[患者さんの相談事例] 2012/10/05[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

薬局で『ジェネリック変更不可』の処方せんを出したところ、薬剤師にまるで咎めるような口調で理由を問われたのですが…。(57歳・女性)

 私は3年前に緑内障と診断され、近くの眼科クリニックに通院しています。数種類の点眼薬がいつも処方されるのですが、先日、ドクターから「あなたの点眼薬にはジェネリック(後発医薬品)がありますよ。保険薬局でジェネリックが調剤されるような処方せんにしておきましょうか?」と言われました。私は以前、内科で出されたジェネリックが体質上合わなかった経験があるので、あまり使いたくありません。そのことをドクターに伝えると、「わかりました。それでは、処方せんの『ジェネリックに変更不可』という項目にサインと押印しておきましょう」と快く言ってくださいました。
 ところが、その処方せんを持って眼科クリニックの隣にある保険薬局に行ったところ、「ジェネリックへの変更不可になっていますが、どうしてですか?」といきなり詰問口調で言われました。その言い方にカチンとした私は薬剤師に理由を説明する気分ではなくなり、「ジェネリックはあまり使いたくないので……」と曖昧な返事をしました。すると、「いまは医療費を抑えるために、できるだけジェネリックを使う時代なんですよ」と言うのです。まるで私が時代遅れの患者だと言われているようで、とても気分が悪くなってしまいました。私が間違っているのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 たしかに、新薬(先発医薬品)にするか、ジェネリックにするか、選ぶのは患者さんです。明確な意思をお持ちなのですから、それをきちんと伝えることはとても大切なことです。だからこそ、眼科ドクターも処方せんの「ジェネリックへの変更不可」にわざわざサイン・押印してくれたのでしょう。
 また、患者さんの多くは、診療所や病院で出された処方せんは、その医療機関のそばにある保険薬局に提出するものだと思いがちです。しかし、保険薬局も患者が選べるのです。むしろ、“かかりつけ薬局”といって、自分が選んだ1ヵ所の薬局に複数の医療機関から出された処方せんを持っていくことに意味があります。なぜなら、保険薬局の大切な役割に“薬剤服用歴管理”があり、患者さんがどのような薬を使用してきたか、いままでどんな薬で副作用やアレルギーが出たのかなど、その患者さんの薬にまつわる履歴を記録しているのです。そして、他の医療機関と重複していたり、過去に副作用やアレルギーが生じた薬が処方されていたりすると、薬剤師は“疑義照会”といって、処方したドクターに問い合わせることが義務づけられています。
 この機会に、あなたの納得できる“かかりつけ薬局”を探して、ご自分の薬の考えをしっかり伝えたうえで利用してみてはいかがでしょうか。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 今年4月の調剤報酬の改定で、直近3ヵ月の調剤のうち、一定の割合を超えてジェネリックを調剤していると、調剤基本料に加算が認められるようになりました。そのため、どうしても保険薬局ではジェネリックの調剤割合を増やそうという取り組みになりがちです。今回の薬剤師も、その“任務”を担っての発言だったのでしょうか。しかし、勧めるとしても、やはり言い方があると思います。“上から目線”の物言いをせず、もう少し患者の思いに耳を傾ける態度が必要ではないでしょうか。
 まだまだ患者には保険薬局の役割や調剤報酬の内容などが理解されていません。もっと患者に薬剤師の役割を説明し、薬のことなら何でも相談できる身近な存在になっていただきたいと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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