[患者さんの相談事例] 2010/05/19[水]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

ドクターの機嫌を損ねないように薬についての質問をしたいのですが…(65歳・女性)

 私は心原性脳塞栓症で心房細動があり、以前、大学病院で循環器科の教授をされていたドクターのクリニックにかかっています。4種類の薬を出してもらっているのですが、抗凝固剤であるワーファリンが出ているのに、さらに同様の作用があるバイアスピリンが処方されているのです。私の状態で、2種類もの抗凝固剤が必要なのかと疑問で仕方ありません。
 そこで先日勇気を出して、ドクターに「バイアスピリンはどうして出されているのですか?」と聞いてみました。ところがドクターは、表情こそ明るい笑顔は保たれていましたが、何だか難しい専門用語をひとこと言われただけで、まったく理解できませんでした。しかし、もう一度聞き返す勇気は私にはなかったのです。
 また以前、新しく加わった薬を飲むようになってから耳鳴りが起こったので、それを伝えたことがあります。しかし、「薬で耳鳴りは起きません」と強く語調で断言されました。私はその語調に気圧されて緊張が高まり、喉がカラカラになってしまいました。
 その日以来、先生を怒らせてしまったと次の診察まで気になって仕方ありませんでした。そこで、次の診察のとき「先日は失礼しました」と診察に入るなりお詫びしたのです。そうしたら、「何のことですか?」とまったく意にも介しておられない様子。それなら、あんな強い語調でおっしゃらなくてもいいのに、と悲しくなってしまいました。私はどのようにして疑問を解決すればいいのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 たしかに勇気を出して質問しても、専門用語で答えられたり、きちんと答えてもらえなかったり、あるいは高圧的・批判的な口調で返答されると、気持ちが萎えてしまいますね。そこでもう一歩踏み込んで、「それはどういうことですか?」「いまのご説明では理解できなかったので、もう少し詳しくお話しいただけますか?」とは、なかなか言えないものだと思います。
 患者さんにできる努力としては、できるだけ相手(この場合、ドクター)が情報提供しやすいような聞き方を工夫するということです。たとえば、薬の副作用を聞きたいときに、不安そうに「その薬にはどんな副作用があるのですか?」と聞くと、ドクターは「この患者は副作用を怖がっているようだから、詳しく伝えると飲まなくなるのではないか」という危惧が働いて「大した副作用はないから、だいじょうぶ」という返事になったりします。しかし、「その薬を飲んでいるときに気をつけておく症状は何ですか?」と聞けば、飲むことを前提の質問になりますから、聞かれたほうも答えやすくなります。このような質問の言葉の引き出しを豊かにしておくことも、大切なコミュニケーション能力です。
 また、何でもドクター一辺倒で質問するのではなく、薬のことなら薬剤師に情報を求めることもできます。薬の専門家は薬剤師なので、まずは調剤薬局で相談し、薬の内容や違いをよく聞いたうえで、ドクターに再度聞く必要があるかどうかを考えてみてはどうでしょうか。
解決!医療機関さんこうしてみては・・・?
 笑顔で対応していても、患者が理解できるような説明でなければ意味がありません。
 また、患者はドクターの言動に非常に神経質になりがちですから、ちょっと語調の変化にも「気分を害されたのではないだろうか」「私の聞き方が悪かったのだろうか」と気にする患者は少なくありません。
 何度も同じことを聞かれたり、説明しても理解が得られないとイライラすることもあると思います。しかし、そこはプロとして感情コントロールをした対応をしていただきたいと思います。それが患者の信頼感につながっていくのではないでしょうか。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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