[患者さんの相談事例] 2011/09/09[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

アンケートといい、医療費の請求といい、納得できないことだらけなのですが。(38歳・男性)

 ひどい腰痛で、近くの整形外科クリニックを受診しました。スタッフの対応は良かったのですが、診察前にアンケートに答えさせられました。アンケートは「気分が落ち込むときがある」「人が嫌いになるときがある」「イライラして人に当たってしまうときがある」といった内容に「はい」「いいえ」で答えるもので、精神面での質問ばかりでした。受付のスタッフに「整形外科と何の関係があるのですか?」と尋ねると、「アンケートに回答してもらうように、整形外科学会で決められているのです」と言われ、何だか釈然としませんでした。
 そのクリニックには3回ほど通院したのですが、痛みは改善せず、診断名もつきませんでした。私が「腰痛の原因や効果のある治療方法はないのでしょうか?」とドクターに聞くと、「より詳しく調べようと思うと、MRI検査が必要です。もし、ご希望ならMRI検査ができる病院への紹介状を書きますので、いつでも言ってください」と言われました。
 その整形外科クリニックは19時まで診察しているので、これまでは早く仕事が終わった日に受診していました。しかし、病院を受診して検査となると、そんなわけにもいきません。そこで翌日、職場に頼んで1週間後に休暇を取りました。そして、休暇の前日のお昼休みに整形外科クリニックに電話をし、「明日、MRI検査ができる病院を受診するための休暇が取れました。朝一番に紹介状を取りにいきますので、お願いします」と頼みました。すると受付のスタッフが「紹介状は受診していただかないと書けないので、あらかじめ準備しておいてお渡しするわけにいきません。午前中は診察が混むので、同じ日に病院を受診するのは難しいと思います」と言われてしまいました。
 そこで私は仕方なく、その日のうちに整形外科クリニックを受診して、紹介状を書いてもらうことにしました。仕事が終わって、18時45分にクリニックに飛び込みました。ところが領収書と一緒に渡された医療費明細書を見ると、時間内に受付を済ませたにもかかわらず、「夜間早朝等加算」という50点が請求されていたのです。それに紹介状をもらいに行っただけで、1,300円近く(3割負担)も請求されました。
 翌日、紹介された病院を受診すると、「MRI検査には予約が必要で、受診した日に検査はできない」と言われ、せっかくとった休暇が意味をなしませんでした。アンケートといい、医療費の請求といい、納得できないことだらけなのですが……。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 MRI検査は時間がかかるので、受診した日に検査が可能な医療機関は少ないのですが、事前に知らされていなければわからないことだと思います。クリニックで、そのようなアドバイスがあれば、と悔やまれます。
 さて、「夜間早朝等加算」というのは、病院の救急外来の負担を軽減するため、18時以降や朝8時まで通常診療をしている診療所(クリニック)に対して、18時以降(8時まで)に受付をした患者から請求できる点数です。つまり、その診療所にとって18時以降が診療時間内であることが加算の条件なのです。それまでは仕事が早く終わった日に受診されていたので、18時までに受付を済ませておられれば、請求されなかったのでしょう。
 また、紹介状は「診療情報提供料」といって250点の点数が定められています。さらに再診料(69点)や再診料に加算される外来管理加算などが請求可能なため、1,300円近くの請求額になったと思われます。
 医療費や受診・検査のシステムなどは、医療者には当たり前でも、患者にとってわかりづらいことが多くあります。できれば、「紹介状を書きますよ」と言われたときに、「病院を受診するとなると1日休暇を取らないといけないので、何か気をつける点があれば教えてください」といったやりとりがあれば、事前にアドバイスが得られたかもしれません。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 やはり、「ひとこと」が足りない典型的な相談内容だと思います。
 アンケートは、整形外科学会の関係者が調査しているのかもしれませんし、精神的なことと腰痛との関係を研究している人からの依頼で協力しているのかもしれません。しかし、患者には答える義務はないでしょうから、もう少し目的や依頼主、拒否可能なことなど丁寧に説明することが大切だと思います。
 また、他の医療機関を紹介するときは、MRI検査が目的とわかっているのであれば、紹介から受診までの流れや要する日数など、あらかじめアドバイスがほしいところです。また、病診連携でFAXによる検査予約ができる場合も増えていると聞きます。紹介の話が出た段階で、そのような説明もあれば、患者も時間確保をするために心の準備ができるでしょう。医療者にとって“日常”の当たり前のシステムでも、患者には“非日常”です。それを前提とした配慮が必要だと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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