患者相談事例-72「相性の悪さを感じ、診察を受けなかったのに、医療費を請求されていました。納得できません」
[患者さんの相談事例] 2012/08/24[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
相性の悪さを感じ、診察を受けなかったのに、医療費を請求されていました。納得できません。(48歳・女性)
私は以前から虫歯に悩んでいたのですが、それを知った知人が「従兄にあたる歯科医がいるので、紹介してあげようか」と言ってくれました。そこで、一度受診することになり、その歯科医院に行ってみました。
知人の紹介だと言うと、受付のところまで歯科医が出てきました。しかし、一見して私とは相性が合わないだろうと感じました。そこで、「私の性格やタイプを考えると、先生とは合わないと思います。せっかく紹介してもらいましたが、受診するのはとりやめます」と申し出ました。一応、最初に保険証を提出していたのですが、歯科医から「わかりました。もちろん、費用は発生しませんので、このまま帰ってください」と言われ、保険証を返してもらって帰宅しました。
ところが、数ヵ月後に国民健康保険の担当課から「医療費のお知らせ」が届き、その歯科医院から国民健康保険に医療費の請求があったとわかったのです。驚いて国民健康保険の担当課に連絡すると、「きちんとしたレセプトで請求されていたので、こちらとしては治療がおこなわれたと判断しています。何の根拠もなく請求が不適切と歯科医院に言うことはできません」と回答がありました。
仕方なく、紹介してくれた知人に不信感を訴えると、翌日電話で「私から歯科医院に確認したが、診察室で診察しようとしたところ、あなたが口を開けようとせず拒否して帰ったそうですね。診察室に入ったのなら、基本的な費用は発生しますよ」と言われました。私は診察室になど入っていませんし、受付付近で歯科医と二言三言言葉を交わしただけです。それなのに診察室に入って診察したことにするなんて、納得いかないのですが。

たしかに、受付付近で歯科医と言葉を交わし、相性が合わないと判断して帰宅されたのですから、診察を受けたことにはならないと思います。保険証を提出したことによって受付でカルテが作成されてしまい、何かの手違いで診察をしたことになっていた可能性がありますから、一度、その歯科医院にご自身で問い合わせてみられてはいかがでしょうか。そのときの回答次第で、今後の対応策を考えることもできます。

患者と医療機関の間で何かトラブルが生じた際に、患者側には医療費の請求はなかったけれど、後日保険者には請求されていることがわかって不信感が芽生えたという相談が少なからず届きます。まして、この方の場合、診察室に入らず、口腔内の確認はおろか、症状も伝えていなかったそうです。それが治療行為というのは、患者さんが納得しないのも当然ではないでしょうか。正々堂々と請求内容が説明できるような透明性が求められていると思います。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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