患者相談事例-82「手術中のトラブルで右目を失明。半年経っても回復せず、後は角膜移植しかないと言われ戸惑っています」
[患者さんの相談事例] 2013/01/25[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
手術中のトラブルで右目を失明。半年経っても回復せず、後は角膜移植しかないと言われ戸惑っています。(71歳・女性)
私は数年前に白内障と診断され、通院していた眼科クリニックで半年前、左右2回に分けて両目の手術を受けました。そのクリニックでは、白内障の日帰り手術を手がけています。最初の左目の手術は無事終わったのですが、2回目の右目の手術中、突然目に激痛が走り、同時にドクターがスタッフに「その液体は捨てろ!」と慌てた様子で怒鳴る声が聞こえました。いったい何が起きたのだろうと不安だったのですが、その日は何の説明もありませんでした。
翌日、手術を受けた右目の眼帯を取ったところ、まったく視力がなくなっていました。経過を確認してもらうために受診する予定だったので、受診してドクターに見えないことを伝えると、「少しトラブルがあったんです」とだけ言われました。
私の話を聞いた娘が心配し、数日後、一緒にクリニックに行ってくれました。詳しい説明を求めると、誤って使用すべきではない薬剤を目に入れてしまったことがわかりました。ドクターは「ミスなので、責任を持って今後の経過を診ていきます」と約束してくれたのですが、半年経っても視力は一向に回復せず「もう、手立てはありません」と言い出しました。そして、「このままでは見えるようにならないので、角膜移植するしかありません。希望されるなら、移植ができる病院を紹介しますから、10日以内に結論を出してください」と言うのです。角膜移植は亡くなられた方の提供を受けると聞いて、驚いてしまいました。そんな大変な問題を10日以内に考えろと言われても、何をどう考えればいいのかわかりません。

使用すべきではない薬剤を誤って入れてしまったなんて聞かされて、さぞかし驚かれたことと思います。さらに、角膜移植が必要と聞かされれば、動揺されるのも当然です。まずは、いったい何の薬剤を誤って入れたのか、それによって目がどのような状態になっているのか、角膜移植をせずに放置すればどうなるのか、など詳しい情報を求めてみてはいかがでしょうか。移植を受けるかどうかを判断する前に、まず起きている状況を理解することが大切だと思います。そのうえで、今後の治療方法について冷静に考えてはいかがでしょう。

手術直後の患者さんの状態によっては、本人に誤注入の説明をできない場合があるかもしれませんが、せめて家族を呼んで起きた事実は伝えるべきだと思います。患者側から説明を求められて、初めてミスの事実や目の状態を伝えるというのは、患者側の不信感につながるだけです。ミスがあったならば誠実に認め、きちんと積極的に説明して誠意を示すのが医療機関のあるべき姿だと思います。
また、結果的に角膜移植しか方法がないにしても、もう少し丁寧に現状や治療方法の選択肢について説明する姿勢が求められるのではないでしょうか。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
- この記事を読んだ人は他にこんな記事も読んでいます。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。