患者相談事例‐26「認知症を理由に通院リハビリを拒否されたのですが…」
[患者さんの相談事例] 2010/10/08[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
認知症を理由にリハビリ拒否されるなんて、どうしても納得いかないのですが。(58歳・女性)
84歳の母が脳梗塞で入院して2週間になります。比較的軽い梗塞で済み、右半身に軽い麻痺は残っていますが、自力で歩くことも食事も可能で、日に日に会話もスムースにできるようになってきました。
ただ、母は以前から軽い認知症があり、リハビリの必要性を説明しても理解できないようなのです。もともと動くのが嫌いなタイプなので、理学療法士や作業療法士とのリハビリを嫌がり、入院生活自体にストレスを感じ始めています。
昨日、医療ソーシャルワーカーと話し合いがあり、「病院でリハビリを無理強いするよりも、退院してご自宅での生活のほうがリハビリになるかもしれませんね」と言われました。私が「たしかに自宅に戻れば母も落ち着くと思うで、退院には賛成なのですが、退院後も通院でリハビリをしていただけませんか?」と頼んだところ、通院によるリハビリは拒否されたのです。医療ソーシャルワーカーが言うには、リハビリの担当医や理学療法士、作業療法士が「患者がリハビリに協力的ではない」ことと認知症を理由に通院リハビリは受け入れられないと判断したらしいのです。それなら、ほかの病院でリハビリができるように紹介状を書いてほしいと頼むと、「当院にリハビリ科があるのに、別の病院への紹介状は書けません」と言われてしまいました。
脳梗塞は高齢になれば発症率は高まるでしょうから、認知症の患者も多いのではないでしょうか。認知症を理由にリハビリ拒否されるなんて、どうしても納得いかないのですが。

認知症でなくても、高齢者は入院して環境が変わると、一時的に精神が不安定になりがちだと言われます。それだけに、入院している段階でリハビリに前向きになれないからと言って、通院リハビリは不可能だと決められてしまうことに納得がいかないお気持ちは当然だと思います。退院に向けての話は、医療ソーシャルワーカーとの話し合いだけのようですので、ドクターやナース、理学療法士、作業療法士などの患者を取り巻くチームの方たちと話し合いの場を持ってほしいと申し出て、家族の思いを聴いてもらい話し合うのも一つの方法ではないでしょうか。それでもなお通院リハビリが無理だと医療者が判断するなら、もう少し具体的な理由や判断基準を確認してみてはどうでしょう。

入院している段階でリハビリに前向きになれないからと言って、通院リハビリは不可能だと決められてしまうのはお気の毒だと思いました。自宅に戻って精神的に落ち着けば、判断能力も少しは回復するかもしれませんし、リハビリに向き合う姿勢も変化するかもしれません。
やはり、家族としては、ドクターやナース、理学療法士、作業療法士など、患者を取り巻くチームの人たちの意見を聞いたり、思いを伝えたりしたいと思います。それぞれの立場から意見を伝え、家族の思いも聞いたうえで、今後について判断していく医療側の柔軟な姿勢も必要です。そうすれば、家族の協力も得られるかもしれません。
もし、話し合いをおこなっても通院リハビリが無理だと判断した場合は、その具体的な理由や判断基準をきちんと家族に伝えることが不可欠ではないでしょうか。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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