患者相談事例‐45「病院側の手違い、なぜ患者側が時間や費用を負担しなくてはいけないのでしょうか」
[患者さんの相談事例] 2011/07/15[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
呼び寄せるのであれば、交通費ぐらい支払うのが常識ではないでしょうか。(51歳・男性)
両親(ともに80歳)は2人暮らしです。母に少し認知症があるので、糖尿病で定期的に受診している母の通院には、父がずっと付き添ってきました。ところが先日、父が肺がんの疑いで検査入院したのです。そのため、母の受診に私(息子)が付き添いました。
診察室で血液検査の結果を聞き、薬の処方せんを出しておくと説明を受けた際、ドクターから「次回の予約票を発行しておきますね」と言われた記憶があります。しかし、それほど重要という認識がなく、それがどの段階で、誰から渡されるかわからないまま、会計を済ませました。そして、そのまま帰宅したのです。
その日の夕方、検査入院中の父の元を訪ね、母の受診について報告しました。そのとき、父から「次回の予約票は受け取って帰ってきたか」と聞かれたので、「そういえば、ドクターからそのようなことを聞いたけれど、受け取っていない」と答えると、「受診のときに必要だから問い合わせるように」と言われました。
そこで、病院に電話で問い合わせてみたのですが、さんざん待たされた挙句、「調べたところ、予約票をお渡しできなかったので、予約が消えてしまっていました。もう一度病院に来て、予約をし直してください」と言われたのです。病院の手違いで渡し忘れたのに、なぜ患者側が時間と交通費を使って出向かなければならないのでしょうか。呼び寄せるのであれば、せめて交通費ぐらい支払うのが常識ではないでしょうか。

確かに一般社会では手違いを起こした側がお詫びに行くというのが常識なだけに、なぜ患者側が出向かなければならないのか、と疑問を抱かれるのは当然のように思います。同様に、ほかの電話相談でも、「病院側に非があるのに、なぜ説明のために呼びつけるのか」「薬を間違って出されたのに、こちらから交換のために出向かないといけないのか」「病院の明らかなミスなのに、病院から積極的に話し合いの場を持とうとしない」といった内容が届くことが少なくありません。だからといって、一方的に「非常識ではないか」と苦情を言えばトラブルになりかねません。予約が消えてしまったいきさつを冷静に伝え、院内で手続きしてもらうように頼んでみてはいかがでしょうか。

相談者の話を詳しく聞くと、どこかの段階で病院スタッフが予約票を渡し忘れてしまい、予約自体が解消されていたとのことでした。ドクターが予約票について言及していたようですが、初めて聞くシステムだと、「受け取って帰らなければ」という明確な認識になっていなかったのも無理はないと思います。それなのに、なぜ患者側が労力をかけて出向くのかという疑問はもっともだと思います。
このような場合は、もう少し臨機応変に「再度こちらで予約を取り直しておきますので、次回受診されたときは○○をお訪ねいただければ、お渡しできるようにしておきます」といった対応ぐらいはあってもいいのではないかと思います。「患者側が出向いて当然」という姿勢は、内容次第では見直しが必要ではないでしょうか。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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