた免疫療法を中心に行っているが、他に、PUVA療法、ステロイド外用・内服療法、漢方療法などを組み合わせて、難治な患者の治療に当たっている

皮膚悪性腫瘍=名嘉真講師、文森病棟医長、桃崎助教が中心となって治療を行っている。主要な疾患は扁平上皮癌、悪性黒色腫、血管肉腫、その他の悪性腫瘍であり、すべて入院の上、切除手術を行い、必要に応じてリンパ節切除を併用している。また、化学療法も併用している。その他、基底細胞癌と前癌状態としてのボーエン病や日光角化症の治療も数多く行っている

ATL、菌状息肉症、皮膚リンパ腫=名嘉真講師、猿田助教が主体となって、PUVA療法、UVB療法、ガンマインターフェロン療法、放射線療法、化学療法を行っている

膠原病=橋本教授が中心となって診療している。特に、皮膚に病変が著明な、強皮症、皮膚筋炎、皮膚エリテマトーデス、シェーグレン症候群を中心に診療に当たっている

皮膚感染症=安元准教授が中心となって診療している。特に、単純疱疹や帯状疱疹などのヘルペスの研究および治療においては、安元准教授は我が国の第一人者である。その他、疣(イボ)を中心としたヒト乳頭腫ウイルス疾患、細菌性感染症の治療に当たっている

接触皮膚炎や薬疹などのアレルギー疾患=徳田助教、樋口助教、森助教が中心となって治療している。特に接触皮膚炎におけるパッチテストでは、as isの検査のみではなく、その成分パッチまで含めて、細かな配慮を行っている。また、薬疹では、DLST、パッチテスト、プリックテストを行い、必要な場合は、入院の上、薬剤の再投与試験も行っている

光線力学治療(PDT)=日光角化症に対して、光感光物質(ALA)を外用後、エキシマレーザー照射している

美容皮膚科=ケミカルピーリングおよび各種レーザーを用いて、黒アザ・赤アザ・シミなどの治療も行っている

メイクアップケア教室=ケミカルピーリングおよび各種レーザーを用いて、黒アザ・赤アザ・シミなどの治療も行っている。

医療設備

手術台、イオントフォレーシス、Qスイッチルビーレーザー、色素レーザー、炭酸ガスレーザー、半導体レーザー、エキシマレーザー、スーパーライザー、超音波装置、局所型UVA/UVB装置、全身型UVA/UVB装置、ナローバンドUVB装置、CT、MRI、PETなど。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

内科(血液・腫瘍内科部門)

分野

血液内科

特色

当科は、急性白血病、慢性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄増殖性疾患などの造血器腫瘍、再生不良性貧血、溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病などの免疫異常に基づく疾患、血友病などの先天性出血性疾患、血栓症および播種性血管内凝固症候群など幅広い血液疾患を対象として臨床を行っている。造血器悪性腫瘍に対しては、個々の患者に最適な治療方針の決定、さらに臨床研究に参加していただくことを原則としている

★急性骨髄性白血病、および急性リンパ性白血病は、60歳以下の患者さんは、臨床試験参加、61歳以上の患者さんに関しては個人差が大きいため、各々の患者さんに、緩和的な治療から造血幹細胞移植まで、病状及び患者さんの希望に応じて治療を行う

★悪性リンパ腫では、病理学教室の大島孝一教授の協力を得て正確な病理診断を行い、患者さん個々の状態を正確に評価し、一人ひとりの患者さんに最適な治療を行うこととしている

★多発性骨髄腫では、ボルテゾミブ、サリドマイド、自己末梢血幹細胞移植などを組み合わせることで、長期にわたる寛解維持を目標としている

★造血幹細胞移植は、自己末梢血幹細胞移植、同種造血幹細胞移植では、血縁ドナーからの骨髄移植および末梢血幹細胞移植、骨髄移植推進財団を介した非血縁骨髄移植、さい帯血バンクを介した非血縁臍帯血移植のすべてを行っている。患者さんの状況に応じて、骨髄非破壊的な前治療による同種造血幹細胞移植いわゆるミニ移植も積極的に行っている

★当科の特徴として、教授の専門が凝固及び血栓症であることが挙げられる

★凝固異常、出血性疾患、血栓症は、血液内科だけなく、一般診療において重要な分野である。特に重症患者においては、しばしば凝固系、線溶系、血小板などの異常を合併する。このような特殊な病態において、当科では、患者の全体的な評価および凝固系の専門的な評価を行い、適切な治療を行う、他診療科からのコンサルトに対して適切なアドバイスを行っている。

症例数

東4階集学治療センターに約40名の入院患者。急性白血病10名、悪性リンパ腫15名、多発性骨髄腫5名、その他(骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、凝固異常など) 5名前後

年間症例数=急性白血病約40例、悪性リンパ腫約100例、成人T細胞性白血病リンパ腫約10例、多発性骨髄腫約50例

治療成績=急性骨髄性白血病はJSCT研究会、急性リンパ性白血病はALL/MRD2008プロトコールに登録し治療を行い、寛解導入率80%以上を達成している。びまん大細胞型B細胞性リンパ腫は、抗CD20抗体リツキシマブにCHOPを併用する標準的な治療を原則としており、治療抵抗例に自己末梢血幹細胞移植を行っている。移植後3年生存率は70%以上である

★多発性骨髄腫は、MP療法などの既存治療、ボルテゾミブ、サリドマイドなどの新規薬剤、造血幹細胞移植を組み合わせた集学的な治療を行っている。3年生存率約60%である。

医療設備

特定機能病院であり、一般病床30床、無菌室18床、血液成分分離装置、フローサイトメーター、遺伝子解析等、臨床的および研究的設備を備えている。なお、2010年10月より新病棟14階完成予定で、40床全無菌病棟となる。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

神経内科

分野

神経内科

特色

パーキンソン病・脊髄小脳変性症などの神経変性疾患、重症筋無力症などの神経免疫性疾患、ヘルペス脳炎などの中枢神経感染症をはじめ、認知症、頭痛、めまい,しびれなど幅広く神経疾患の診断と治療に取り組んでいる。物忘れ外来、睡眠外来、小児神経外来のほか、脳神経外科、精神神経科、整形外科、神経放射線などと協力して診療を行っており、定期的に症例検討を行っている。

症例数

年間外来患者数10,000人、入院患者数120人。外来は幅広いニーズに対応している。頭痛、めまい、しびれで来院される患者が多いが、筑後地域およびその周辺から神経難病や診断に苦慮する症例の紹介に対応している。通院可能な患者はできるだけ入院しないで外来で治療を行うようにしている。長期入院が必要とされてきたステロイド大量投与の場合でも注意深い観察により外来治療が可能である。多発性硬化症に対するステロイドパルス療法、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎に対する免疫グロブリン大量静注療法も入院せずに、アメニティーセンターで快適に施行できるようになっている。眼瞼けいれん、片側顔面けいれん、痙性斜頸に対するボツリヌス療法は一段と成果をあげている。パーキンソン病の治療については神経保護の観点から病気の進行を遅らせる治療法の開発を目指して臨床研究も行っている。長期療養を余儀なくされた患者・家族には外来ナースが、地域の保健所や訪問看護ステーションなどと綿密な連携のもと、個別に細かな指導にあたっている。また,当院は福岡県重症神経難病ネットワークの基幹協力病院としても機能している。

医療設備

CT、MRI、MIBG心筋シンチ、SPECT、PET、筋電図、各種誘発電位、脳波など。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

脳神経外科

分野

脳神経外科

特色

脳腫瘍、脳血管障害、頭部外傷、先天性中枢神経疾患、機能的脳疾患、神経集中治療、脊椎・脊髄疾患など脳神経外科関連のすべての分野の診療と研究を行っている。外来では脳ドックを手掛け脳卒中科も標榜している。脳卒中ホットラインを有し、24時間体制の受け入れを行っている。九州では唯一の高度救命救急センターにはスタッフを3人配置しており、常時急患に対応できる。重症脳損傷患者に対する神経集中治療では、我が国をリードする実績をあげている。また直達手術例数や血管内手術症例数も全国では有数である。診療上の理念として、一人ひとりの患者さんのQOLを重視した質の高い安全確実な低侵襲治療を掲げている。

症例数

07年度の外来患者数は16,785人、入院患者数は1,066人(病床数は脳神経外科病棟50床、救命救急センター約10床)、手術件数は463件(脳血管内手術119件を含む)で、毎年約500件前後と全国でも有数である。内訳は脳腫瘍90件、脳動脈瘤85件(直達手術26件、脳血管内手術59件)、脳動静脈奇形2件、脳内出血21件、血管吻合術5件、頭部外傷102件、神経血管減圧術6件、脊椎・脊髄疾患64件など。脳動脈瘤以外の脳血管内手術は脳動静脈奇形2件、硬膜動静脈瘻10件、虚血性疾患31件、脳腫瘍14件などである

脳腫瘍=脳腫瘍に対しては、各種の手術支援システムを駆使し安全確実な手術を行っている。悪性腫瘍例では他科とチームを組み、化学療法やリニアックによる放射線療法など最新の治療を行っている。間脳下垂体腫瘍には経蝶形骨洞手術を第一選択とし、神経内視鏡や術中エコーを手術支援装置として多用している。転移性脳腫瘍では患者さん個別のQOLを第一に治療方針を決定し、必要に応じて定位的放射線治療も積極的に行っている。頭頸部悪性腫瘍では、形成外科、耳鼻咽喉科との共同チームで治療に当たり、全国でもトップクラスの成績が得られている

脳動脈瘤=破裂脳動脈瘤には動脈瘤の性状を考慮し、脳血管内手術(脳動脈瘤内コイル塞栓術)か直達手術を選択して好成績を得ている。未破裂脳動脈瘤例では年齢やADL、社会的背景を個別に考慮して治療方針を決定している

脳動静脈奇形=出血発症例は基本的には直達手術を行うが、血管内手術を併用することが多い。部位によっては定位的放射線治療を行っている

脳内出血=血腫の大きさや部位、臨床症状から直達手術、定位的血腫吸引術、保存的治療のいずれかを適宜選択している

閉塞性脳血管障害=脳血管撮影、SPECTなどで脳循環動態を精査し、厳密に内科的治療か脳血管吻合術かを検討している。頸部内頸動脈狭窄症に対しては、血栓内膜剥離術または血管内手術によるステント留置術を、脳塞栓症に対しては超選択的血栓溶解療法を積極的に行い、いずれも良好な結果を得ている

水頭症・小児脳神経外科=小児から成人まであらゆるタイプの水頭症や小児の奇形に対し治療を行っている。閉塞性水頭症に対しては神経内視鏡を繁用している

頭部外傷=重症例に対しては緊急の開頭術や、最新の各種モニタリング下に低体温療法を施行し、全国をリードする成績をあげている。なお、重症脳損傷後の高次脳機能障害では、九州では唯一の中核施設として多数の患者さんを診療している

機能的脳神経外科=三叉神経痛例や片側顔面けいれんに対しては神経血管減圧術を施行し、極めて高い治癒率を示している。その他、てんかんやパーキンソン病など他科と共同で診療を行っている。特にパーキンソン病に対しては内服治療以外に新しい経頭蓋磁気刺激療法を行っており、高い評価を受けている。

医療設備

CT、Xe-CT、MRI、脳血管撮影装置(DSA)、SPECT、術中ナビゲーション装置、各種誘発電位、各種モニタリング装置、手術用超音波診断装置、手術用超音波吸引装置、神経内視鏡、磁気刺激装置、定位放射線照射装置。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

放射線科

分野

放射線科

特色

当院は福岡県南部・筑後地方の唯一の大学病院であり、70%を超える患者さんの紹介率を有する特定機能病院であり、また地域がん拠点病院でもある。また、九州では唯一の高度救命救急病院に指定され、患者さん搬送用にドクタ-ヘリも常駐している。当科では患者さんの立場に立った、やさしい治療と診断を行うことを特に心がけている。常勤の放射線科専門医が29人という全国でもトップクラスのスタッフが揃っており、放射線科の幅の広い専門領域すべてをカバ-している。

症例数

放射線治療においては関係診療科と密接に協力して診療にあたっている。特に頭頸部癌(舌癌、喉頭癌、咽頭癌など)、食道癌、乳癌、肺癌、前立腺癌などでは他科の医師と一緒に患者さん個々についてカンファレンスを行って治療方針を立て、治療後には一緒に診察(共診)を行っている。2007年度の放射線治療患者さんは頭頸部癌232人、肺癌245人、乳癌185人、食道癌149人、悪性リンパ腫・白血病97人、子宮癌・卵巣癌95人、前立腺癌72人、脳腫瘍43人など

★頭頸部領域の癌(顔面、口腔内、喉などの癌)を手術すれば発声や嚥下(のみこみ)などの機能障害がおこるだけでなく、見た目も大きく損なわれる。久留米大学病院では耳鼻咽喉科・頭頸部外科や歯科医療センタ-・口腔外科などと密接に協力して従来は手術でしか治せなかったこの領域のがんを放射線治療と抗がん剤の併用で治癒にむけた試みを行っている。抗がん剤の使用は血管造影の技術を用いた超選択的急速動注化学療法という方法を用いている。腫瘍を栄養する動脈から抗がん剤を直接入れるので、抗がん剤の濃度を従来行っている静脈から入れた場合の数百倍に高めることが可能となり当然ながら効果が上がる上に、抗がん剤を動脈から入れると同時に静脈からは抗がん剤の中和剤を投与するので全身の副作用(吐き気や嘔吐など)もごくわずかに抑えることが可能である。このような方法で進行した喉頭の癌を全例治癒させているなど、頭頸部癌の治療成績は全国的にみてもきわめて高い。例えばT2(やや進行した段階)の喉頭癌117人の5年局所制御率(5年間再発がない率)は87%で、世界でもトップクラスの成績である。さらに、当科の特徴の最大の点は患者さんの気持を大事にした治療を行いたいと考え、実行していることである。例えば、放射線治療センタ-の入口には患者さんにリラックスしてもらえるように熱帯魚の水槽が置いてあり、待合室は間接照明にしている。さらに乳癌患者さん用のマンマス-ツ(特許申請中)や小児放射線治療用のお面の制作(特許申請中)なども工夫してきた。また、常勤の放射線治療専門医だけでも6人と九州ではもっとも多いスタッフを有しているので、スタッフは各自で専門領域を持って診療にあたっている。乳癌+脳腫瘍+小児腫瘍(淡河准教授)、頭頸部癌+食道癌+肺癌(鈴木弦助教)、婦人科腫瘍+疼痛緩和(江藤英博助教)、悪性リンパ腫+前立腺癌(末藤大明助教)などである。これらの専門領域別の放射線治療専門医師の体制は患者さんのため最善の治療を行うために当然のことではあるが、若い放射線治療スタッフやロ-テイションで回ってくる臨床研修医の指導や教育にも大変都合がよい

★背骨が折れて歩くことはおろか、痛くてじっと寝ていることもできない位の痛みにお困りのお年寄りが身近におられないだろうか。従来はコルセットをつけたり、痛み止めを飲んだりするしか治療法がなかった胸椎や腰椎(背骨)の圧迫骨折に対し、田中法瑞講師がスイス留学中に修得した骨セメント注入療法(椎体形成術)を2002年から行っている。治療そのものはわずか30分程度ですみ、また入院期間も4日~5日程度で十分である。これまでに400人以上の患者さんの治療を行っているが、痛みは劇的に改善し、患者さんやご家族から大変喜ばれている。まだ十分知られていないことから、インタ-ネットの検索などで知った患者さんのご家族からの問い合わせが多い

★一方、当院の高度救命救急病院に搬入された交通外傷などの止血治療のため活躍しているのが小金丸雅道助教を中心にした当科の血管造影・IVR(血管内治療)のグル-プである。胸やお腹を切ることなく、体の中の出血している部位を探しだし、傷付いた血管を修復して止血治療する。手術と同様に熟練した技術と咄嗟の判断、さらに体力を要求される難しい技術であるが、やりがいのある仕事である。また血管造影・IVRグル-プでは血管のこぶ(動脈瘤)を手術しないで、血管の中からコイルを詰める治療を行っている。動脈瘤は破裂すると大きな後遺症を残すだけでなく、場合によっては死にいたる場合もある。安陪等思准教授を中心に脳の動脈瘤の治療から開始したが、現在では全身の動脈瘤の治療を行っている

★石橋正敏教授を中心としたPET・核医学のグル-プも活躍している。2004年1月から当院のPET検査装置が稼働して、早期のがん発見に偉力を発揮してきた。さらに、2006年にはCTと一体となったPET/CT装置が導入されて、以前のPET単独タイプに比べ病変の位置が正確に判断できるようになっている

★CT検査装置では最新の256列のCT装置が2009年4月から稼働を開始している。またMRI検査装置も3T(テスラ)という非常に高磁場の装置が2008年から稼働して、特に脳の病変などに偉力を発揮している

★病院といえばレントゲンフイルムというのが長い時代だったが、最近はレントゲンフイルムを使わないでコンピュ-タで写真を見る時代になった。久留米大学病院でも2009年4月からレントゲンフイルムを使わないで画像はコンピュ-タで見るように変わっている。同時に撮影された画像は当科の豊富なスタッフが読影して、レポ-トも画像と同時に参照できる体制にしている。

医療設備

MRI(3T:1台、1.5T:2台)、CT(256列のCT1台を含むMD-CT:5台)、PET(PET/CTを含むPET撮影装置2台)、DSA(3D-DSAを含む5台)、各種超音波装置と内視鏡、リニアック2台と治療専用CT1台。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

救急医学

分野

救急医療

特色

1981年6月に救命救急センターを開設。九州では唯一の高度救命救急センター(全国では21カ所)である。2002年2月より、全国で5番目の厚生労働省ドクターヘリ導入促進事業施設として福岡県ドクターヘリを運航開始した。現在では半径約70kmの福岡県全域、佐賀県全域、大分県西北部を運航範囲として、近年では毎年400件前後の出動要請があり、現在までに約2,100件以上の出動による病院前救急医療を行っている。このドクターヘリ事業開始時には病院間搬送が主体で出動件数も非常に少なかったが、現在では直接救急現場へ救急専門医と看護師が出動して現場から医療を行い、その患者にとって適切な医療機関へ搬送する病院前救急医療体制が、救急隊員にその有効性が理解されてきたために、現場からの要請が80%以上と非常に多くなってきている。この結果、長距離(山間へき地など)からの重症救急患者の現場出動や安全な病院間搬送が可能となり、地方における高度救命救急センターにおける役割を十分に発揮している。

症例数

年間の搬入症例は約1,100人で、脳神経外傷・疾患30%、循環器疾患が20%、消化器疾患が15%。頭部外傷を除く外傷、熱傷、中毒などの損傷が20%、呼吸器、泌尿生殖器疾患などが約13%、来院時心肺停止症例は約2%搬入されている。特に脳血管障害に関しては迅速なインターベンションや緊急手術による治療、頭部外傷症例に対する低体温療法など最新の医療技術を駆使しながら診療に当たっており、脳神経外傷・疾患の死亡率は16%である。また、近年ではドクターヘリ事業により救急事故現場からの外傷患者の搬入が非常に多くなってきている。また、救急隊員の技術の向上により脳梗塞に対する血栓溶解療法の適応を考慮した救急搬送も行われるようになってきている。CCUでは以前はドクターカーによる搬送が主体であったが、虚血性心疾患や急性大動脈解離などの循環器疾患に対してもドクターヘリによるIABPを施行しながらの病院間搬送が行われ、救命率の向上に努めている。さらにICUでは敗血症や多発外傷からの多臓器不全症例に対し、積極的に人工呼吸と血液浄化療法などを駆使しながら呼吸・循環管理を行っているが、とくに敗血症性多臓器不全の救命率は約60%と救命の困難さを物語っている。高度救命センター全体としての救命率は約82%であるが、今後もドクターヘリ、ドクターカーを駆使した病院前救急医療を行うことにより更なる救命率の向上に努めたい。

医療設備

ドクターヘリ、ドクターカー、ヘリカルCT、MRI、血管造影、PCPS、IABP、血液浄化機器、熱傷ベッドなど。

「医者がすすめる専門病院 福岡」(ライフ企画 2009年8月)

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