[患者さんの相談事例] 2010/10/22[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

同意書を依頼しただけです。どうしてこんな費用を請求されるのでしょうか?(38歳・女性)

 私は最近、腰痛がひどく、知人に勧められて鍼灸治療を受けることにしました。鍼灸治療院に行くと、鍼灸治療を保険適用にするには、ドクターの同意を書いてもらう必要があると言われ、定型の用紙を渡されました。
 そこで、電話帳で整形外科クリニックを調べ、電話をかけて尋ねてみたのですが、どこも「当院では鍼灸治療の同意書は書いていません」と言われました。勧めてくれた知人にそのことを相談すると、どうやら私の住んでいる地域の整形外科は鍼灸治療院や整骨院の施術に否定的で、協力してくれないらしいのです。知人も「仕方ないから私は内科で同意書を書いてもらった」と言っていました。
 そこで、私も別の科のドクターに頼もうと思って、電話帳で調べて何軒か電話しました。すると、ある精神科クリニックが、「書いてあげますよ」と言ってくれたのです。私は早速、鍼灸治療院でもらった用紙を持って精神科クリニックを受診しました。
 一応、問診を受けたので、腰痛について症状を伝えました。すると、「あなたの腰痛は精神的なことが原因ですね。いまのお話を伺っていると、あなたはうつ病です」と言われました。私が「いまは腰痛で気分が落ち込んでいるだけです」と言ったのですが、「鍼灸治療もいいけれど、定期的にこちらにも通ってきなさい」と言われました。
 同意書は後日受け取りに行くことになり、会計で医療費を請求され、領収書と明細書をもらいました。帰宅後に明細書を見ると、何と初診料以外に、「通院精神療法500点」という費用が請求されていたのです。私は精神療法を受けに行ったのではなく、同意書を依頼しただけです。どうしてこんな費用を請求されるのかと電話で抗議したのですが、受付スタッフの対応では埒があきませんでした。
 後日、同意書を受け取りに行ったのですが、その日は電話で抗議した際の「電話再診料」が請求され、文書作成料以外に、再診料と通院精神療法(330点)が請求されました。これは不正請求ではないでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 もともとかかっていた精神科クリニックで、腰痛に鍼灸治療が有効かもしれないということになったのなら同意書を依頼するのは理解できます。しかし、同意書だけのために精神科クリニックに依頼したとなれば、もちろん、クリニックが引き受けたからですが、本来の受診科とは言えなかったのではないかと思います。
 精神科を受診して、ドクターがうつ病と判断した場合、そのときの診察室でのやりとりは「通院精神療法」という診療報酬点数が適用されます。ただし、初診の際に請求できる500点は、条件として「30分を超えた場合に限り算定」となっています。もし、30分も要しなかったのであれば、その旨伝えて、クリニックに請求を見直してもらってはいかがでしょうか。
 また、電話で確認したことが医療費の問い合わせや抗議だったのであれば、電話再診の扱いにはならないはずです。できれば感情的にならず、冷静にクリニックと話し合ってみてください。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 精神科治療を目的とせず、単なる鍼灸治療院にかかるための同意書を依頼してきた診たこともない患者に対して、電話1本で引き受けるというのは、やはり安易と非難されても仕方がないのではないでしょうか。話を聞いた結果、うつ病と診断したとことも、この人が精神科を受診した整合性をつけるためと疑われかねません。
 相談者に後から確認したところ、初診の際の診察室でのやりとりは15分程度だったとわかりました。それなら初診の際の通院精神療法の対象にならないと思います。また、医療費の問い合わせ(抗議)について再診料扱いというのも、少し理解に苦しみます。医療費の明細書が発行されるようになって、いままで知り得なかった具体的な明細を患者が目にするようになりました。それだけに、疑問を呈されたときにきちんと患者が納得できる説明体制と、請求のあり方が、ますます問われていると思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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