会員限定この記事を読むと10pt 進呈!!

新規会員登録(無料) ログイン

[患者さんの相談事例] 2010/06/04[金]

いいね!つぶやく はてなブックマーク

 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

紹介状を希望した場合、ドクターに書く義務はないのでしょうか。(58歳・男性)

 88歳の父が転倒し、大腿骨頚部骨折で入院しました。2ヵ月半で退院できることになり、退院前にドクターが「咳が気になる」と言って、胸部X線写真を撮ってくれました。その結果、肺がんの末期状態であることがわかったのです。
 その病院は整形外科の専門病院だったので、退院した後、父が内科でかかっている病院を受診しました。内科で簡単な検査を受けた結果、ドクターから「確かに肺がんの末期状態です。しかし、お父さんの年齢から考えて、積極的な治療ができる状態でもないし、3~6ヵ月の余命でしょう。当院は急性期の積極的な専門治療をする病院なので、お父さんに入院していただくわけにはいきません」と言われてしまいました。
 しかしそのころ、78歳の母に子宮頸がんが見つかり、手術を受けることになっていました。とても父を家で看ることができる状況ではなかったので、何とか入院したいとドクターに相談すると、自宅近くの有床診療所を紹介してくれました。
 父の入院先が決まって、最初は喜んでいました。しかし、いざ有床診療所に入院すると、父以外はモノも言えない寝たきりの患者さんばかり。次第に胸水が貯まって横になるのも苦しがる父に対して、ドクターは何の処置もしてくれません。足もパンパンに腫れあがり、ベッド上に架けたテーブルに前屈みに寄りかかって座ったまま眠る父を見て、私は不憫でなりませんでした。
 また、父はまだ少量ながらも食事がとれていたのですが、食べられる人がほとんどいないせいか、油が浮いているようなとてもひどい病院食で、父はまったく箸をつけることができませんでした。そこで、父の好物や「飲みたい」というジュースを差し入れたのですが、ドクターに見つかるとすべて没収されたのです。私がそのことに抗議すると、ドクターは「入院している以上、こちらの方針に従ってもらいます!」とすごい剣幕で感情的になり、話し合いすらできない状態でした。
 そこで、緩和ケア病棟のある病院への転院を思い立ち、電話で問い合わせてみました。すると、入院先の病院から紹介状をもらってきてほしいと言われたため、有床診療所のドクターに緩和ケア病棟に転院するための紹介状を依頼したのです。すると、「そんな勝手なことばかり言う人に、紹介状なんて書きません」と拒絶され、困り果てています。紹介状を希望した場合、ドクターに書く義務はないのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 胸水や足の腫れに対して何の処置もなく、苦しむ父親の姿を見ているのは、どれほどつらいことかと思います。せっかく「食べたい」「飲みたい」という思いがあるのに、差し入れまで取り上げられたのでは、抗議したくなる気持ちももっともだと思います。
 緩和ケア病棟の問い合わせ窓口は、一般的な転院希望者への型どおりの対応をしたのでしょう。通常は、紹介状を求めれば拒否されることは少ないので、病状を把握するための当然の手続きとして伝えたのだと思います。
 診断書は医師法で正当な事由がなければ拒めないことになっていますが、紹介状まで法律で明文化されていません。ただ、診療報酬の点数として「診療情報提供料」として定められてはいます。
 そこで、できれば緩和ケア病棟に直接出向き、いま置かれている状況、入院先のドクターの対応など直接伝えて、転院のための方法を相談してみてはいかがでしょうか。何らかの方策を一緒に考えてもらえるのではないかと思います。
解決!医療機関さんこうしてみては・・・?
 胸水が貯まっていること、足が腫れていることについて、治療できない事情があるのだとすれば、それは放置せず、きちんと説明すべきことだと思います。また、差し入れに支障がある場合も、感情的に怒って取りあげるのではなく、冷静に理由を伝え、理解を求めるべきではないでしょうか。
 転院を希望する患者・家族に、どんな思いがあるにしても、「紹介状を書かない」と拒否するのは、専門家の責務を云々する以前に大人気ない対応だと思います。たとえどんな感情的な行き違いあったとしても、冷静な対応が求められます。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

記事を読んでポイント獲得!

10pt 進呈!!

この記事を読んで
簡単なアンケートに回答すると、
"Amazonギフト券に交換できる"
QLifeポイントを獲得できます!

この記事を読んだ人は他にこんな記事も読んでいます。
記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。