患者相談事例‐36「以前から検査を受けていたのに…ドクターから説明が欲しいです」
[患者さんの相談事例] 2011/03/04[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
以前から検査を受けていたのに…ドクターから説明が欲しいです。(48歳・男性)
以前から、微熱や偏頭痛、貧血などの症状が出るたびに、近くのクリニックに通っていました。その都度、血液検査やX線検査を受け、必要に応じて薬を処方してもらっていました。
ところが半年前、急に仕事の関係で転居することになったのですが、ちょうど微熱が続いていたときだったので、薬を出してもらおうと引っ越し先の近くの病院を受診しました。そこでも血液検査とX線撮影を受けたのですが、その結果を見たドクターから「微熱以外に何か体調不良はありませんか?血液検査で肝臓の数値がとても上がっているのです。それに貧血もひどい」と言われました。そして、すぐにエコー検査と胃カメラを受けることになりました。その結果、「お腹のなかが大変なことになっています。急を要するほどに悪いと思うので、当院では対応できません」と言われ、大きな病院を紹介されました。
紹介先の病院で精密検査を受けたところ、S状結腸がんで、肝臓に転移していることがわかりました。肝臓の転移は、明らかに大きなものが2つと、肉眼で確認できる小さなものが3つあると言われました。
すぐに手術となり、大腸の手術はできたのですが、肝臓は「場所が悪くて、大きすぎる」と言われ、手術で摘出することができませんでした。そのため、手術後は3週間おきに抗がん剤治療を受けています。
いまの病院で「少なくとも1年前から検査データに異常があったはず」と言われました。そこで、以前通っていたクリニックに電話をして経過を伝え、ドクターから連絡がほしいとお願いしたのです。ところが、いくら待っても連絡はなく、二度ほど手紙で催促しました。それでも連絡がないので、もう一度クリニックに電話をかけたのです。するとドクターが、「検査に異常はなかった。こちらでやるべき治療はしていた」と言うのです。どうしても納得できないのですが、どうしたらいいでしょうか。

不調のたびに受診し、検査を受けていたなら、もっと早くに異常を指摘してもらえたはずというお気持ち、当然のことだと思います。クリニックのドクターは検査数値に異常がなかったと言っているようですが、それならやはり実際に検査結果などを見せてもらいながら説明を求めてはいかがでしょうか。また、カルテ開示を求めるという方法もありますが、開示後にカルテや検査結果を見て説明してもらう第三者の専門家の協力が必要になります。いまの主治医が客観的な意見を言ってくれればいいのですが、「トラブルに介入したくない」という気持ちから拒否される可能性もあります。日本のシステムでは、受けた医療内容を検証する際、第三者の専門家の意見を求めるには、弁護士を介する必要があります。そうすると、費用なども発生します。それだけに、どこまでのエネルギーをかけて追及するのかを考えることが大切です。

いままで診ていた患者から連絡があり、S状結腸で手術を受け、肝転移まで見つかったと聞けば、すぐに連絡をするのが誠実さを表す態度なのではないでしょうか。まずはお見舞いの気持ちを伝え、これまでの検査結果や診断内容を説明して、必要なデータなどを送ることが、前医としての責任でもあると思います。
もし、何らかの異常がデータ上出ていたのに、見落としていたとしても、わかった段階で真摯に対応するのが、患者の気持ちが不信感に発展しないためには不可欠です。誠意ある対応が求められると思います。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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