[患者さんの相談事例] 2010/07/16[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

ちょっと疑わしいと思ったら、慎重に対応するのがドクターの役割なのではないでしょうか?(57歳・女性)

 5年前、近くに外科のクリニックができ、乳がん検診もできると看板に書いてあったので、毎年そのクリニックで乳がん検診を受けることにしました。
 4ヵ月前に、そのクリニックで触診とマンモグラフィの検査を受けました。乳がんの検診だけは、別のドクターが非常勤で来られるのですが、「マンモグラフィの結果、しこりらしきものが見えます。たぶん良性だと思うのですが、もし気になられるようだったら、エコー検査を受けられてはどうでしょう。ただ、このクリニックでは乳房のエコー検査はできないので、乳腺科のある医療機関で検査を受けてください」と言われました。その言葉が引っかかり、検査を受けようかと考えていたところ、そのクリニックから検診結果が文書で郵送されてきました。見ると、乳がんは陰性になっていたので、「やはり結果的に問題ないと診断されたんだ」と私はすっかり安心してしまい、エコー検査を受けることをやめたのです。
 ところが、最近になって自分でも乳房にしこりを感じるようになり、検診のときのドクターの言葉を思い出しました。そこで、乳腺科のある病院を受診して、検査を受けたのです。その結果、乳がんと診断され、手術を受けることになりました。
 早期発見のために毎年検診を受けていたのに、こんなことでは意味がないと思います。ちょっと疑わしいと思ったら、慎重に対応するのがドクターの役割なのではないでしょうか。外科クリニックに電話をして、乳がんと診断されたことを伝えたら、院長が「乳がん検診を担当しているドクターが総合的に判断した内容を結果として出したまで。いまの段階で、私からそれが見落としだったかどうなのかなんて、判断できません」と言われてしまいました。最初から明らかに構えた対応で、がっかりしました。もう少し誠実なクリニックかと思っていたのですが。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
  確かに、早期発見のためにまじめに毎年検診を受けていたのに、このような結果になったら納得できないお気持ちも当然だと思います。ましてや、いったんはエコー検査の必要性を言われつつも、陰性と明記されたクリニックからの文書が送られてくれば、それを信じるでしょう。慎重を期して、「しこりらしきものがある」と言われたのだから、エコー検査を念のために受けてもよかったかもしれませんが、その段階でエコー検査でどれだけ異常が見つかったかはわかりません。
 ただ、この患者さんの良かった点は、陰性という結果が出たけれど自分のからだに関心を持ち、検査から4ヵ月の段階でしこりの存在に気づいたことです。やはり、いのちの主人公とからだの責任者は私たち自身。自分のからだへの関心は高めておきたいものです。
解決!医療機関さんこうしてみては・・・?
 結局、誰が総合的に陰性と判断したのかは相談者の話では明らかになりませんでした。
 非常勤で検診のために来てもらっているドクターとはやはりコミュニケーションを密にし、「ちょっと気になる状態」と思ったときは、それを明確に伝えてもらう医療者間の関係作りが必要だと思います。また、患者に伝えた内容を報告してもらうか、カルテに書き残してもらうことが大切だと思います。
 また、乳がんと診断された患者から連絡を受けたときも、初めから言い訳したり、逃げの姿勢になったりすると、患者にその気持ちが伝わり不信感に発展します。”ミス”と認めないまでも、少なくとも患者の思いを受け止め、患者のからだを案じる言葉かけが必要ではないでしょうか。やはり初期対応の誠実さが求められると思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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