[患者さんの相談事例] 2012/10/19[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

診療時間内にかかったのに診療明細書に『時間外対応加算』がされていたのはどうして?(63歳・女性)

 私は、高血圧で近くの内科クリニックを定期的に受診しています。最近は血圧も安定しているので、月1回程度の受診です。
 先日、受診を終えて会計で支払いを済ませた際、領収書とともに診療明細書を渡されました。2年前から渡されていることには気づいていたのですが、見ても難しい用語が並んでいるだけなので、いつも捨てていました。ところが今回、帰宅後に何気なく診療明細書を見ると、時間外の加算が請求されていたのです。その日、私がクリニックの受付をしたのは午前10時過ぎで、会計を済ませたのが午前11時ごろですから、時間外ではありません。
 そこでクリニックに電話をかけ、「午前診の時間帯に受診したのに、間違って時間外の加算が請求されていますよ」と伝えました。すると、「この点数は初診でも再診でも自動的に請求できる点数なので、間違いではありません」と言うのです。そんな加算が自動的に請求できるなんて、おかしくありませんか?
 さらに詳しく見てみると、診療明細書の発行にも加算がなされているようでした。頼んでもいないのに診療明細書を渡されて料金を請求されているなんて、とても納得できません。これはお断りすれば、請求から外してもらえるものなのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 今回請求されていた時間外の加算というのは、クリニックの診療時間外に受診した際に請求される「時間外加算」ではなく、「時間外対応加算」のことだと思います。2012年3月までは「地域医療貢献加算」という点数でした。2012年4月の診療報酬改定で「時間外対応加算」という名称に変わり、点数も3段階に分かれたのですが、“時間外加算”と混同する方が少なくありません。
 時間外対応加算というのは、診療時間外に患者からの相談に対応する体制を整えている場合に請求できる点数です。夜中でも常時対応できるような体制を取っていれば「時間外対応加算1」として5点、夜間は22時まで電話の問い合わせに対応できる場合は「時間外対応加算2」として3点、3ヵ所以内の診療所が連携して当番制で問い合わせに対応する体制の場合は「時間外対応加算3」として1点が再診料に加算できます。
 この点数は、実際に時間外に問い合わせをしたか否かに関係なく、体制を整えている診療所であれば再診の患者すべてに請求できます。ただし、初診には加算されません。
 これと同様に、「明細書発行体制等加算 1点」も診療所の再診の際に認められている加算で、診療明細書を発行する体制を整えていれば、発行の有無に関係なく請求できることになっています。ですから、診療明細書の発行を断っても、請求はされるのです。医療費の項目名はわかりにくいものも多いのですが、領収証や診療明細書に関心を持つことで、わからない項目は質問し、少しずつ理解を深めることが大切だと思います。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 医療費にまつわるご相談をお聴きしていて、よく感じるのは、医療費について質問されたときの医療機関の説明の不十分さです。「間違いない」「請求可能」と結論はおっしゃるのですが、それがなぜなのか「理由」や「根拠」がわかりやすく説明されていないのです。この方の場合も、「自動的に請求できる」などという表現は、まったく説明になっていません。時間外加算と時間外対応加算の違いを明確に伝えなければ、患者の理解や納得は得られないのです。
 さらに、「初診でも再診でも請求可」と誤った説明もなされていました。最近は、COMLに届く相談も1割強が医療費の相談。患者側のコスト意識は高まっています。事務スタッフもわかりやすく説明する態度が問われてくると思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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