患者相談事例-70「総合病院への転院を考えています。かかりつけ医に紹介状を頼むのは失礼にあたらないでしょうか?」
[患者さんの相談事例] 2012/07/27[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
総合病院への転院を考えています。かかりつけ医に紹介状を頼むのは失礼にあたらないでしょうか?(85歳・女性)
20年ほど前、脈が1分間に120も打つようになり、かかりつけ医から循環器の専門病院を紹介されました。専門病院で検査をした結果、頻脈性不整脈であることがわかり、手術で植込み型除細動器という器械を入れました。その後は、1年に一度、専門病院で定期検査を受けながら、日常的には元のかかりつけ医に診てもらっています。
最近、年齢とともに、心臓以外にも具合の悪い部分が増え、整形外科、眼科、皮膚科など複数の科にかかっています。それぞれ別々の病院やクリニックにかかっているのですが、このところ通院が負担になってきました。幸い、心臓は落ち着いているので、すべての科がある総合病院に転院したいと考えています。
しかしそうなると、かかりつけ医や循環器の専門病院に紹介状を書いてもらったり、検査データを出してもらったしなければなりませんが、そのような勝手なことをお願いしてもいいものでしょうか。長年お世話になりながら、別の病院に行きたいと申し出るのは失礼な気がするのですが、いかがなものでしょう。

たしかに、科によって異なる医療機関にかかっていると、通院だけでも負担が大きいことと思います。患者さんが受けたい医療機関を選ぶことは可能ですので、遠慮せず紹介状や検査データの貸し出しなどを頼んでみてください。ただ、最近は医療機関の役割分担が進み、大きな総合病院は急性期病院と呼ばれて、専門的・積極的な治療をする患者さんを主に対象にするようになっています。そのため、症状が落ち着いている患者さんは、診療所や小規模の病院にかかることを推奨されます。いま症状が落ち着いているとすれば、地域で内科、整形外科、眼科、皮膚科がある病院のなかで、比較的小規模な病院を探されたほうが受け入れてもらいやすいかもしれません。かかりつけ医とも、どの病院がふさわしいか、よく相談なさってみてはいかがでしょうか。

電話相談をお聴きしていると、最近の患者さんの傾向として、二極化していることを感じます。権利の主張や要求をする患者が増えたとよく言われる一方で、この方のようにとても遠慮したり、我慢したりしている患者さんもまだまだ多いのが現状です。
とくに、最近の医療機関の機能分化は患者にとってわかりにくいものです。「大きな病院にかかるときは紹介状を持ってきてください」ということ一つをとっても、それがなぜなのか、十分に説明されているケースは少ないのではないでしょうか。それぞれの医療機関がどのような役割を担っているのか、わかりやすく患者に伝える姿勢が改めて必要とされていると思います。
※写真はイメージです
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
- この記事を読んだ人は他にこんな記事も読んでいます。
記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。