[患者さんの相談事例] 2013/01/11[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

セカンドオピニオン外来を受診したのですが、紹介状や検査データが必要と断られてしまいました。(42歳・男性)

 72歳の母が胸のしこりに気づき、近くの市民病院を受診しました。マンモグラフィ(乳房のX線撮影)やエコー(超音波)、マンモトーム(組織を採取しての病理検査)などの検査を受けた結果、乳がんと診断されました。その結果、がんは乳房だけでなく、腋の下のリンパ節に転移している可能性が高いと言われました。
 市民病院ではすぐに手術の予定を入れることができたのですが、家族内で「市民病院より、がんの専門病院で治療を受けたほうがいいのではないか」という意見が出ました。私は、会社の同僚の妻が乳がんになり、そのときセカンドオピニオンを求めたと話していたことを思い出しました。すぐにインターネットで調べたところ、地域のがん診療連携拠点病院にセカンドオピニオン外来があると知りました。そこで早速、母と一緒にその病院のセカンドオピニオン外来を訪ねたのです。
 病院でセカンドオピニオンを受けに来たと伝えると、地域医療連携室という部署の窓口に回されました。なぜ外来ではないのかと怪訝に思いながらも行ってみると、紹介状や検査データの提出を求められました。持参していないことを伝えると、それではセカンドオピニオン外来で対応できないと言います。私は納得がいかず、窓口で担当者に苦情を伝えました。
 すると、乳がんのセカンドオピニオン外来を担当しているドクターが呼ばれ、「紹介状と検査データを持ってきてもらわないと、意見をお伝えできないんですよ」と同じことを繰り返します。横でやりとりを聞いていた母が遠慮して、「私はもうセカンドオピニオンなんて結構です。市民病院で手術日も決まっているので、そちらで治療を受けますから」と言ってしまいました。そのドクターは、「困りますよねぇ。セカンドオピニオンを受けたいかどうかさえ、ご家族で意見がまとまっていない状況で来られても」と言い捨てて、部屋から出て行ってしまいました。
 その後、数日経ってインターネットでいろいろ検索しているうちに、セカンドオピニオン外来の乳がん担当をしているというドクターのブログを見つけました。何気なくそのブログを読んでいると、「セカンドオピニオン外来のシステムすら知らずにやってきて文句を言う困った患者・家族がいる」というような内容のことが書いてあるのです。これは、きっと私たちのことに違いありません。こんなことを書かれるなんてプライバシーの侵害です。ブログの記載を削除するように求めたいのですが、どう言えばいいのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 “セカンドオピニオン”と聞くと、別の専門医から診察や検査を受けて意見を聞くこと、あるいは転院目的で意見を聞くことと思う方もいらっしゃると思います。しかし、多くのセカンドオピニオン外来は、実際に診察や検査はせず、紹介状と検査データを元に意見を言ったり、その内容を文書にまとめたりするシステムをとっています。そして、一般的に費用は健康保険が適用されず、保険外の実費(費用は医療機関によって自由に定められる)を請求されます。
 ホームページでセカンドオピニオン外来の紹介をしている医療機関では、システムや費用にも触れていることが多いので、あらかじめ確認することが大切だと思います。もちろん、事前に電話で問い合わせてもいいでしょう。
 また、最初に受診、診察を受けた医療機関に「セカンドオピニオンのための紹介状を書いてほしい」と頼むと、紹介状に検査データを添えて出してくれます。そのときの費用は、健康保険が適用され、「診療情報提供料II 500点」(1点=10円)です。通常の紹介状は「診療情報提供料I 250点」ですから、倍の点数が定められていることになります。
 それから、ブログの件ですが、患者を特定できる内容でなければ削除までは求めることはできないと思います(実際に、今回のケースでは一般論として書かれていたようです)。もし、文章の表現上、感情を害したり、納得いかない点があったりすれば、それを具体的に伝えてみてはどうでしょうか。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 医療機関からすれば、セカンドオピニオン外来を利用するなら紹介状と検査データを持参することは当たり前のことと思われるでしょう。しかし、セカンドオピニオンの必要性に直面したことがない人にとっては、やはり初めての出来事。理解していなくても当然です。
 なかには、自分の思い通りにいかないと感情的に怒りだしたり、引き下がらなかったりする患者・家族もいると思いますが、誠実に説明をして理解を求めていくことが大切だと思います。
 また、最近はブログやフェイスブック、ツイッターなど、誰でも見ることができて、情報共有できる手段が増えています。それだけに、その内容を巡ってのトラブルも絶えません。たとえ個人を特定していなくても、患者・家族についての表現には十分配慮することが大切だと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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