患者相談事例-62「非常勤医師の嫌な対応を院長は謝ってくれましたが、院内で改善できないのでしょうか?」
[患者さんの相談事例] 2012/04/06[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
母を連れて婦人科を受診したところ、非常勤の医師に嫌な対応をされました。院長からの謝罪はありましたが、納得できません。(72歳・女性)
先日、101歳を迎えた母のトイレ介助をしていて、尿道付近から出血していることに気づきました。訪問診療をしてくれているドクターが「膀胱炎かもしれない」と診断し、薬を処方してくれたのですが、出血は治まりません。改めて診てもらった結果、「もしかしたら婦人科領域の症状かもしれないので、受診してみてください」と婦人科への紹介状を書いてくれました。
母は足が不自由で耳も遠いので、私(娘)が付き添って、自宅から最も近い婦人科クリニックを受診することにしました。事前にクリニックに電話をかけ、受付の人に高齢であること、足が不自由であることを伝え、了解を得てから受診したのです。
ところが、順番が来て母を伴い診察室に入ろうとすると、少し段差があって母がうまく診察室に足を踏み入れることができませんでした。その様子を見ていたドクターが「それだと、内診台で診察することは無理でしょう。どうしてそんな高齢の患者を婦人科なんかに連れてくるんですか? 100歳を過ぎているんだから、もう十分じゃないですか!!」と大声で怒鳴るように批難しました。耳が遠い母にもその声は聞こえたらしく、思わず足が竦んだようでした。私もあまりの言葉に呆然としてしまい、どうしたらいいのかわからずにいると、ナースがそっと別室に案内してくれました。そして「だいじょうぶですか? 薬のせいで出血することもあるので、当院の院長に診てもらいましょうか?」と優しく言ってくれたのです。そのナースに確認すると、怒鳴ったドクターは週に1回来ている非常勤のドクターだということでした。
ナースの配慮で別の診察室で診ていた院長の診察を受けることができました。私が「さっきの先生に、こんな高齢で婦人科を受診することを批難されたのですが、受診したことは間違いだったのでしょうか?」と聞くと、院長は「あの先生は時折感情的になることがあるんです。申し訳ありません」と謝ってくれました。しかし、時折あるということは、改善の努力をしていないということなのでしょうか。何だか、納得できない気持ちでいっぱいです。

事前にクリニックに連絡をして、高齢であること、足が不自由であることを断って礼儀を尽くしているのに、ただ高齢ということだけで診察を拒否するような言い方をされたのでは、納得いかないのも当然だと思います。ましてや、かかりつけ医の勧めがあって、紹介状を携えての受診なのに、どうしてそんなひどい言い方ができるのかと、お話をお聴きしていてもドクターの態度は理解できませんでした。きっとお母さんにもドクターの怒鳴り声は聞こえたと思いますので、何も悪いことはしていないこと、院長が謝ってくれたことを伝え、労わって差しあげてください。どんなドクターに当たるかは受診しないとわからないだけに、事前に選別できないことが難しい点だと思います。

100歳を過ぎればもう十分というのは、そのドクターの価値観かもしれませんが、それを患者側に押しつけるのはいかがなものかと思います。たとえ高齢でも、女性にとって婦人科を受診するというのは、少なからず抵抗感があるものです。高齢になればなるほど、受診すること自体に遠慮も生じると思います。そのような気持ちを汲んで対応することが不可欠です。
また、院長が謝っているように、時折トラブルを起こすドクターならば、やはり何度も起こさないように内部できちんと反省し、改善の努力をすることが先決問題だと思います。非常勤で来てもらっているという遠慮よりも、患者対応を優先していただきたいと思います。
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NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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