患者相談事例-77「予防接種後に腕が腫れあがり、症状を訴えましたが、医師の不誠実な対応に納得がいきません」
[患者さんの相談事例] 2012/11/02[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
予防接種後に腕が腫れあがり、症状を訴えましたが、医師の不誠実な対応に納得がいきません。(71歳・女性)
先日、いつも高血圧でかかっている近所のクリニックで、肺炎球菌の予防接種を受けました。クリニックで注射を打ってくれたのは看護師だったのですが、その日の夜から注射を打った左腕が腫れ始め、夜中には寝返りも打てないほど痛みがひどくなってしまいました。
翌朝、診療開始時間にクリニックに行き、症状を伝えました。今後もお世話になるかかりつけ医なので、できるだけ穏やかに言ったつもりです。しかし、それが逆にあだになってしまったのか、院長は淡々と症状に耳を傾けるだけで、一切謝罪の言葉もありませんでした。そして、「痛み止めを出しますから、痛いときに飲んでください。薬がなくなれば、また来てもらっていいですよ。ただ、有効な治療方法があるわけではないので、しばらく様子をみるしかありません」と簡単に診察を切りあげられてしまいました。診察の間中、私に注射をした看護師はそばにいたのですが、悪びれる様子もなければ、心配の言葉もありませんでした。
その後、10日ほど経ちますが、一向に痛みが治まる気配がありません。痛み止めの薬を飲んでも、痛みが軽減しないのです。私は左利きなので、日常生活にかなり支障をきたしています。せめて、注射前に利き腕を確認し、反対側の腕に注射してくれていたら、と悔やまれてなりません。
私は5年前に夫を亡くして以来、息子たちに迷惑をかけたくない一心で、食事に気をつけ、適度に運動もして、健康的な生活を心がけてきました。それなのに、なぜ予防接種で日常生活に悪影響を及ぼすような結果にならないといけないのか、情けない気持ちでいっぱいです。今後、かかりつけ医として通い続けることを考えると、事を荒立てるわけにもいきません。いったいどうすればいいのでしょうか。

病気で日常生活に支障をきたすのならまだ諦めがつくかもしれませんが、予防接種の注射によって利き腕が使いにくくなるというのは、ほんとうにお気の毒です。それに、症状を訴えたときのドクターやナースの無責任な態度にご立腹なさるのも当然だと思います。せめて、心配し、今後のことについて親身に相談に乗る姿勢ぐらいは見せてほしいものです。たしかに、今後の関係性を考えれば、事を荒立てたくないというお気持ちもわかります。しかし、少なくともどれぐらいの期間様子を見るのか、その期間が過ぎても痛みが継続している場合はどうするのか、別の医療機関や診療科に紹介してもらうことは可能なのか、といったことは確認しておかれてはいかがでしょうか。痛み止めがあまり効かないことも率直にお伝えになったほうがいいでしょう。そのクリニックに最低限、どのようなことを求めるのかを考えることは大切だと思います。

注射や採血の際、神経が傷ついたなどのご相談は、少なからず届きます。もちろん、故意に傷つけたわけでもなければ、予想がつかないことだとも思います。しかし、患者にとっては非常に苦痛を伴うマイナス事象が起きているだけに、「仕方ない」と済まされるだけでは、やはり納得いかない気持ちになるのは当然だと思います。
すべての責任を負わないまでも、患者が辛い状況に陥っていることに違いはないので、親身に耳を傾け、一生懸命対応する姿勢を見せることは不可欠ではないでしょうか。そのような姿勢が患者に伝わってこそ、患者も医療の不確実性や限界を受け入れる気持ちになれるのだと思います。やはり、どんな場合でも真摯な姿勢が大切だと思います。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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