[患者さんの相談事例] 2012/09/07[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

領収書の明細や、処方された薬の情報提供がないクリニックは、行政の指導対象にはならないのですか?
(63歳・男性)

 2週間ほど前から目やにが増え、異物が入っているのかと思うぐらい目にゴロゴロした感じがするようになりました。日ごとに症状は悪化して、1週間後には目が真っ赤になり、まぶたが開かなくなってしまいました。そこで、近くにある眼科クリニックを受診しました。
 そのクリニックには初めて行ったのですが、なかに入ると外観よりも古くて、少し戸惑いました。ドクターは私の眼を診察し、「結膜炎です」と言っただけで、それ以上の詳しい説明はありませんでした。その後、私に背を向けてカルテの記載を始めてしまったので、とても質問できる雰囲気ではありませんでしたが、「あの……」とおずおずと声をかけると、「もう終わり。点眼薬を出しておくから。よくなったら、もう来なくていいよ」とぶっきらぼうに言われ、仕方なく診察室を後にしました。
 受付の職員も愛想のない印象を受けました。医療費を支払うと、領収書を渡されたのですが、私の名前も記載されていないし、合計金額が記されているだけで明細もわかりません。これでは、スーパーのレシートのほうがまだ情報量は多いと思いました。
 そのクリニックは院内処方で、点眼薬は2種類処方されました。しかし、点眼薬には薬の名前が貼ってあるだけで、ほかに情報がわかるようなものは何もありません。「お薬手帳を持っているので、何か点眼薬の情報がわかるものをもらえませんか?」と聞いたのですが、「こちらでは用意していません」と言われ、とりつく島もない雰囲気でした。こんなに説明や情報提供をしないクリニックって、許されるものなのでしょうか。私は二度と受診するつもりはありませんが、もし何か行政からの指導対象になるのであれば苦情を伝えたいのですが。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 たしかに、この眼科クリニックのドクターの説明の内容や姿勢は不十分だと思います。薬の情報提供がないことや明細のない簡易領収書も、時代の流れに逆行しているように思われました。
 ただ、そのことに対して指導する機関があるかというと、残念ながら「ない」のが現状なのです。クリニックなので、明細書を発行する体制を整えていれば再診料に「明細書発行体制等加算1点」が加算されます。また、院内処方で文書などによる情報提供を受ければ、「薬剤情報提供料10点」が請求されます。このように、情報提供の努力をすれば料金化できることになっています。今回、相談者がかかった眼科クリニックでは、その努力をしていないので、費用が入らないというデメリットはありますが、それ以外に罰則や指導されることはないのです。
 それだけに、継続して受診するかどうかを患者が選び、意思表示するしかありません。
 また、ドクターの印象や医療機関の雰囲気は、実際に受診してみないとわかりません。まして、小さなクリニックの場合は、様子を見てから判断しようと思っても、一度足を踏み入れると帰りにくい雰囲気があると思います。初めて受診するときは、近所の人などの“口コミ”を参考にすることも一つの方法です。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 最近、大きな医療機関では“接遇”に力を入れ、患者対応の改善に努めるようになってきました。しかし、クリニックなどの小さな医療機関の場合、開設者の意識によって患者対応のあり方や情報提供などには大きな違いが生じます。やはり、できるだけ前向きな取り組みがどのような医療機関でもおこなわれることを患者として望みたいと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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