患者相談事例‐28「右の卵巣は手術で切除したはずなのに…」
[患者さんの相談事例] 2010/11/05[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
何かが見えたということは、できものでもできているのかと不安に思ったのです。(48歳・女性)
私は最近、生理が不順になりがちで、更年期に入ってきているのかと思っていました。しかし、知人が子宮頸がんになったと聞いて、私も病気が原因かもしれないと思い、以前、不正出血でかかったことのある産婦人科の個人病院を受診しました。不正出血のときは院長に診てもらったのですが、今回は別の医師が担当のようでした。そこで、10年前に卵巣のう腫のため別の病院で手術を受けていることを伝えたほうがいいと思い、予診票に「右の卵巣は手術で切除」と書いて提出しました。
ところが私を担当した医師は、内診とエコー検査をして「子宮も両方の卵巣も健康です」と言ったのです。右の卵巣はないはずなのにおかしいと思いましたし、予診票に目を通していないのだろうかと疑問を覚えましたが、専門家に指摘するのも憚られ、そのまま帰宅しました。
しかし、いろいろと考えるうちに、「もしかしたら右の下腹部に何かできていて、それがエコーに映ったのではないか」と不安になってきたのです。そこで、同じ産婦人科病院の院長の診察日に受診し、受診理由を予診票に書いて確認してもらうことにしました。
ところが診察室に入ると、院長が憤慨した様子で座っていて、私のカルテのエコーの写真が貼ってあるページを肘で隠すようにして、「健康って言われたんでしょ!?」と言うのです。そこで、私は「右側の卵巣はないはずなのに、何かが見えたということは、できものでもできているのかと不安に思って今日伺ったんです」と伝えました。しかし、院長は私の話に耳を貸そうともせず、「そんなものガスと間違えたのかもしれない。卵巣があるかどうかも、エコーではわからないことはある!」と言われてしまいました。結局、不安は何も解消されないままです。ほんとうに、ガスが卵巣に見えることがあるのでしょうか。院長は見えない場合はあると言いましたが、ないものが見えたことの説明になっていません。

たしかに、手術で右卵巣を摘出していて、自己申告もしているのに、「両卵巣とも健康」と言われれば、「きちんと診てもらえたのだろうか」と疑問を覚えることと思います。そして次第に「何か異常があってそれが卵巣に見えたのでは」と不安になるお気持ちもわかります。ただ、やはり診察の段階で少し勇気を出して、「右の卵巣は手術をしてないはずなんですけれど」と一言伝えることができれば、もう少し早くに解決したかもしれません。せっかく院長に確認してもらおうと、再度受診したのに、そのような対応をされたことは残念でしたね。しかし、不安を解消するには、やはりきちんと診てもらうことしかないと思います。何度もご負担ですが、別の婦人科を受診なさってみてはいかがでしょうか。

まずは、患者に予診票の提出を求めているなら、その内容をしっかり確認してから診察に望むべきだと思います。両方の卵巣が健康と言われて「右の卵巣はないはずなのに」と思ったとき、気軽に伝えることのできる患者もいますが、話の流れで言いよどみ遠慮してしまう患者もいます。もちろん性格上の違いもありますが、できるだけ疑問はすぐに伝えることができるような雰囲気づくりは欠かせないと思います。
また、確認のために再度受診した患者に対して、気持ちを汲んで院長が誠実に診察や検査をしてくれれば、相談者も納得できたかもしれません。それだけに、結局は不信感に発展してしまったことが残念でなりませんでした。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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