患者相談事例‐19「ドクターによって診立てが違うのはどうして?」
[患者さんの相談事例] 2010/06/18[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
どうしてドクターによって診立てが違うのですか?
(73歳・女性)
腰の辺りが痛くなり、布団から起きあがったり、姿勢を変えたりしようとすると強い痛みが起きるようになったので、近くの整形外科クリニックを受診しました。何枚もの腰のX線を撮り、ドクターから「骨はきれいです」と言われました。「でも、痛みは強いので、どうしたらいいですか?」と聞くと、「じゃあ、痛み止めの薬でも出しますか?」と聞かれたのです。どうしても必要なら「薬を出します」と言われるはず。無駄な薬なら飲みたくないと思って、断って帰ってきました。
私は一人暮らしで、何をするにも腰が痛いと不便なので、別のクリニックを受診することにしました。友人に相談すると、テレビにもよく出ている有名なペインクリニックがあるというので、少し遠かったのですが、そこを受診しました。テレビに出ているドクターは予約制だそうで、私は予約しなかったので、別のドクターが担当でした。
そのクリニックでは、腰のX線を2枚撮っただけなのですが、ドクターがフィルムを見るなり「圧迫骨折ですね。脊椎の10番と11番が潰れています」と言いました。そして、「痛み止めと胃薬を出しますので、痛みが軽減するかどうか、とりあえず1週間様子をみてください」と言われたのです。今回はドクターが必要と判断して出された薬なので、素直に受け取り、飲んでみることにしました。薬を飲み始めて今日で2日目ですが、たしかに痛みは軽くなったようです。
何枚もX線写真を撮ったドクターは「きれいな骨」と言ったのに、今回は2枚で圧迫骨折と診断されました。どうしてドクターによって診立てが違うのだろうと納得できません。やはり、サードオピニオンを受けたほうがいいでしょうか? 私としては、テレビによく出ているドクターの診断を聞いてみたいのですが。

確かに「骨はきれいです」と言われれば、まったく異常なしと思うのに、じつは圧迫骨折と言われると、どちらを信じていいのだろうという気持ちになってしまいますね。前医が見落としたのか、それとも何枚も撮ったけれど撮影方向などで明確に骨折がわからなかったのか、明確にわかるほどの骨折ではなかったのか――、理由は別の専門家に検証してもらわないとわかりません。ただ、ペインクリニックで撮影した写真は、圧迫骨折と見受けられる画像と判断できるものだったのでしょう。同じ写真を見て意見が分かれたわけではないとすれば、一概に「診立てが異なる」と言えない問題ではないかと思います。どうしても納得がいかなければ、もう1人別のドクターの診察を受けるのも一つの方法です。ただ、「テレビによく出ているドクター」だからといって、大きく期待を膨らませるのは疑問です。患者とドクターには相性もありますし、テレビで見せている表情を診察室でも見られる保証はありません。
薬を飲み始めて2日経ち、薬の効果が出てきているとのことなので、とりあえず1週間服用してみることも選択肢の一つだと思います。その後にペインクリニックで診てもらったドクターに疑問点を質問したり、アドバイスを受けたりした結果、「やはり別のドクターに診てもらいたい」と思えば、それから行動に移しても遅くないのではないでしょうか。

この患者さんは、2番目にかかったペインクリニックで、その前にかかった整形外科でたくさんのX線写真を撮り、その結果「骨はきれい」と言われたと伝えたそうです。このように診断が異なる場合は、もし理由を挙げることが可能なのであれば、どのような原因が考えられるのかも伝えていただくと、患者があれこれ詮索をせずに済むのではないかと思います。明らかな見落としが考えられるのなら仕方ないことですが、「軽い骨折で写し方によっては見えない場合がある」とか「一部が圧迫されているので、たくさん撮影しても方向次第では判断が難しい」といった場合など、ひとこと添えていただくと、患者の不信感も和らぐのではないかと感じました。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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