[患者さんの相談事例] 2012/04/20[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

娘が矯正治療が原因と思われる重度の歯周病に。矯正をすすめたのは間違っていたのでしょうか。(49歳・女性)

 現在22歳の娘は、小学校5年生から約8年間、歯の矯正治療を受けていました。上の前歯が2本出ている程度で、「これぐらいで矯正治療は必要ない」と言う歯科医もいましたが、私自身が歯にコンプレックスを持っていたこともあって、娘にはきれいな歯並びにしてやりたかったのです。そこで、引き受けてくれる歯科クリニックを見つけ、治療を受けてきました。
 4年前、夫の転勤と娘の進学が重なって、引っ越すことになりました。歯科クリニックにその旨を伝えると、治療を終了することになり、更なる治療の必要性については何も言われませんでした。
 ところが、引っ越してから1年ほど経った頃、娘が歯茎の痛みを訴えるようになったのです。徐々にものが食べられなくなって痩せてしまい、栄養失調で入院したほどです。歯周病が原因だと言われたので、近くの歯科医院を受診したのですが、「矯正治療をすると、こうなるんだよな」と吐き捨てるように言われ、治療してもらえたものの、症状は改善しませんでした。
 そこで、別の歯科医院を受診したのですが、「なぜここまで放っておいたのですか!?」と怒鳴られ、結局、歯科大学を紹介されました。歯科大学で治療を受けて約1年経った今、ようやく症状は治まってきています。
 8年間で100万円もかけて矯正治療をしてきたのに、その後にこんなことになって、やりきれない気持ちでいっぱいです。「矯正治療は必要ない」と言う歯科医もいたのに、娘に治療を強いた私が間違っていたのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 よかれと思って娘さんに受けさせた矯正治療だったのに、治療の終了後に歯周病で辛い思いをさせてしまい、母親として自分を責める気持ちでおられるのでしょう。しかし、それは結果論であって、決して選択が誤っていたという問題ではないと思います。
 ただ、どのような治療にも長所と短所があります。特に、どうしても必要とされる治療でない場合は、より慎重に「その治療を受けることによるマイナス面」は確認しておいたほうがいいでしょう。
 また、娘さんは小学生のころから矯正治療を受けていたということですが、すでに成人されています。今後は自己管理して、自分の歯を守っていくために何が必要か、よく話し合って、患者としての自立を促すことも必要だと思います。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 今件に限らず、治療を終了するにあたっては、今後の注意事項などがあれば、できるだけ丁寧に伝えていただくことが必要だと思います。
 また、歯科では「なぜこんなになるまで放っておいたんだ」と怒られた、「こんな治療を受けているから悪化したんだ」と前医を責める表現をされたという相談が少なくありません。怒鳴ったり、不信感を煽ったりするのは、やはり冷静な専門家の態度ではないと思います。どんな場合にも、真摯な態度が必要ではないでしょうか。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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