[患者さんの相談事例] 2012/03/02[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

病院ホームページで調べた美容クリニックで手術を受けました。術後、思いもよらない高額の請求をされ、騙されたのではないかと納得がいきません。(21歳・男性)

 僕は仮性包茎で、中学生のころからずっと悩んできました。大学生になってアルバイトを始めてお金が少しできたことと、成人すれば親に内緒で治療が受けられるので、21歳になった先日、手術を受けることにしました。
 インターネットで検索して美容外科を探したところ、あるクリニックのホームページで「仮性包茎手術75,000円」という情報を見つけました。これなら僕にでも支払えると思い、そのクリニックで手術を受けることに決めました。
 クリニックに行くと、受付で「まず、カウンセリングを受けてください」と別室に通されました。そこで、手術だけでは傷跡が残ること、術後の痛みは1年以上続くこと、それらを補うための治療はきちんと準備されていることなどの説明を受けました。説明を聞いているうちに、提案された治療は拒否できないような気持ちになってしまい、複数提示された書類にサインしてしまいました。
 そして、後日手術を受けたのですが、術後に渡された請求書には、何と160万円もの金額が記されていたのです。びっくりして「75,000円ではないのですか!?」と聞くと、「手術だけして傷跡や痛みが残ってもいいのなら安くできるけど、それでもカウンセリング料金などを入れたら20万円はくだらないですよ。あなたはすべての治療を受けると書類にサインしたじゃないですか」と言われました。何でも手術中に「君の皮膚はコラーゲンが少ないから、注射をしておこうか」と言われ、よく意味がわからないままに「お願いします」と返事をしたコラーゲンの費用だけでも「5本打ったから50万円を超えている」と言われました。
 僕が「こんな金額、とても払えません」と言うと、ローンを組まされました。何か騙された気分で、納得いきません。請求額は高額すぎるのではないでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 仮性包茎の手術を美容整形で受けて高額な請求をされたという相談は、少なからず届きます。ご本人からの相談もありますが、ローン会社からの郵便物が届いて不審に思った親御さんが子どもに問いただし、「言われるままに支払わないといけないのか」と相談してこられる場合も多いのです。
 自由診療というのは、クリニック側が金額を定めることのできる治療です。ですので、クリニック側の説明を承諾し、書類にサインしてしまうと、契約したことになってしまうのです。つまり、成人である以上、「よくわからずサインした」というのは通用しません。また、金額について交渉しようとしても、「お金についてはあなたとローン会社との契約」と言われて、一切話し合いに応じてもらえなかったという相談も届きます。
 最近はプチ整形が流行ったり、しわ取りやしみ抜き、脂肪吸引などが簡単にできるようにインターネットで紹介されたりして、美容医療を気軽に受ける方が増えてきました。しかし、高額な費用につながるだけでなく、からだを傷つけたり、障害が残ったりする可能性もあるのです。事前にきちんと説明を受け、納得してから書類にサインし、治療を受ける慎重さが必要です。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 このような美容クリニックだけではなく、最近は保険診療をおこなっている内科、皮膚科、形成外科などでも一部自由診療として美容医療をおこなっているところが増えています。「副作用は一切ない」「定期的に受診すれば一定の効果がある」との誘い文句を信じて期待が大きい分、納得いかない結果になったときにはトラブルに発展しがちです。やはり、きちんとマイナス面も提示して、慎重を期する説明が問われていると思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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