患者相談事例-85「外した差し歯の金属が換金可能と知りました。治療時に教えてくれなかった歯科医に不信感が募っています」
[患者さんの相談事例] 2013/03/15[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
外した差し歯の金属が換金可能と知りました。治療時に教えてくれなかった歯科医に不信感が募っています。(55歳・女性)
私は若いころから虫歯が多く、約30年間同じ歯科医院に通っていました。ところが1年前に院長が代替わりし、息子さんが後を継がれました。新しい院長はとても感情の起伏が激しくて、気に入らないことがあると、すぐに声を荒げます。待合室にいても診察室から怒鳴り声が聞えてくることがあり嫌な思いをしていたら、あるとき些細なことで私も暴言を吐かれてしまいました。そこで、今後も通い続けて関係性を保つことは無理だと判断し、近くに新しくできた歯科医院に転院することにしました。
ちょうど10年以上前に作った7本の差し歯がグラグラになってきていたので、新しい歯科医院でそれを外して入れ歯にしてもらうことにしました。いまは差し歯をすべて抜いて、保険で入れ歯を作ってもらうため、仮歯の状態です。
じつは最近テレビで「義歯に使っているプラチナや金は、抜いたあと高額で売れる」という情報を知りました。私の差し歯は根元にあたる部分にプラチナを使っているので、抜くときもそのことが頭をよぎったのですが、歯科医は換金について何も言ってくれませんでした。7本分のプラチナとなると、かなりの量だと思うのに、なぜ何も言ってくれなかったのだろう、もしかしたら歯科医が換金して懐に入れているのではないかと考えると、新しい歯科医院に対する不信感が高まってきました。このまま新しい歯科医院を信頼して入れ歯を作っていいのかどうか迷っています。どうすればいいのでしょうか。

たしかに、外した義歯や詰め物に含まれている金属は換金することが可能なようです。ただ、事前に何も言わなかったからと言って、外された差し歯が換金され、歯科医が自分の収入にしているかどうかはわかりません。ただ、歯を外してからすでに1ヵ月近くが経っているようですので、外した金属について問い合わせても歯科医院に差し歯そのものが残っているかどうかはわかりません。また、換金したものを患者に返すかどうかは、歯科医に委ねられていて、まだ「一般的にこうすべき」という決まりはないようです。社会の動きとしては、患者さんに説明して了解を得たうえで、歯科医が換金し、難病の子どもを支援する日本財団の「TOOTH FAIRY(歯の妖精)プロジェクト」やNPO法人日本入れ歯リサイクル協会を通じてユニセフに寄付する活動などもあります。
まずは、あなたの差し歯の金属をどうしたかを、直接、歯科医に確認してみてはいかがでしょうか。そのうえで、今後は外した段階で金属をどうするのか事前に知りたいと申し出てみてはどうかと思います。多くの患者さんが関心を持つことで、上記のような寄付運動も広まっていくと思います。

せっかく長年通い続けた歯科医院でも、いとも簡単に崩れてしまう信頼関係の難しさを感じました。
さて、歯科治療で外した金属ですが、歯科医が換金して自らの収入にしているとすれば、やはり疑問です。インターネットで検索すれば、換金の際の価格などが簡単に出てきますから、きっと一般的に換金されているのでしょう。
もともとは患者が費用を支払って入れた金属です。外すときは換金できること、さらには換金したものを寄付する運動もあることなどを患者に説明したうえで、患者の意思を確認することが大切だと思います。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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