[患者さんの相談事例] 2010/09/10[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

なぜ条件に合わせて治療を進めてくれなかったのかと、納得いかない気持ちでいっぱいです。(66歳・女性)

 70歳の夫は6年前に肺がんと診断され、「抗がん剤が効きやすいタイプ」と言われて、手術をせず抗がん剤治療と放射線治療を受けました。放射線治療は「予防のため」ということで、肺以外に脳にも照射されました。
 その後、がんは再発することもなく過ごしてきたのですが、治療が終わった半年後ぐらいに、歩行困難になってしまったのです。原因はパーキンソン症候群と言われ、それ以来、山のように薬が出されています。
 徐々に物忘れもひどくなっていたのですが、3ヵ月前に水頭症とわかり、脳に溜まった水を体内に流す管を入れる手術を受けました。それ以来、少し症状が改善したと思っていた矢先に、夫が自宅前の路上で転倒してしまったのです。その日の夜に嘔吐したため、病院に運んだところ、硬膜下血腫と診断されました。「しばらく様子をみて、改善しなければ手術をしましょう」と言われ入院したのですが、結局改善しなかったため、手術を受けることになりました。
 ところが、ドクターから「手術をする予定に変わりはありませんが、手術室の機械の関係で2日後にしか手術ができないのです。それまで待っていただきます」と言われたのです。その翌日に夫は意識がなくなってしまい、手術を受けたあとも意識が戻りません。
 その後、意識を改善させる治療に手間取り、胃ろうの手術の遅れなどが重なって、手術を受けてから2ヵ月が過ぎました。すると、相談室の医療ソーシャルワーカーから「回復期リハビリテーション病棟に転院の予定で候補を探していたのですが、手術から2ヵ月過ぎたので、一般病棟か療養病棟に転院していただくしかありません」と言われました。理由を尋ねると、脳出血後に回復期リハビリテーション病棟に転院するには、手術から2ヵ月以内という条件があるとのことでした。医療者なら、そんな条件は早くからわかっていたはずです。なぜ条件に合わせて治療を進めてくれなかったのかと、納得いかない気持ちでいっぱいです。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 最近は脳卒中や骨折などで急性期から回復期リハビリテーション病棟に転院するにあたっての相談がCOMLにも増えています。脳卒中で回復期リハビリテーション病棟に入院するには、発症や手術から2ヵ月以内と診療報酬点数の条件として決められ、入院期間も150日まで(重症は180日)と上限が定められています。もちろん、このような事情は病院側から説明があってしかるべきことです。
 現在は、一つの医療機関で長く入院や通院をするよりも、患者さんの状態に合わせて医療機関を選ぶ時代になってきています。そのようなことを念頭に置いて、医療者に十分な説明を求めていくことが必要です。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 すぐに手術が必要と判断したものの、病院の事情でできないのであれば、別の病院を紹介するという選択肢はなかったのでしょうか。家族とすれば、病院の都合で延期になり、その間に意識障害が起こったとなれば、「すぐに手術ができる態勢を整えてくれていれば、回復したかもしれないのに」と不信感を募らせてしまいがちだと思います。
 医療者にとって、発症や手術から転院までの期間制限があることは自明のことなのですから、早い段階から患者・家族に説明しておくことは欠かせないと思います。期限を過ぎてから「もう転院は無理です」と言われたのでは、不満が残っても当然でしょう。ドクターやナースが地域医療連携室などとしっかりコミュニケーションをとり、患者・家族に説明する姿勢が問われていると思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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