患者相談事例-78「意思確認が難しい状態のはずの父から、差額ベッド料の同意書にサインをもらったと言うのですが…」
[患者さんの相談事例] 2012/11/16[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
意思確認が難しいはずの状態の父から、差額ベッド料の同意書にサインをもらったと言うのですが…。(48歳・男性)
半年前、81歳の父親に肺がんが見つかりました。そのときはすでに末期の状態で、手術も抗がん剤治療も受けず、対症療法をしながら穏やかに過ごすことを選択しました。
3ヵ月前、脳に転移していることがわかり、症状の緩和のために入院しました。当初は1ヵ月足らずで退院の予定だったのですが、脳浮腫が見つかり、退院が延期になりました。そして脳転移の影響なのか、脳浮腫が原因なのかはっきりしなかったのですが、父が夜中に大きな声を出すということで、4人部屋から個室に移されました。しかし、移ったあと、その個室は1日15,000円の差額ベッド料が必要とわかったのです。
私なりに調べたところ、差額ベッド料を支払う条件として、同意書の提出が必要だとわかりました。私たち家族は同意書にサインした覚えがまったくなかったので、病棟看護師長にその旨問い合わせてみました。すると、「お父さんご本人からサインをいただいて、同意書は提出してもらっています」と言います。父は終始朦朧とした状態なのに、同意書のサインができるとは思えません。そんないい加減な同意書で費用請求されることは納得がいかないのですが。

差額ベッド料とは基本的に、特別な療養環境で入院生活を送りたいと望む人が差額ベッド料の設定された病室を選び、同意書にサインして提出したうえで入院するものです。この差額ベッド料には一定のルールがあり、同意書の提出がない場合や、治療上の必要で入室した場合は、病院側は請求してはならないとされています。しかし、「空きベッドがない」「患者さん自身が感染症で他の患者にうつす可能性がある」「大声を出したり、いびきがうるさかったりと、ほかの患者に迷惑が及ぶ」といった場合は、同意書の提出があれば、「差額ベッド料の支払いの契約をした」ことになってしまうのです。今回のケースでは、大きな声を出すということが個室に移った理由ならば、同意書の提出があれば支払う必要性が出てきます。提出された同意書は、必要に応じて医療機関が提示することになっていますので、一度どのような同意書が出されているのか確認されてはいかがでしょうか。そのうえで、同意書の有効性について、病院側と話し合われてみてはどうかと思います。

差額ベッド料を巡っては、事前に詳細な説明がなく、手続きにおいて不明確な部分があるとトラブルに発展しがちです。ましてや、意識状態の悪い患者のサインによる同意書があると言われれば、家族が不審に思うのも当然だと思います。
とくに差額ベッド料は自費で経済的な負担が重くなりがちです。事前のきちんとした説明と、ルールに則った請求が病院の信用につながるのではないかと思います。
※写真はイメージです
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NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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