患者相談事例-86「人間ドッグでの異常見落とし。この先検査結果を信じることができなくなりそうです」
[患者さんの相談事例] 2013/03/29[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
人間ドッグでの異常見落とし。この先検査結果を信じることができなくなりそうです。(60歳・女性)
63歳の夫は50歳を迎えてから毎年欠かさず人間ドックを受けています。父親を肺がんで、母親を子宮がんで亡くしたこともあってか、とくにがんを気にしていて、「早期発見のためなら」とオプションでCT検査も受けていました。毎年誕生日の月に受けるようにしており、昨年5月に受けたときも「異常なし」という結果に喜んでいました。
ところが昨年末、咳が出るようになり、近くの内科クリニックを受診しました。そのときに撮った胸部X線写真を見たドクターが、「ちょっと怪しいカゲがあるので、念のためにCT検査を受けたほうがいいと思います」と、大きな病院を紹介してくれました。そして造影CT検査をした結果、胸腺腫というがんが見つかったのです。
がんと言われてショックを受けた夫が、「半年ほど前に受けた人間ドックのCT検査では異常がないと言われたのですが」とドクターに話したところ、ドクターに人間ドックのときのCTを借りてくるように言われ、すぐに私が手配しました。すると、その画像を見たドクターは、「5月の人間ドックのCTにはっきりがんが写っていますね」と指摘したのです。「これです」と示された画像を見ると、私たち素人目にも明らかな丸いカゲが写っていました。
ドクターには「もう少し小さければ胸腔鏡という内視鏡での手術も考えられますが、あなたの場合は開胸して手術をしたほうがいいでしょう」と言われました。「もっと早くに見つかっていたら、軽い手術で済んだかもしれないのに…」と肩を落とす夫を見ていると不憫でなりません。
幸い、手術をすればいのちに別条はないだろうと言われています。私たちも人間ドックの施設を訴えたりするような大ごとにするつもりはありません。しかし、早期発見のためにオプションまでつけて、高額の費用を払っているのですから、もう少し慎重に診断してもらいたいという気持ちがぬぐいきれません。私も夫と同じように毎年人間ドックを受けているのですが、この先「異常なし」と言われても、言葉どおりに信じることができなくなるのではないかと思うのです。不安な気持ちになっていることを人間ドックの施設に伝えたいのですが、代わりに言ってくれる機関はないものでしょうか。

たしかに、高額な費用を支払ってでも早期に病気を見つけたいと願って毎年人間ドックを受けていたのに見落とされれば、信頼を裏切られた気持ちになるのは当然だと思います。治療方法自体変化した可能性があるとわかれば、なおさら悔しい思いをされていることと思います。ただ、残念ながら、代わりに苦情を伝える第三者機関はないので、やはり直接人間ドックの施設にアプローチするほかありません。できるだけ冷静に思いを伝え、今後の改善のために何が必要かを人間ドックの医療機関にしっかりと検討してもらってはいかがでしょうか。

人間ドックや検診時の“見落とし”についての相談は、時折届きます。異常がないかどうかを確認することが最も大きな目的だけに、そこに誤りがあるとわかれば、納得いかない気持ちになるのも当然です。
当然ながら、検査結果の確認はダブルチェックのシステムをとっていると思いますが、それでもすり抜けてしまうところにミスは生まれます。細心の注意を払うためのシステム作りと、万が一問題が生じた際の真摯な対応が求められると思います。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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