[患者さんの相談事例] 2011/10/28[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

受けてもいないような検査代の請求は、不正請求しているのではないかと納得いかないのです。(38歳・男性)

 先日、アレルギー性の鼻炎に加え、声がしわがれるような症状が出てきたので、新しくできた耳鼻咽喉科クリニックを受診しました。診察を受けて、薬を処方してもらい、処方せんを受け取りました。そのときに支払った医療費が3,000円近かったのです。
 帰宅後、落ち着いて考えてみたら、大した治療を受けたわけでもなく、3,000円弱なんて高いなと思い始めました。それに、帰りに処方せんを持って行った薬局での支払いを合わせると、結構な出費になったのです。そこで、クリニックの領収書をよく見てみたら、「検査」という項目に600点という点数が記入されていました。私は検査なんて受けていないので、びっくりしました。600点というと、3割負担の私はそれだけで1,800円にもなります。こういう間違った請求をされているから高かったのだと思い、早速クリニックに電話をかけてみました。
 電話で事情を伝えると、長い間保留状態で待たされたあげく、「調べてみましたが、間違いありません」と言われました。「私は検査なんて受けてないのですから、間違いですよ」と言うと、「いいえ、検査は実施されています。だから、間違いではありません」と主張します。「診察した院長に直接聞きたいので電話を代わってほしい」と頼むと、「いま診療中なので、院長は電話に出ることができません。ともかく、当方の間違いではありませんので」と言われて、やむなく電話を切りました。
 こんな受けてもいないような検査代を請求するクリニックがあっていいのでしょうか。検査をしたことにして不正請求しているのではないかと納得いかないのです。
 (ここでCOMLの相談スタッフが、診察室での様子を詳しく質問したところ――)診察のときは、高い背もたれのある椅子に座らされ、最初は鼻や喉のなかをドクターが器具を使って覗き込んでいました。そして、「ちょっと奥のほうをのぞきますね」と言いながら、黒いストローぐらいの太さのチューブを鼻の中に入れて、すぐに抜いて診察は終わりました。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 黒いストローのようなチューブというのは、じつは内視鏡で、これが“検査”だったのです。診療点数では、「嗅裂部・鼻咽腔・副鼻腔入口部ファイバースコピー」という項目で600点という点数が定められています。“ファイバースコピー”というのは内視鏡のことで、たとえば胃カメラは診療点数では「胃・十二指腸ファイバースコピー」、大腸ファイバーも「大腸ファイバースコピー」という項目になっています。
 胃カメラや大腸ファイバー検査を受ければ、検査前に詳しい説明や処置がありますから「検査を受けた」という自覚を患者も強く持ちます。しかし、耳鼻科では診察の流れのなかでおこなわれるので、検査を受けた印象がなかったのでしょう。
 このような患者が自覚しにくい医療費のほかにも、情報提供料や管理料といった“目に見えない”費用も定められているのが医療費です。いまは領収書だけでなく、より詳しい項目が記された医療費の明細書が発行されています。「難しくてわからないからいらない」とか「医療費控除に使えないものは不用」などと断る患者が多いため、積極的に発行しなくなっている医療機関もあるようです。しかし、「医療費の明細書を出してほしい」と言えば発行されますから依頼し、何に医療費を支払っているのか確認することも大切です。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 COMLに医療費の相談があった際、医療機関で質問や確認をしなかったのかと相談者に問うと、たいてい「聞いたけれど、『間違いありません』の一点張りだった」「『妥当な請求』と言われたが、なぜ妥当なのかわからない」という答えが返ってきます。この相談者の場合も、「検査は実施されているから間違いない」とクリニックの担当者に繰り返されたようです。
 これからは医療費にも詳しい説明が必要な時代です。なぜ間違いないのか、検査とは具体的にどのような検査だったのか、理由や根拠のある説明が問われます。医療費はレセプトコンピューターに頼りがちなため、受付窓口で質問されても、きちんと説明できないことが少なくないようです。今後は、医療費の説明体制の整備も必要だと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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