[患者さんの相談事例] 2011/05/20[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

電話でイラだった応対をされ、受診するのが怖くなってしまいました。(32歳・女性)

 2年ほど前から不安神経症と診断され、心療内科に通っています。なかなか相性の合うドクターと巡り合えなかったのですが、3ヵ月前に初めて行ったクリニックのドクターは丁寧に話を聴いてくれたので「ようやく安心して話ができるドクターと出会えた」と安心し、そのまま通い続けています。
 ところが昨日、受付スタッフの対応でとても嫌な思いをしました。
 昨日の午前中に受診する予定だったのですが、体調が優れなかったので、翌日に予約を変更してもらおうと思って電話をかけました。そして「明日、土曜日の10時半ごろに予約を変更したいのですが」と頼むと、「その時間帯はいっぱいです。来ていただいてもいいですが、かなり待っていただくことになります」と言われました。私は「どれぐらい待たないといけませんか」と聞いてみたのですが、返ってきた答えは「5人ぐらい詰まっているから、わかりません」とぶっきら棒な言い方でした。私は5人も入っているならとても待てないと判断し、いったん電話を切ってスケジュールを確認したうえで、改めてクリニックに電話をかけ直しました。
 「明日はどうしても10時半以外に時間を取ることはできませんでしたので、月曜日はいかがですか?」と私が尋ねると、先ほどと同じ受付スタッフが「月曜日なら空いている時間帯もあります」と言います。「では、10時半はいかがですか?」と聞くと、「いっぱいです」と言われたので、「何人詰まっているのですか?」と尋ねてみました。すると、「あのねぇ、前にも言いましたけど」ととてもつっけんどんな物言いで、「いちいち患者さんの人数を伝えられません! 患者さんのプライバシーに関係することですから!!」と叱るような口調で言うのです。私はこのようなやりとりは初めてだったので、「前にも言いましたけど」と言われたことにとても腹が立って、「何人待っているかを教えてもらうことが、なぜ患者さんのプライバシーに関係するのですか? それに、『前にも言いましたけど』という言い方、とても傷つきます。謝ってください」と思い切って言いました。しかし、受付のスタッフはまったく反省することもなく、「私は間違っていません」と繰り返すばかりなのです。挙句の果てにはドクターが電話に出て、「11時半に来てください」と言われました。ドクターの声も少しイラついた感じがして、また嫌われたのではないかと受診するのが怖くなってしまいました。どうすればいいのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 受診の予約変更で、どの時間帯なら空いていて、待ち時間が短くて済むのかを知りたいと思うのは、患者として自然な要求だと思います。それが受付スタッフには伝わらず、嫌な思いをしたうえに、受診するのが怖くなってしまったのは、とてもお気の毒なことだと思いました。
 ただ、日常生活でもあり得ることですが、電話というのは相手の状況が見えないだけに、コミュニケーションギャップが起こりやすいものだと思います。たとえば、クリニックが非常に混んでいたり、スタッフが少なかったりすれば、細々尋ねたことでスタッフがイライラしたのかもしれません。もちろん、クリニックの事情でスタッフが対応に不機嫌さを出すのはプロの対応ではありません。ただ、患者側も「いま細かく受付状況をお尋ねしてもご迷惑ではありませんか?」といった配慮のひとことを添えてみてはどうでしょうか。そうすれば、相手のマイナス感情を引き出さずに済むかもしれません。コミュニケーションは双方向から築くものなだけに、相手の良い部分を引き出せるようなコミュニケーションを努力したいものです。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 何度も電話をかけてきたり、細々と状況を尋ねられたりすると、忙しい時間帯ならイライラすることがあるかもしれません。しかし、この患者さんのように、ちょっとしたトラブルで受診することすら怖くなってしまう患者さんもいます。やはりできるだけ感情は抑えて、丁寧に対応するのがプロの仕事ではないかと思います。
 クリニックの場合、「受付対応や事務的なことはスタッフ任せ」いう院長も多いでしょう。しかし、受付はクリニックの玄関口・看板としてとても大きな役割を担っています。院長がどのような方針でクリニックを運営しているのかは、受付スタッフの対応を見て判断する患者もいるぐらいです。患者対応のあり方を見直すことはとても大切だと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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