患者相談事例-68「入れたばかりの義歯が取れた際、私に原因があると決めつけた歯科医。以前から対応が真面目でなく、今後もかかり続けることに不安を感じています」
[患者さんの相談事例] 2012/06/29[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
入れたばかりの義歯が取れた際、私に原因があると決めつけた歯科医。以前から対応が真面目でなく、今後もかかり続けることに不安を感じています。(62歳・女性)
私は若いころから虫歯が多く、一生懸命歯磨きをしているのに、歯のトラブルが絶えません。2ヵ月前、ずっと治療してきた前歯について、歯科医から「もう治療でもたせるのは無理です。義歯を作りましょう」と勧められました。前歯は人目につく部分なので目立たない材質にしたいと言ったら、セラミックの一種であるジルコニアという材料を勧められました。保険が効かず、8万円もすると聞いて、「それだけ高額な費用で作る義歯なら、取れたりすることはありませんよね?」と尋ねると、「作った義歯でビール瓶の栓を開けたりしないかぎり、取れることはないよ」と馬鹿にしたような冗談で返されました。
ところが、義歯を入れた2週間後、食事中に義歯が取れてしまったのです。すぐに歯科医院を受診したのですが、歯科医は頭ごなしに「硬いものを食べるからだ」と決めつけ、まるで私が原因のような口ぶりでした。義歯が外れたときに食べていたのは、魚のフライと野菜サラダです。それを伝えても、歯科医は「そんなはずはない」とまるで受けつけてくれず、そのうえ、「取れた義歯を接着剤でつけてもいいが、またすぐに取れる可能性が高いので作り直したほうがいい」と言い出したのです。
帰宅後、落ち着いて考えてみると、8万円も払って作った義歯なのに、黙って言われるままに作り直すのはおかしいと思いました。せめて作り直す義歯は費用を免除してもらえないかと電話で歯科医に相談すると、「今回は特別に安くしてあげますよ」と恩着せがましく言われました。利便性だけがメリットでこの歯科医院にかかっていますが、これまでにも納得のいかない対応が数々ありました。今後のことを考えると不安なのですが、このままかかり続けるしかないのでしょうか。

8万円も支払って作った義歯が2週間で取れ、さらに費用を支払ってまで作り直すことに納得がいかないのは当然だと思います。しかし、別の歯科医院で作り直せば、費用は当然発生します。ですので、いまの歯科医院で責任を持って作り直してもらい、費用を交渉されたほうがいいのではないでしょうか。その結果、納得できる対応がなければ、他の医院にセカンドオピニオンを求めてみるのもいいかもしれません。歯科は矯正治療やインプラントなど高額になる自費診療も多く、トラブルが絶えません。できれば事前に契約書を交わすか、保証期間や診療明細を明確にしておくことが必要だと思います。また、そのようなことに理解を示す歯科医かどうかも、選ぶ際の基準の一つではないでしょうか。

「ビール瓶の栓を開けたりしない限り取れない」という説明はあまりにふざけています。真摯に向き合おうとしない態度や言葉づかいは患者の信頼を得られないだけでなく、専門家の態度としてもあまり褒められたものではありません。
義歯を作り直すのであれば、いくら費用がかかるのか正確な金額も示し、費用負担についてもきちんと説明すべきだと思います。治療は患者と医療者の信頼関係のうえに成り立つものです。まずは患者と向き合う真摯な姿勢が問われると思います。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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