[患者さんの相談事例] 2013/03/01[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

義父が4ヶ月も前に受けたCTの記録から肺がんが発覚。検査直後にわからなかったのかと不信感でいっぱいです。(52歳・女性)

 同居している84歳の義父は胃腸が弱く、近くの小さな病院にずっとかかっています。
 2年前、義父は血痰が出たと不安を訴え、かかりつけの病院で胸部X線検査を受けました。その結果、とくに異常はないとのことで、それ以上の検査はありませんでした。ところが、1年後にまた義父は血痰が出たと言い、心配し始めました。2ヵ月に一度の定期受診の際、ドクターにそのことを伝えると、胸部X線に加えて胸部CT検査もおこなわれました。そして、ドクターから「問題があればすぐに連絡するけれど、とくに異常がなければ、検査結果は次回(2ヵ月後)の受診のときに伝えます」と言われました。検査から数日経っても何の連絡もなかったので、義父とは「検査結果に異常がなかったようで、よかったですね」と話していました。
 検査から二ヶ月後の診察の際、何かの手違いがあったのか、前回受けた胸部X線とCT検査のフィルムを見せられることはなく、ドクターも検査について何も触れられませんでした。いったん安心したせいか、私もすっかり検査のことは頭にありませんでした。
 ところが更にその2ヵ月後、診察室に入っていくとドクターがCTフィルムを見ていて、「がんが写っている」とポツリと言うのです。何と、肺に9センチのがんがあるとのことでした。ドクターは「心臓のちょうど裏側なので、最初のX線のときにはわからなかった」と言いますが、CTを撮ってからすでに4ヵ月が経過しています。私が「検査の直後にCTフィルムを確認してもらえなかったのでしょうか」と聞くと、それには答えず「いまの状態を詳しく検査する必要があるので、とりあえず入院しましょう」と話をすり替えるように言われました。私は不信感でいっぱいになり、「夫と相談して出直します」と伝え、義父に付き添って帰宅しました。義父はとても神経の細い人なので、「がんが写っている」と言われてから、がっくり肩を落としたままで、話しかけても答えようとしません。
 その後、夫とも話し合い、その病院にはかかりたくないということで意見が一致しました。4ヵ月前に9センチのがんということであれば、いまはもっと進行しているのではないかと思います。義父の年齢を考えると、手術や抗がん剤などのからだに負担がかかる治療には抵抗があるのですが、どうすればいいのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 検査結果に異常があれば連絡すると言いながら、検査から4ヵ月後にフィルムの確認をしたとわかれば、不信感を抱いても当然だと思います。その病院の対応に納得がいかず、信用できないから別の医療機関にかかりたいというご希望はごもっともだと思いました。
 84歳という年齢を考えると、息子さん夫婦としては積極的な治療は考えたくないとのことですが、やはりご本人の意向を確認することが大切です。また、ご本人の判断のためにも、現在どのような病状なのか、どのような治療の選択肢があるのかを確認することがまずは必要ではないでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 定期的に受診されていた医療機関で、CTフィルムの確認が4ヵ月もなされなかったことはやはり問題だと思います。放射線診断医が常勤している医療機関なのかどうかわかりませんが、何らかのチェック機能が働いていなかったミスなのでしょう。「問題があればすぐに連絡する」と伝えられた患者側としては、連絡がなければ「問題がなかった」と受け止め、安心すると次回受診時に検査のことは念頭にない可能性もあります。それが、さらにがんの発見を遅らせてしまったのだと思いますが、いまとなっては取り返しのつかないことでした。
 また、それが判明したときの対応として、ミスに向き合って対応せず、話をすり替えるというのは患者側の不信感を高める以外の何者でもありません。問題が発覚したときの“初期対応”が問われていると思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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