患者相談事例‐30「同じX線写真を見ても判断できなかった、最初の整形外科医の責任を問いたいのですが…」
[患者さんの相談事例] 2010/12/03[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
X線撮影をしただけで、「首と腰の疲れが原因でしょう。しばらく牽引すればよくなります」と言われました。
(63歳・男性)
私は以前から腰の椎間板ヘルニアがあると言われていましたが、とくに症状はなく、元気に1日2時間のウォーキングや、ジムに通って筋トレもしていました。ところが、半年前にウォーキングをしている最中に左足に力が入らなくなり、次第に左腕にも脱力感を覚えました。翌日には右腕や右肩にも同じような症状が出たため、近所の整形外科クリニックを受診することにしました。
整形外科クリニックではX線撮影をしただけで、「首と腰の疲れが原因でしょう。しばらく牽引すればよくなります」と言われました。そして、言われるままに牽引に通い始めたのですが、日を追うごとに症状は悪化していきました。
1ヵ月ほど経って不安になった私は、別の病院の整形外科を受診しました。すると、首のX線写真を見ただけで「このまま放っておくと、車椅子の状態になりますよ。それに、この状態で牽引するのは逆効果で、むしろ危険です。すぐにMRI検査をして、手術ができる病院を紹介します」と言われました。
結局、精密検査で頸椎が変形して、脊髄を圧迫していることがわかり、さらに紹介された病院で手術を受けました。術前にドクターからは「手術が遅れたので、しびれが残るかもしれません」と言われていたのですが、案の定、手術から4ヵ月経っても足に力が入らず、しびれも残っています。同じX線写真を見ても判断できなかった最初の整形外科医の責任を問いたいのですが。

同じ部位のX線写真で一方は「首と腰の疲れ」と診断して牽引を勧められ、もう一方ではすぐに手術が必要で牽引は危険と言われれば、驚くのも無理はありません。いままで受けてきた治療がマイナスに働いていたのかと思うと、やりきれない思いになることでしょう。「責任を問いたい」という思いは、具体的に何を求めたいことなのかをお聴きすると、「最初の整形外科で支払った治療費を返却してもらいたい」とのことでした。それがかなうかどうかは、もちろん交渉次第ですが、その後の医療機関で受けた診断と治療結果を最初の整形外科医に冷静に伝え、話し合ってみるのも一つの方法ではないかとお伝えしました。

同じ整形外科で、なぜこのような異なる診断になったのかはわかりません。もしかしたら、1ヵ月の牽引によって、最初に撮ったX線写真と2番目の整形外科で撮ったX写真とでは骨の状態が異なっていたのかもしれません。もしそうならば、2番目の整形外科医は、その可能性を説明することも必要ではないかと思います。
このような納得できない結果が起きた場合、互いに冷静に話し合うのは困難を要します。しかし、医療機関にはまず、患者の納得できない気持ちを受け止め、真摯な姿勢で向き合っていただきたいと思います。
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NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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