患者相談事例-71「美容整形を行ったところ、効果を感じられず、術後の痛みも治まらない。治療費を返してもらうことはできるでしょうか」
[患者さんの相談事例] 2012/08/09[木]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
美容整形を行ったところ、効果を感じられず、術後の痛みも治まらない。治療費を返してもらうことはできるでしょうか。(38歳・女性)
私は若いころから下半身が太く、コンプレックスを持っていました。最近、ようやく収入も安定してきたので、雑誌に紹介されていた美容整形クリニックで脂肪溶解の治療を受けてみたくなりました。雑誌には「脂肪を溶解すれば、スリムな足に生まれ変わる」と書いてあったのですが、費用には触れられていませんでした。そこで、まずはクリニックを訪ねて説明を聞いてみることにしました。
クリニックでは、まず足の脂肪のつき具合について確認があり、脂肪溶解の費用として400万円を提示されました。いくら収入が安定してきたといっても、400万円はあまりにも高額です。私が「そこまで高額だと思っていなかったので、今日は帰ります」と言うと、「400万円が高くて決心がつかないのなら、もう少し安い方法もありますよ」といろいろな治療方法を提示されました。何とかコンプレックスから逃れたかった私は、結局、150万円の治療を選択し、100万円と50万円の2回に分割して費用を支払う契約をしました。
実際に治療を受けることになり、膝の内側とお尻に脂肪を溶解する注射が打たれました。注射を打っているときに、ピリピリとした痛みが走ったのですが、美容整形の医師から「一時的な痛みですよ」と言われたので、そんなものかと思っていました。しかし、痛みはずっと続き、1か月経ったいまも痛むのです。クリニックに何度も電話をかけたのですが、「医師は全国に数か所あるクリニックを飛び回っているので、今日はこちらにおりません」と、医師がつかまりません。そのうえ、脂肪は一向に溶解する気配がなく、何の効果も感じられないのです。
すでに1回目の100万円の支払いは済ませているのですが、残りの50万円を支払う気持ちはありません。最初に払った100万円も返してもらわないと気が済みませんし、痛みが残っていることを考えると賠償してもらいたいぐらいです。どのように交渉すればいいのでしょうか。

経済的に余裕ができてきたので、若いときには考えられなかった高額な治療も受けてみたくなったのでしょう。それに、雑誌にはいかに治療効果があるか強調して掲載されているので、魅力的に思えてしまったのだと思います。しかし私たちCOMLへの電話相談の中で、美容整形にまつわるものは、決して少なくありません。気軽な気持ちで治療を受け、つらい思いに陥っている方のお話を聞いていると、やはり美容整形を受ける際には慎重を期さないといけないことを痛感します。
また、費用に関しても、相手が非を認めなければ交渉は成立しないので、直接交渉が可能とは限りません。弁護士に依頼することもできますが、そこにも費用が生じることは覚悟しなければなりません。
まずは、残っている痛みが放置していて大丈夫なものか、別の医療機関で診てもらうことが必要ではないでしょうか。

最近、気軽にプチ整形や美容整形を受ける方が増えてきました。病気やケガを治すのではなく“美”を求めるわけですから、一般の医療とは目的自体も違ってきます。しかし、やはり最低限、期待できる効果のほどや起こり得る合併症などについては、事前の説明が必要ではないでしょうか。
保険診療をおこなっている皮膚科や形成外科、内科クリニックなどでも、自費による美容関係の治療をしているところがあります。患者からみると、保険診療と自費診療の違いはわかりにくいので、よりきちんとした説明が求められると思います。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
- この記事を読んだ人は他にこんな記事も読んでいます。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。