[患者さんの相談事例] 2013/02/15[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

お薬手帳の発行が必須になったのはどうして?(65歳・男性)

 私は50代のころから血圧が高いと言われていたのですが、3年前から降圧剤を服用しないと血圧を一定に保てなくなってきました。そのため、近くのクリニックに通院しています。2年前まで、降圧剤は院内処方されていたのですが、クリニックの近くに調剤薬局ができ、院長から「今後は院外処方にしますので、処方せんを発行することになりました」と言われました。
 処方せんが出されるようになって初めて調剤薬局に行ったとき、「これからは、薬局に来られるときに、このお薬手帳を持参してください」と手帳を差し出されました。何のためかと聞くと、この手帳に、処方された薬の情報が書かれたシールを貼ると言います。また、それは薬剤情報提供料という費用も発生するとのことでした。私はもうずっと同じ薬を飲んでいるので、毎回同じ情報はいらないと伝え、お薬手帳は断りました。
 ところが昨年の4月以降、「お薬手帳は必ず持っていただくことになったので、お願いします」と渡されました。理由を尋ねても、「そういう決まりになったのです」と要領を得ません。ずっと疑問に思っているのですが、どういうことなんでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 2012年3月まで、お薬手帳に記載される情報(シールも含めて)は「薬剤情報提供料」として、毎回15点(1点=10円)が請求されていました。ところが同年4月の調剤報酬の改定でこの薬剤情報提供料が廃止されたのです。代わりに、「薬剤服用歴管理指導料」という点数が30点から41点に引き上げられ、その請求条件にお薬手帳への情報提供が移行しました。
 薬剤服用歴管理とは薬局の果たす重要な役割で、患者がどのような薬を服用してきたかや、アレルギーや副作用歴など、患者の薬にまつわる履歴を記録することです。患者が安全に薬を使用できるように薬剤師がそれらをチェックし、別の医療機関と重複した薬が処方されていないか、過去に副作用やアレルギーが生じた薬が出されていないかと目を光らせているわけです。
 処方内容に疑問を覚えたときは、“疑義照会”といって、薬を処方したドクターに問い合わせることが薬剤師の義務でもあります。そのような薬剤師の役割をしっかり果たしてもらうためにも、かかりつけ薬局を持ったり、複数の調剤薬局を利用していてもお薬手帳を1冊にまとめたりすることで、安全な薬の使用につなげていくことが大切です。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 2012年4月の調剤報酬改定でお薬手帳への薬剤情報提供が薬剤服用歴管理指導料の算定要件になったとき、薬局薬剤師の重要な役割の理解が進むと期待していました。しかし、実際にはこの相談者と同様にお薬手帳を持参することが義務になったとか、決まりになったといった説明に終始する薬局が多く、がっかりしました。
 現在、病院薬剤師はチーム医療の一員として患者の前に“見える存在”になってきています。しかし、薬局薬剤師の役割はいまだ患者側に理解されているとは言えないのが現状です。“街の薬の相談窓口”として患者が頼りにするためにも、まずはどのような役割を担っているのか、説明することが第一歩ではないでしょうか。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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